2012 winter┊︎short story
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課外授業が終わり、いつも通り補助監督である伊地知が運転する車に乗り込む。
金色の西日が眩しい時間帯。
街路樹の葉は全て枯れ落ち、秋から冬へ変わろうとしていた季節。
ポツポツと街の街灯やネオンが灯り始める、昼とも夕方とも言えない曖昧な時間は、確かな理由はないけれど郷愁漂う景色に見えた。
「お疲れ様です、五条さん。ななしさん。お茶をご用意したのでよかったらどうぞ」
「すみません、伊地知さん。ありがとうございます」
後部座席に座っていた名無しが2本分ペットボトルのお茶を受け取る。
こういった細やかな気配りが出来る故に、五条が関係する案件=伊地知担当……となりつつあることに、伊地知本人は気付いているのだろうか。
「五条さん、お茶ですよ。……五条さん?」
名無しの右側、伊地知の真後ろ。
右側の後部座席に深く腰かけた五条は、腕を組んだまま黙りこくっている。
黒い目隠しをしている為、予想なのだが――
「……寝てます?もしかして」
「寝てますね、恐らく…」
彼が休暇を取ったのは何日前だろうか。
今日も『課外授業なんだからついて行くよ』と譲らなかった五条である。
流石の特級呪術師も疲労には勝てなかったらしい。
「お疲れだったんですね、きっと」
「まぁ、こんなでも多忙な方なので…」
伊地知のポロリと零れた失言にも反応しない。
本当に熟睡しているらしい。
〇び太以上の入眠の早さである。
「ななしさんもお疲れでしょう。寝てくださって大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。」
礼を言いつつも寝る気はないのだろう。
制服の上から羽織っていたコートを脱ぎ、五条の腕から膝にかけて起こさないようにそっと掛ける名無し。
そんな光景をバックミラーで覗き見て、伊地知は母親を彷彿させるような名無しの仕草にそっと頬を綻ばせた。
「最近、困ったことはありませんか?」
「特にはないですよ。強いて言うなら五条さんの無茶振りに時々ついていけないことくらいですかね」
本人が寝ているからか、くすくすと笑いながら答える名無し。
伊地知もそれに関しては心当たりしかなく、苦笑いを浮かべながら「まぁ五条さんなので」と諦めたように笑った。
黄昏ドライブ
困らされている割に、コートを五条さんへ掛けていた彼女の表情はやわらかだった。
的外れかもしれない。
口に出したら『そんなことないですよ』と否定されるだろう。
少し違うかもしれないが、その表情は――そう。
(なんだかんだで好きなんだろうなぁ)
親愛なのか……はたまた違うものなのかはさておき。
確かな事は、伊地知の頬が思わず緩んでしまう光景、ということ。
多忙な呪術師達の、そんな黄昏時。
金色の西日が眩しい時間帯。
街路樹の葉は全て枯れ落ち、秋から冬へ変わろうとしていた季節。
ポツポツと街の街灯やネオンが灯り始める、昼とも夕方とも言えない曖昧な時間は、確かな理由はないけれど郷愁漂う景色に見えた。
「お疲れ様です、五条さん。ななしさん。お茶をご用意したのでよかったらどうぞ」
「すみません、伊地知さん。ありがとうございます」
後部座席に座っていた名無しが2本分ペットボトルのお茶を受け取る。
こういった細やかな気配りが出来る故に、五条が関係する案件=伊地知担当……となりつつあることに、伊地知本人は気付いているのだろうか。
「五条さん、お茶ですよ。……五条さん?」
名無しの右側、伊地知の真後ろ。
右側の後部座席に深く腰かけた五条は、腕を組んだまま黙りこくっている。
黒い目隠しをしている為、予想なのだが――
「……寝てます?もしかして」
「寝てますね、恐らく…」
彼が休暇を取ったのは何日前だろうか。
今日も『課外授業なんだからついて行くよ』と譲らなかった五条である。
流石の特級呪術師も疲労には勝てなかったらしい。
「お疲れだったんですね、きっと」
「まぁ、こんなでも多忙な方なので…」
伊地知のポロリと零れた失言にも反応しない。
本当に熟睡しているらしい。
〇び太以上の入眠の早さである。
「ななしさんもお疲れでしょう。寝てくださって大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。」
礼を言いつつも寝る気はないのだろう。
制服の上から羽織っていたコートを脱ぎ、五条の腕から膝にかけて起こさないようにそっと掛ける名無し。
そんな光景をバックミラーで覗き見て、伊地知は母親を彷彿させるような名無しの仕草にそっと頬を綻ばせた。
「最近、困ったことはありませんか?」
「特にはないですよ。強いて言うなら五条さんの無茶振りに時々ついていけないことくらいですかね」
本人が寝ているからか、くすくすと笑いながら答える名無し。
伊地知もそれに関しては心当たりしかなく、苦笑いを浮かべながら「まぁ五条さんなので」と諦めたように笑った。
黄昏ドライブ
困らされている割に、コートを五条さんへ掛けていた彼女の表情はやわらかだった。
的外れかもしれない。
口に出したら『そんなことないですよ』と否定されるだろう。
少し違うかもしれないが、その表情は――そう。
(なんだかんだで好きなんだろうなぁ)
親愛なのか……はたまた違うものなのかはさておき。
確かな事は、伊地知の頬が思わず緩んでしまう光景、ということ。
多忙な呪術師達の、そんな黄昏時。