2014 autumn┊︎short story
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朝5時。
育ち盛りの若者が起きるには早い時間帯だが、勤勉が服を着て歩いているような彼女は、大抵この時間帯に起きだす。
僕?僕はというと、任務の朝帰り。
ショートスリーパーとはいえ、流石に眠い。移動時間中の転寝だけでは眠気を完全に拭うことは出来なかった。
なので、可愛い生徒である名無しが昨日行った任務の、職員室のデスクに提出されていた報告書を確認し、補助監督(というか伊地知)へ押しつけ……いや。提出する前に、回収した呪物の詳細を聞くため早朝から訪れた──というわけ。この後、昼まで仮眠を取るつもりだ。
どうせなら彼女のベッドでも借りて仮眠を取ろうか。
僕の職員寮のベッドより少しばかり狭いが、名無しの残り香を遠慮なく堪能出来る。
勿論、他意はない。言葉の通りだ。多分。
恋人のベッドだから別にあれがどうのするつもりは、今のところない。
というよりしたことがバレたら暫く口を聞いてもらえなさそうなので、流石にしない。……と思う。
戯言となって漏れそうになる煩悩を呼吸と共に呑み込み、遠慮なくノックの音と共に声を上げた。
「名無し〜、おっはよー。昨日出してくれた報告書で確認したいことがあるんだけど」
コンコンコン。
お世辞にも分厚いとは言えない木製の扉も、僕が学生だった時代から相変わらずだ。
普段の声量よりも僅かに張った声で中の住人に声を掛ければ、人が動く気配と共に微かな足音が気だるげに近づいてきた。
セキュリティの甘そうな鍵が開く音。
僅かに軋むドアノブを捻った音と同時に、古めかしい寮の戸は開け放たれた。
そこにはまだ眠気が抜けきっていない名無しの姿。Tシャツと半ズボンという、実に彼女らしいラフな格好だ。
欠伸を噛み殺している本人とは打って変わり、柔らかい黒髪からは元気のいい寝癖がぴょこりと揺れていた。可愛い。
「おはようございます……ごじょうさん…きんじょめいわくですよ…」
「女子寮、名無ししかいないからご近所さんいないじゃ、」
ん。
目元を擦る名無しを見下ろしながら、真っ当な文句を他愛ない軽口でかわそうとした時だった。
言い終わる前に目に映ったのは、彼女の胸元。
何の変哲もないクルーネックの隙間から見える無防備な谷間。
やわらかそうな双丘を滑る布地は、明らかに体のラインをなぞっている。
つまり。
名無しは、今。
「……?あの、確認したいことって…?」
「名無しって、寝る時ノーブラだったけ?」
あ。間違えた。いや、これも確認したい事項に滑り込んできたから間違いじゃないんだけど。
瞬きを眠そうに繰り返していた名無しの空気が一瞬凍りつく。
「………………へ。あ、わッ!」
彼女の慌てた声が上がると同時に、開いていたドアは大きな音を立て、勢いよく閉じられた。
それはもう、僕の鼻先を風圧が擽るくらいに。
僕からすれば眼福。彼女からすれば晒してしまった無防備な姿。
動揺が隠せなかった彼女に、近所(但し不在)を気にする余裕なんてものは、どうやらなかったらしい。
***
数日後。
「僕のトコに住んでた時は寝る時ノーブラじゃなかったよね?」
明日からの仕事のスケジュールを確認していた僕。
それをスマホ片手にのんびり待っている名無し。
日程を確認し終えた僕は、あの日以降触れなかった話をよいしょと掘り返した。
「ま、前触れなくその話題を蒸し返すのやめて頂けません!?」
「えー、前振りしたらよかったの?」
「……どっちにせよ駄目ですね」
顔を真っ赤にして声を上げる名無し。
前振りしてもダメならば、やはり単刀直入に聞くしかない。
「で?」
「で?って……。そりゃあ、他の人と住んでたら、寝る時も下着付けるに決まってるじゃないですか」
「へー。一人ならノーブラなんだ。いいこと聞いた」
「セクハラって言葉、ご存知です?」
その単語に関しては、認知はしているけど気にしない。
……なんて言った日には、目の前の彼女はぷりぷり怒るのだろう。
「でもあんなスケベな格好でドア開けたら駄目でしょ。僕の指摘、至極真っ当だと思うんだけど?」
「ただのTシャツと半ズボンの部屋着ですよ?人の胸ガン見するのは五条さんだけだと思います」
「人聞き悪いな。名無しの胸だけだよ、ガン見するの」
「それはそれで嫌だ……」
そりゃまぁ街を歩いていたら、ビックリするような巨乳は目を引くけど。
文字通り、興味があるのは目の前の子だけだ。
ちゃんとしっかり育ってきているから、尚更目が離せない。
「それに脱いでるよりも着てる方がエロい場合もあるんだよ。知らなかったの?テストに出たでしょ、名無しちゃん」
「覚えがないですね」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、スマホへ再び視線を落とす名無し。
煌々と光る液晶を見つめる視線はえらく真剣だ。
「ところでさっきから何見てるの?国宝級にカッコイイ恋人である僕を全然見てくれないじゃん。」
「下着の通販サイトです。五条さんが仰ってることも正論だと思ったので、この際ですしナイトブラを買おうかと」
ナイトブラ。
……ナイトブラだって?つまり、
「……無防備なノーブラ名無しちゃんが見れなくなる……ってコト?!」
「付けろって言ったのは五条さんでしょう?」
そうだけど。
そうじゃなくて。
「僕、正論嫌いなんだよね。」
「なんですか、この人。面倒くさい…」
面倒?僕もそう思う。
じゃなくて。
──いやいやいや。待った。
無防備な格好を晒すなとは言ったけど。
「嫌だー!僕以外の男にうっかりでもノーブラ姿を見られたくないけど、僕はノーブラ姿を見たい!堪能したい!あわよくば服の上から悪戯したい!」
「思った以上に我儘な上、最低でした」
「そりゃ好きな子のエッチな姿はいくら見てもお得だからね」
六眼を駆使して網膜に焼き付けたいが、残念ながら六眼にそういった能力はない。
僕の記憶力がいいのは不幸中の幸いだが、やはり見れるならいくらでも見たいし、触りたい。
余談だが、貴重 だからありがたみが増すだとか、そう言った綺麗事の世辞はどうでもいい。
目の前の名無しがいくら呆れ返ろうと、とにかく僕は無防備でエロい姿が見たいのだ。
「言っておきますけど、私が完全に無防備な時間帯にやって来る失礼な人なんて、五条さんしかいませんからね」
「僕としては、いっそ部屋も一緒でいいんだけど。」
「担任と!生徒の立場と!倫理!」
真面目なのは彼女の美徳だが、ガードが固すぎるのは如何なものか。……いや、だからこそガードを崩すのが楽しいんだけど、それはそれとして。
僕の煩悩を見透かしているのか、名無しは隠すことなく心底呆れたようにこめかみを押さえて、ため息混じりにこう呟いた。
「五条さんだからって、油断した私が愚かでした…」
僕だから、油断した。
雲が途切れた隙間から垣間見た流星のように、錯覚かと勘違いしてしまう彼女の本音。
自覚のない僅かな『デレ』に、僕はだらしなく頬が緩んでしまった。
無防備の理由
「僕が悪かったからナイトブラ買うのやめない?」
「買いますよ。貞操の自衛のためですから」
「ンマッ!恋人を変態扱いするなんて!」
「変態以外の何者でもないですよね!?」
育ち盛りの若者が起きるには早い時間帯だが、勤勉が服を着て歩いているような彼女は、大抵この時間帯に起きだす。
僕?僕はというと、任務の朝帰り。
ショートスリーパーとはいえ、流石に眠い。移動時間中の転寝だけでは眠気を完全に拭うことは出来なかった。
なので、可愛い生徒である名無しが昨日行った任務の、職員室のデスクに提出されていた報告書を確認し、補助監督(というか伊地知)へ押しつけ……いや。提出する前に、回収した呪物の詳細を聞くため早朝から訪れた──というわけ。この後、昼まで仮眠を取るつもりだ。
どうせなら彼女のベッドでも借りて仮眠を取ろうか。
僕の職員寮のベッドより少しばかり狭いが、名無しの残り香を遠慮なく堪能出来る。
勿論、他意はない。言葉の通りだ。多分。
恋人のベッドだから別にあれがどうのするつもりは、今のところない。
というよりしたことがバレたら暫く口を聞いてもらえなさそうなので、流石にしない。……と思う。
戯言となって漏れそうになる煩悩を呼吸と共に呑み込み、遠慮なくノックの音と共に声を上げた。
「名無し〜、おっはよー。昨日出してくれた報告書で確認したいことがあるんだけど」
コンコンコン。
お世辞にも分厚いとは言えない木製の扉も、僕が学生だった時代から相変わらずだ。
普段の声量よりも僅かに張った声で中の住人に声を掛ければ、人が動く気配と共に微かな足音が気だるげに近づいてきた。
セキュリティの甘そうな鍵が開く音。
僅かに軋むドアノブを捻った音と同時に、古めかしい寮の戸は開け放たれた。
そこにはまだ眠気が抜けきっていない名無しの姿。Tシャツと半ズボンという、実に彼女らしいラフな格好だ。
欠伸を噛み殺している本人とは打って変わり、柔らかい黒髪からは元気のいい寝癖がぴょこりと揺れていた。可愛い。
「おはようございます……ごじょうさん…きんじょめいわくですよ…」
「女子寮、名無ししかいないからご近所さんいないじゃ、」
ん。
目元を擦る名無しを見下ろしながら、真っ当な文句を他愛ない軽口でかわそうとした時だった。
言い終わる前に目に映ったのは、彼女の胸元。
何の変哲もないクルーネックの隙間から見える無防備な谷間。
やわらかそうな双丘を滑る布地は、明らかに体のラインをなぞっている。
つまり。
名無しは、今。
「……?あの、確認したいことって…?」
「名無しって、寝る時ノーブラだったけ?」
あ。間違えた。いや、これも確認したい事項に滑り込んできたから間違いじゃないんだけど。
瞬きを眠そうに繰り返していた名無しの空気が一瞬凍りつく。
「………………へ。あ、わッ!」
彼女の慌てた声が上がると同時に、開いていたドアは大きな音を立て、勢いよく閉じられた。
それはもう、僕の鼻先を風圧が擽るくらいに。
僕からすれば眼福。彼女からすれば晒してしまった無防備な姿。
動揺が隠せなかった彼女に、近所(但し不在)を気にする余裕なんてものは、どうやらなかったらしい。
***
数日後。
「僕のトコに住んでた時は寝る時ノーブラじゃなかったよね?」
明日からの仕事のスケジュールを確認していた僕。
それをスマホ片手にのんびり待っている名無し。
日程を確認し終えた僕は、あの日以降触れなかった話をよいしょと掘り返した。
「ま、前触れなくその話題を蒸し返すのやめて頂けません!?」
「えー、前振りしたらよかったの?」
「……どっちにせよ駄目ですね」
顔を真っ赤にして声を上げる名無し。
前振りしてもダメならば、やはり単刀直入に聞くしかない。
「で?」
「で?って……。そりゃあ、他の人と住んでたら、寝る時も下着付けるに決まってるじゃないですか」
「へー。一人ならノーブラなんだ。いいこと聞いた」
「セクハラって言葉、ご存知です?」
その単語に関しては、認知はしているけど気にしない。
……なんて言った日には、目の前の彼女はぷりぷり怒るのだろう。
「でもあんなスケベな格好でドア開けたら駄目でしょ。僕の指摘、至極真っ当だと思うんだけど?」
「ただのTシャツと半ズボンの部屋着ですよ?人の胸ガン見するのは五条さんだけだと思います」
「人聞き悪いな。名無しの胸だけだよ、ガン見するの」
「それはそれで嫌だ……」
そりゃまぁ街を歩いていたら、ビックリするような巨乳は目を引くけど。
文字通り、興味があるのは目の前の子だけだ。
ちゃんとしっかり育ってきているから、尚更目が離せない。
「それに脱いでるよりも着てる方がエロい場合もあるんだよ。知らなかったの?テストに出たでしょ、名無しちゃん」
「覚えがないですね」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、スマホへ再び視線を落とす名無し。
煌々と光る液晶を見つめる視線はえらく真剣だ。
「ところでさっきから何見てるの?国宝級にカッコイイ恋人である僕を全然見てくれないじゃん。」
「下着の通販サイトです。五条さんが仰ってることも正論だと思ったので、この際ですしナイトブラを買おうかと」
ナイトブラ。
……ナイトブラだって?つまり、
「……無防備なノーブラ名無しちゃんが見れなくなる……ってコト?!」
「付けろって言ったのは五条さんでしょう?」
そうだけど。
そうじゃなくて。
「僕、正論嫌いなんだよね。」
「なんですか、この人。面倒くさい…」
面倒?僕もそう思う。
じゃなくて。
──いやいやいや。待った。
無防備な格好を晒すなとは言ったけど。
「嫌だー!僕以外の男にうっかりでもノーブラ姿を見られたくないけど、僕はノーブラ姿を見たい!堪能したい!あわよくば服の上から悪戯したい!」
「思った以上に我儘な上、最低でした」
「そりゃ好きな子のエッチな姿はいくら見てもお得だからね」
六眼を駆使して網膜に焼き付けたいが、残念ながら六眼にそういった能力はない。
僕の記憶力がいいのは不幸中の幸いだが、やはり見れるならいくらでも見たいし、触りたい。
余談だが、
目の前の名無しがいくら呆れ返ろうと、とにかく僕は無防備でエロい姿が見たいのだ。
「言っておきますけど、私が完全に無防備な時間帯にやって来る失礼な人なんて、五条さんしかいませんからね」
「僕としては、いっそ部屋も一緒でいいんだけど。」
「担任と!生徒の立場と!倫理!」
真面目なのは彼女の美徳だが、ガードが固すぎるのは如何なものか。……いや、だからこそガードを崩すのが楽しいんだけど、それはそれとして。
僕の煩悩を見透かしているのか、名無しは隠すことなく心底呆れたようにこめかみを押さえて、ため息混じりにこう呟いた。
「五条さんだからって、油断した私が愚かでした…」
僕だから、油断した。
雲が途切れた隙間から垣間見た流星のように、錯覚かと勘違いしてしまう彼女の本音。
自覚のない僅かな『デレ』に、僕はだらしなく頬が緩んでしまった。
無防備の理由
「僕が悪かったからナイトブラ買うのやめない?」
「買いますよ。貞操の自衛のためですから」
「ンマッ!恋人を変態扱いするなんて!」
「変態以外の何者でもないですよね!?」
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