2012 summer┊︎short story
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「あのさ硝子。最近勃たなくなっちゃったんだよね。」
唐突に下ネタを投げかけてきた同級生に向ける私の視線は、さぞかし冷ややかなものだっただろう。
「それ、私に言ってどうにかなると思ってるのか?」
「反転術式でどうにかならない?」
「性病?泌尿器科行けよ。」
「最近シてません〜。」
物理的な性病ではないらしい。
それもそうかと納得する一方、女を使い捨てのコンドームと同じような扱いをしていた五条が、性行為に及んでいないという事実にも心底驚いた。
……それが顔に出ていたらしい。
チャラチャラヘラヘラしていた五条は、緩めていた口元を不満そうに尖らせ、行儀悪くテーブルの上に足を組み乗せた。
「何。」
「いや。つい数ヶ月前までは考えられない話だと思って」
「だって、僕ちゃんと『先生』したいし。」
その一言に「あぁ、」と気のない返事を返す。
五条が初めて受け持った生徒。
落ち着いた空気を纏っているのに、話せば意外にもころころと表情を変えるあの子。
若気の至りによくある『ささくれ』もなく、接してみれば可愛い妹分のような。
五条にとって思い入れ──と一言では片付かない、今の彼の唯一の生徒。
家族愛や教師愛に似た形を保ってはいるが、実の所それは呪いに近い、どろりとした愛であることを私は知っている。
遊びで手を出すなら去勢してでも止めるが、実の所そうではないらしい。
本気で異性を好きになったことがない、恋愛初心者の五条を生暖かく見守っているのが、私の今の現状である。
……この男が『教師と生徒』という垣根を未だ壊さず、丁寧に丁寧に育てている様子を見る限りでは、本当に本気のようだった。
「試しにAV見たんだけど、全然無理だったんだよね。むしろ煩いし気持ち悪いというか」
「天下の五条家のトップがAV見ても勃起不全とか、親戚が聞いたら卒倒するんじゃない?」
「馬鹿。下手な女をあの手この手で宛てがわれたらたまったもんじゃないでしょ。」
「おえ〜」と毒づきながら嘔吐の真似をする五条。
顔だけは一丁前にいいというのに、この性格はどうにかならなかったのか。
少なくともこの男に好意を持ったことがある女が聞いたら泣き出しそうなセリフを、躊躇いなく吐き捨てることが出来るのが、なるほど五条悟だな、と納得する所以である。
半ば呆れながらスマホへ視線を落とせば、数件の通知。
五条の下事情に対してさらさら興味のない私は、彼に断ることなくスマホのロック画面を解いた。
そこには数件の写真と、『楽しかったのでまたしましょう!』というメッセージ。
「何?」
「名無しから。この間のパジャマパーティーの写真来た。」
「は!?パジャマパーティー!?」
無駄に長い足を下ろし、椅子から慌てて立ち上がる五条。
「聞いてないんだけど。」
「実質女子会だからな」
「は〜〜〜?さと子をハブるなんていい度胸じゃん。」
「ジェラピケを買いに行ったデートの話も聞く?」
「うわ、何。マウント?」
「マウントだけど?」
手触りのいい部屋着を触って、珍しく大はしゃぎしていた名無しを思い出してついつい口元が緩んでしまう。
単なる部屋着にしては割高な気もするが、これ一つで一生分の幸せを凝縮したような笑顔を浮かべるものだから、デザインが違うものの私も一緒に部屋着を買ったことは──面倒なので黙っておくことにする。
「写真、欲しい?」
「100万でいい?」
「タバコ、2カートンね。」
息を吐くように札束を出そうとするんじゃない。
名無しが送ってきたものとは別の、私のスマホで撮影した名無しの写真を五条へ送る。
受信した途端、わざわざ胡散臭いアイマスクを上げて食い入るように見る五条の姿は、些か滑稽でシュールだ。
正直に言えば、ちょっと気持ち悪い。
「かっっわいー…」
「いいだろ。」
「僕も生で見たかった。」
「女子寮へ無闇に行くなよ」
「一緒に住んでる時に着せればよかったな……」
数ヶ月の間同居していた期間の話をしているのだろう。
彼女自身が稼いだお金で買ったものだから、割高な部屋着を気兼ねなく買ったというのに……本当に金銭感覚がこの男はズレている。
「……わ。」
「……何。」
「勃っちゃった。」
「…………うわ…」
「そんなドン引きしなくて良くない?好きな子の部屋着に興奮しない男なんているの?」
「それは個人の性癖だからノーコメントにしておく。ここで勃起したことにドン引きしてんの。」
「不可抗力だよ。だってこの写真。ほら見て、谷間が見えてる。」
傷一つない液晶画面をコツコツと指差す五条の目は本気だ。本気と書いてマジと読む。
モコモコのパーカーの下に着た、肌触りのいいパジャマ。
下着はつけていたものの、胸元から見える膨らみを凝視する五条。
性的な目で見るな、なんて今更無理なことを言うつもりはないが──
五条の悟が元気になる方法
(とんだ変態に好かれて、ご愁傷様。)
唐突に下ネタを投げかけてきた同級生に向ける私の視線は、さぞかし冷ややかなものだっただろう。
「それ、私に言ってどうにかなると思ってるのか?」
「反転術式でどうにかならない?」
「性病?泌尿器科行けよ。」
「最近シてません〜。」
物理的な性病ではないらしい。
それもそうかと納得する一方、女を使い捨てのコンドームと同じような扱いをしていた五条が、性行為に及んでいないという事実にも心底驚いた。
……それが顔に出ていたらしい。
チャラチャラヘラヘラしていた五条は、緩めていた口元を不満そうに尖らせ、行儀悪くテーブルの上に足を組み乗せた。
「何。」
「いや。つい数ヶ月前までは考えられない話だと思って」
「だって、僕ちゃんと『先生』したいし。」
その一言に「あぁ、」と気のない返事を返す。
五条が初めて受け持った生徒。
落ち着いた空気を纏っているのに、話せば意外にもころころと表情を変えるあの子。
若気の至りによくある『ささくれ』もなく、接してみれば可愛い妹分のような。
五条にとって思い入れ──と一言では片付かない、今の彼の唯一の生徒。
家族愛や教師愛に似た形を保ってはいるが、実の所それは呪いに近い、どろりとした愛であることを私は知っている。
遊びで手を出すなら去勢してでも止めるが、実の所そうではないらしい。
本気で異性を好きになったことがない、恋愛初心者の五条を生暖かく見守っているのが、私の今の現状である。
……この男が『教師と生徒』という垣根を未だ壊さず、丁寧に丁寧に育てている様子を見る限りでは、本当に本気のようだった。
「試しにAV見たんだけど、全然無理だったんだよね。むしろ煩いし気持ち悪いというか」
「天下の五条家のトップがAV見ても勃起不全とか、親戚が聞いたら卒倒するんじゃない?」
「馬鹿。下手な女をあの手この手で宛てがわれたらたまったもんじゃないでしょ。」
「おえ〜」と毒づきながら嘔吐の真似をする五条。
顔だけは一丁前にいいというのに、この性格はどうにかならなかったのか。
少なくともこの男に好意を持ったことがある女が聞いたら泣き出しそうなセリフを、躊躇いなく吐き捨てることが出来るのが、なるほど五条悟だな、と納得する所以である。
半ば呆れながらスマホへ視線を落とせば、数件の通知。
五条の下事情に対してさらさら興味のない私は、彼に断ることなくスマホのロック画面を解いた。
そこには数件の写真と、『楽しかったのでまたしましょう!』というメッセージ。
「何?」
「名無しから。この間のパジャマパーティーの写真来た。」
「は!?パジャマパーティー!?」
無駄に長い足を下ろし、椅子から慌てて立ち上がる五条。
「聞いてないんだけど。」
「実質女子会だからな」
「は〜〜〜?さと子をハブるなんていい度胸じゃん。」
「ジェラピケを買いに行ったデートの話も聞く?」
「うわ、何。マウント?」
「マウントだけど?」
手触りのいい部屋着を触って、珍しく大はしゃぎしていた名無しを思い出してついつい口元が緩んでしまう。
単なる部屋着にしては割高な気もするが、これ一つで一生分の幸せを凝縮したような笑顔を浮かべるものだから、デザインが違うものの私も一緒に部屋着を買ったことは──面倒なので黙っておくことにする。
「写真、欲しい?」
「100万でいい?」
「タバコ、2カートンね。」
息を吐くように札束を出そうとするんじゃない。
名無しが送ってきたものとは別の、私のスマホで撮影した名無しの写真を五条へ送る。
受信した途端、わざわざ胡散臭いアイマスクを上げて食い入るように見る五条の姿は、些か滑稽でシュールだ。
正直に言えば、ちょっと気持ち悪い。
「かっっわいー…」
「いいだろ。」
「僕も生で見たかった。」
「女子寮へ無闇に行くなよ」
「一緒に住んでる時に着せればよかったな……」
数ヶ月の間同居していた期間の話をしているのだろう。
彼女自身が稼いだお金で買ったものだから、割高な部屋着を気兼ねなく買ったというのに……本当に金銭感覚がこの男はズレている。
「……わ。」
「……何。」
「勃っちゃった。」
「…………うわ…」
「そんなドン引きしなくて良くない?好きな子の部屋着に興奮しない男なんているの?」
「それは個人の性癖だからノーコメントにしておく。ここで勃起したことにドン引きしてんの。」
「不可抗力だよ。だってこの写真。ほら見て、谷間が見えてる。」
傷一つない液晶画面をコツコツと指差す五条の目は本気だ。本気と書いてマジと読む。
モコモコのパーカーの下に着た、肌触りのいいパジャマ。
下着はつけていたものの、胸元から見える膨らみを凝視する五条。
性的な目で見るな、なんて今更無理なことを言うつもりはないが──
五条の悟が元気になる方法
(とんだ変態に好かれて、ご愁傷様。)