晴着に花めく
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「名無しって成人式どうするの?」
先生も走り出すと言われている、師走のある日。
常に忙しそうな彼は、年中師走なのでは?と思ったが、確かに年末は殊更慌ただしかった。
そんな合間、時間を見つけては実習に付き合ってくれたり、鍛錬を見てくれる。
実にありがたいことだとしみじみ感じながら、一息つくため自販機で購入した温かい緑茶を啜っている時に、先程の言葉を投げかけられた。
「え、参加必須じゃないでしょう?成人式。」
汁粉を飲んでいた五条さんを見上げれば、大層不服そうな表情を浮かべている。
「そうだけどさぁ〜、見たいじゃん。振袖。保護者としては節目なんだし」
五条さんの言い分も分からなくもない。
だが、その話題を振るのは時既に遅し、というやつだ。
「多分、振袖の予約は一年前くらいにしないと。」と答えれば「マジか」と彼は目を丸くしていた。
恐らく彼が成人した際には、実家が色々手筈を整えたのだろう。
というより、一般的な『成人式』に参加せず、御三家らしい行事になったに違いない。
だから世間一般の成人式の準備など、彼が知る由もないのは無理もない。
別にそれを咎めるつもりはない。
それに、振袖云々というより──
「周りが大人っぽい子ばっかりでしょうし、浮いちゃうでしょう?流石にちょっとそれは恥ずかしいかなぁ、って。」
実年齢はもうすぐ二十歳とはいえ、身体の年齢は十六歳頃から全く成長していない。
これからどんどん大人になって、歳を重ねる事が出来る『本当は同い歳』である人達を眺めるのは、少しばかり堪えがたいものだった。
晴着に花めく#01
息が白む、2月末。
「や、名無し。」
低級呪霊の祓除。
今回の実習を兼ねた任務は、比較的簡単なものだったはず。
にも関わらず、珍しくそこには担任の姿があった。
「珍しいですね。今日の任務は五条さんも来て下さるんですか?」
「そうそう。今までで一番、重要な任務だからね」
にこにことご機嫌の五条さん。
重要な任務だというのに、鼻歌交じりなのは──気のせいではない。
引率してくれるはずだった補助監督の人もいない。
今回はこの人と二人の任務なのだろうか?
「私まだ詳しい内容お伺いしていないんですよね。そんなに重大任務なんですか?低級呪霊とお伺いしてますけど…?」
「はーい、今日は呪霊とか呪いとかそういう話はなしね、ナシナシ。」
「?、??」
言葉の意味が理解出来ず、ただ目を白黒させていると、五条さんはサングラスの向こうの瞳をやわらかく細めた。
「だぁいじょうぶ、タクシー呼んでるから。すぐ分かるよ。」
「た、タクシー?」
先生も走り出すと言われている、師走のある日。
常に忙しそうな彼は、年中師走なのでは?と思ったが、確かに年末は殊更慌ただしかった。
そんな合間、時間を見つけては実習に付き合ってくれたり、鍛錬を見てくれる。
実にありがたいことだとしみじみ感じながら、一息つくため自販機で購入した温かい緑茶を啜っている時に、先程の言葉を投げかけられた。
「え、参加必須じゃないでしょう?成人式。」
汁粉を飲んでいた五条さんを見上げれば、大層不服そうな表情を浮かべている。
「そうだけどさぁ〜、見たいじゃん。振袖。保護者としては節目なんだし」
五条さんの言い分も分からなくもない。
だが、その話題を振るのは時既に遅し、というやつだ。
「多分、振袖の予約は一年前くらいにしないと。」と答えれば「マジか」と彼は目を丸くしていた。
恐らく彼が成人した際には、実家が色々手筈を整えたのだろう。
というより、一般的な『成人式』に参加せず、御三家らしい行事になったに違いない。
だから世間一般の成人式の準備など、彼が知る由もないのは無理もない。
別にそれを咎めるつもりはない。
それに、振袖云々というより──
「周りが大人っぽい子ばっかりでしょうし、浮いちゃうでしょう?流石にちょっとそれは恥ずかしいかなぁ、って。」
実年齢はもうすぐ二十歳とはいえ、身体の年齢は十六歳頃から全く成長していない。
これからどんどん大人になって、歳を重ねる事が出来る『本当は同い歳』である人達を眺めるのは、少しばかり堪えがたいものだった。
晴着に花めく#01
息が白む、2月末。
「や、名無し。」
低級呪霊の祓除。
今回の実習を兼ねた任務は、比較的簡単なものだったはず。
にも関わらず、珍しくそこには担任の姿があった。
「珍しいですね。今日の任務は五条さんも来て下さるんですか?」
「そうそう。今までで一番、重要な任務だからね」
にこにことご機嫌の五条さん。
重要な任務だというのに、鼻歌交じりなのは──気のせいではない。
引率してくれるはずだった補助監督の人もいない。
今回はこの人と二人の任務なのだろうか?
「私まだ詳しい内容お伺いしていないんですよね。そんなに重大任務なんですか?低級呪霊とお伺いしてますけど…?」
「はーい、今日は呪霊とか呪いとかそういう話はなしね、ナシナシ。」
「?、??」
言葉の意味が理解出来ず、ただ目を白黒させていると、五条さんはサングラスの向こうの瞳をやわらかく細めた。
「だぁいじょうぶ、タクシー呼んでるから。すぐ分かるよ。」
「た、タクシー?」
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