2012 summer┊︎short story
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「ズバリ、石鹸。」
夏真っ盛りの暑さが抜けきらない、とある午後。
湿っぽい風が攫った香りは酷く懐かしいもので。
「え、なんですか?」
「つけてるだろう?制汗剤。」
多分、某メジャーなメーカーの。
大体石鹸の香りはどれも似たり寄ったりだが、一時色々試した結果わずかな匂いの違いも分かるようになってしまった。
清涼感と清潔感のある香りは、最終的に落ち着いた液体タイプの制汗剤の匂いと同じものだ。
「よく分かりましたね……。え、そんなに臭いますか…?」
「いや。私も学生時代は同じものを使っていたからね。」
「なるほど。」
付けすぎという訳ではない。
自分の体臭を恐る恐る確認していた名無しは、安心したように頬を綻ばせ、そっと胸を撫で下ろしていた。
そして、もう一度「すん、」と鼻を鳴らす。
手首辺りの、一番体温が高そうな生白い肌を鼻先に当てて。
「…ふふっ。学生時代の硝子さんとお揃いなら、いい匂い間違いなしですね」
嫌味もなく、打算もなく。
シャボン玉がぱちんと弾けるような笑顔を向けられ、私は柄にもなく熱が走り抜けるような目眩を覚えた。
石鹸とシャボン玉
医務室に入り浸る五条を目の前にして、前触れなく思い出した先日のやりとり。
「名無しってさぁ。天然タラシの才能あるよね。」
「え。何。何の話。」
「五条に似なくてよかった、って話さ。」
つくづく思う。
この目の前の保護者兼担任である、呪術界の問題児に似なくてよかったな、と。
夏真っ盛りの暑さが抜けきらない、とある午後。
湿っぽい風が攫った香りは酷く懐かしいもので。
「え、なんですか?」
「つけてるだろう?制汗剤。」
多分、某メジャーなメーカーの。
大体石鹸の香りはどれも似たり寄ったりだが、一時色々試した結果わずかな匂いの違いも分かるようになってしまった。
清涼感と清潔感のある香りは、最終的に落ち着いた液体タイプの制汗剤の匂いと同じものだ。
「よく分かりましたね……。え、そんなに臭いますか…?」
「いや。私も学生時代は同じものを使っていたからね。」
「なるほど。」
付けすぎという訳ではない。
自分の体臭を恐る恐る確認していた名無しは、安心したように頬を綻ばせ、そっと胸を撫で下ろしていた。
そして、もう一度「すん、」と鼻を鳴らす。
手首辺りの、一番体温が高そうな生白い肌を鼻先に当てて。
「…ふふっ。学生時代の硝子さんとお揃いなら、いい匂い間違いなしですね」
嫌味もなく、打算もなく。
シャボン玉がぱちんと弾けるような笑顔を向けられ、私は柄にもなく熱が走り抜けるような目眩を覚えた。
石鹸とシャボン玉
医務室に入り浸る五条を目の前にして、前触れなく思い出した先日のやりとり。
「名無しってさぁ。天然タラシの才能あるよね。」
「え。何。何の話。」
「五条に似なくてよかった、って話さ。」
つくづく思う。
この目の前の保護者兼担任である、呪術界の問題児に似なくてよかったな、と。