この瞬間がすき
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「ほら、名無しサン。息が上がってきてるっスよぉ」
「気のせい、じゃないんですか!?」
鋭い剣戟の音が地下の勉強部屋に響く。
始解した彼女の刃が鈍く青光りした。
彼女の鬼道に関する技術は文句なしだ。湯水のように湧く霊力は相変わらず健在のようで、むしろ持て余しているくらいだった。
問題は剣術と白打だ。
白打はある程度人間だった頃に叩き込んだが、如何せん才能があるかと問われれば閉口する。まぁ人には得意不得意があるものだ。
白打に関しては置いておこう。
剣術は一切教えていなかったものだから、さぁ大変。
一応、一般隊士としての技術は問題ないと太鼓判を押されたが、剣術だけで言えば席官以下のレベルだ。
現世に(ほぼ半永久的にだろうが)長期滞在・十二番隊から派遣された空座町担当の死神となったのだから、腕を磨かなければと息巻いている名無し。
こうやって剣術を教え、今に至る。
「まだ斬撃が軽いっスよ。斬る瞬間の一点に力を集中っス」
「はい、」
本来、彼女の斬魄刀は鬼道系だから剣術の稽古は必要ないと思う。
『でも、下手よりはいいかと思って』
人間だった頃から、本当にこういう向上心は全死神に見習って貰いたいものだ。
彼女の真面目な性分が如実に現れている。
初めて太刀筋を見た時、ボクはどこか既視感を覚えた。
答えはすぐに分かった。そう、彼女が今まで一番目にしてきた、ボク自身の太刀筋に似ていた。
それが無性に何だか嬉しくて、剣術を教えて欲しいと言われた時、力押しの戦闘技術は得意分野ではないけど心が踊ってしまった。
それに加え、彼女の素直な性分のせいだろう。
以前からそうだったが、技術の飲み込みが早いおかげで教え甲斐がある。
それに、
「姿勢はもっと低く」
「はい」
彼女の目に映るのは、自分だけ。
時々チリつく、殺気にも近い威圧はどこか心地がよかった。
勿論、いつも笑っていたり怒っていたりする名無しが一番好きだが、剣士の目をした彼女も、
キンッ!
鍔迫り合いで力負けした彼女の斬魄刀が宙を舞い、地に刺さる。
そのまま刀を振り下ろせば、紙一重で見事に躱す。
少しずつ手加減出来なくなってきている事実と、真っ直ぐこちらに向けられる怯まない闘争心が、ボクの鈍ってきていた牙を研ぎ澄ましていく。
本当に、彼女はボクを楽しませてくれる。
吹き飛んだ斬魄刀を再び構え、至極楽しそうに彼女は刀を振るった。
この瞬間がすき#勉強会
敵わない。それなのに、楽しい。
重い斬撃を受け止めば腕が痺れる。
鍔迫り合いをすれば力負けするし、恐らく腕力で勝つのは無理だろう。
振り下ろす切先を今よりも鋭く、速く。
力負けするならば、斬撃を受けないように刃を躱す。
一瞬の隙を見逃さず斬魄刀を切り上げれば浦原の帽子の淵を掠めた。
すると弾ける浦原の体。
違う。これは携帯用の義骸だ。
「おっと、危ないっスね」
背後から聞こえてきた声。
咄嗟に避ければ、私が先程までいた場所に刃が振り下ろされていた。
「危ないって言いたいのはこっちですよ!」
「いやぁ、つい義骸使っちゃいました」
そう、これは僅かな進歩。
義骸を使わざるを得なかったんだと、そう考えよう。
「名無しサン、本当に諦めが悪いっスねぇ」
「褒めてるんですか?それ」
「勿論。」
彼の目には、私が映っている。
ほかの誰でもない、私だけ。
あぁ、この瞬間がずっと続けばいいのに。
余裕の笑みを浮かべる浦原を見ながら、そう思った。
「気のせい、じゃないんですか!?」
鋭い剣戟の音が地下の勉強部屋に響く。
始解した彼女の刃が鈍く青光りした。
彼女の鬼道に関する技術は文句なしだ。湯水のように湧く霊力は相変わらず健在のようで、むしろ持て余しているくらいだった。
問題は剣術と白打だ。
白打はある程度人間だった頃に叩き込んだが、如何せん才能があるかと問われれば閉口する。まぁ人には得意不得意があるものだ。
白打に関しては置いておこう。
剣術は一切教えていなかったものだから、さぁ大変。
一応、一般隊士としての技術は問題ないと太鼓判を押されたが、剣術だけで言えば席官以下のレベルだ。
現世に(ほぼ半永久的にだろうが)長期滞在・十二番隊から派遣された空座町担当の死神となったのだから、腕を磨かなければと息巻いている名無し。
こうやって剣術を教え、今に至る。
「まだ斬撃が軽いっスよ。斬る瞬間の一点に力を集中っス」
「はい、」
本来、彼女の斬魄刀は鬼道系だから剣術の稽古は必要ないと思う。
『でも、下手よりはいいかと思って』
人間だった頃から、本当にこういう向上心は全死神に見習って貰いたいものだ。
彼女の真面目な性分が如実に現れている。
初めて太刀筋を見た時、ボクはどこか既視感を覚えた。
答えはすぐに分かった。そう、彼女が今まで一番目にしてきた、ボク自身の太刀筋に似ていた。
それが無性に何だか嬉しくて、剣術を教えて欲しいと言われた時、力押しの戦闘技術は得意分野ではないけど心が踊ってしまった。
それに加え、彼女の素直な性分のせいだろう。
以前からそうだったが、技術の飲み込みが早いおかげで教え甲斐がある。
それに、
「姿勢はもっと低く」
「はい」
彼女の目に映るのは、自分だけ。
時々チリつく、殺気にも近い威圧はどこか心地がよかった。
勿論、いつも笑っていたり怒っていたりする名無しが一番好きだが、剣士の目をした彼女も、
キンッ!
鍔迫り合いで力負けした彼女の斬魄刀が宙を舞い、地に刺さる。
そのまま刀を振り下ろせば、紙一重で見事に躱す。
少しずつ手加減出来なくなってきている事実と、真っ直ぐこちらに向けられる怯まない闘争心が、ボクの鈍ってきていた牙を研ぎ澄ましていく。
本当に、彼女はボクを楽しませてくれる。
吹き飛んだ斬魄刀を再び構え、至極楽しそうに彼女は刀を振るった。
この瞬間がすき#勉強会
敵わない。それなのに、楽しい。
重い斬撃を受け止めば腕が痺れる。
鍔迫り合いをすれば力負けするし、恐らく腕力で勝つのは無理だろう。
振り下ろす切先を今よりも鋭く、速く。
力負けするならば、斬撃を受けないように刃を躱す。
一瞬の隙を見逃さず斬魄刀を切り上げれば浦原の帽子の淵を掠めた。
すると弾ける浦原の体。
違う。これは携帯用の義骸だ。
「おっと、危ないっスね」
背後から聞こえてきた声。
咄嗟に避ければ、私が先程までいた場所に刃が振り下ろされていた。
「危ないって言いたいのはこっちですよ!」
「いやぁ、つい義骸使っちゃいました」
そう、これは僅かな進歩。
義骸を使わざるを得なかったんだと、そう考えよう。
「名無しサン、本当に諦めが悪いっスねぇ」
「褒めてるんですか?それ」
「勿論。」
彼の目には、私が映っている。
ほかの誰でもない、私だけ。
あぁ、この瞬間がずっと続けばいいのに。
余裕の笑みを浮かべる浦原を見ながら、そう思った。
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