芒種の死
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高専に戻ってきたのは、もうすぐ日が沈もうとしている19時前頃のことだった。
僕のスマホに硝子から届いた、そっけない呼び出しのメッセージ。
僕が医務室に居座るのは珍しくないのだが、彼女からの呼び出しは滅多にない。
それこそ、『用事』がなければ連絡を寄越さない程に。
嫌な予感というものは、裏切って欲しくない時に限って的中するものだ。
芒種の死#02
「致死量の毒浴びて帰ってきて、今は部屋で寝てる。」
『誰が』なんて主語がなくても伝わってしまうのが、ほとほと嫌になる。
処分予定だったのだろう。ポリ袋に二重三重と包まれた布切れは、色が変わる程に血塗れた制服だったもの。
「任務。二級と三級が組んで、順当なヤツだったんだよね?」
「蓋を開けたら一級相当が二体、他は準一から二級相当が聞いてた数の倍いたらしい。」
正式な報告書もまだ何もない。実際現場にいた人間はここにいないため、正確な情報も何一つない。
それでも等級は概ね正解なのだろう。
それが、実際祓った彼女の報告なら、五条にとって信用に値するものだ。
「んで、ビビった二級術師は一人逃げ帰ってきて、名無しは名無しで無茶な祓い方して満身創痍。なんとか連絡を新田に入れて拾って帰ってもらった。
口頭で男から聞いた報告だと『撤退命令出したが、ななし名無しがそれを拒否。単独行動開始。男は負傷していたため仕方なく高専へ戻ってきた』……まぁ、でっち上げの報告と見ていいだろう。」
「名無しはなんて?」
「事実確認したら素直に肯定していたけどね。あの子も……何を考えてるのやら」
血みどろになった名無しを見て、新田は生きた心地がしなかっただろう。
毒を浴びていたのなら──言うまでもない。想像したより酷い惨状だったに違いない。
「それに、熱も大概だけど……」
「だけど?」
「……いや。気にしすぎかもしれないな」
小さく溜息を吐き出しながら硝子は肩を竦める。
大抵、彼女の『気にしすぎかもしれない』と言う時は何かある。
女の勘って奴だろうか。僕には一生縁のない話だ。
「上から補助監督なしの三級呪術師の単独行動は本来咎められるだろう。一応事情は聞けるようなら聞いといてやれ」
僕のスマホに硝子から届いた、そっけない呼び出しのメッセージ。
僕が医務室に居座るのは珍しくないのだが、彼女からの呼び出しは滅多にない。
それこそ、『用事』がなければ連絡を寄越さない程に。
嫌な予感というものは、裏切って欲しくない時に限って的中するものだ。
芒種の死#02
「致死量の毒浴びて帰ってきて、今は部屋で寝てる。」
『誰が』なんて主語がなくても伝わってしまうのが、ほとほと嫌になる。
処分予定だったのだろう。ポリ袋に二重三重と包まれた布切れは、色が変わる程に血塗れた制服だったもの。
「任務。二級と三級が組んで、順当なヤツだったんだよね?」
「蓋を開けたら一級相当が二体、他は準一から二級相当が聞いてた数の倍いたらしい。」
正式な報告書もまだ何もない。実際現場にいた人間はここにいないため、正確な情報も何一つない。
それでも等級は概ね正解なのだろう。
それが、実際祓った彼女の報告なら、五条にとって信用に値するものだ。
「んで、ビビった二級術師は一人逃げ帰ってきて、名無しは名無しで無茶な祓い方して満身創痍。なんとか連絡を新田に入れて拾って帰ってもらった。
口頭で男から聞いた報告だと『撤退命令出したが、ななし名無しがそれを拒否。単独行動開始。男は負傷していたため仕方なく高専へ戻ってきた』……まぁ、でっち上げの報告と見ていいだろう。」
「名無しはなんて?」
「事実確認したら素直に肯定していたけどね。あの子も……何を考えてるのやら」
血みどろになった名無しを見て、新田は生きた心地がしなかっただろう。
毒を浴びていたのなら──言うまでもない。想像したより酷い惨状だったに違いない。
「それに、熱も大概だけど……」
「だけど?」
「……いや。気にしすぎかもしれないな」
小さく溜息を吐き出しながら硝子は肩を竦める。
大抵、彼女の『気にしすぎかもしれない』と言う時は何かある。
女の勘って奴だろうか。僕には一生縁のない話だ。
「上から補助監督なしの三級呪術師の単独行動は本来咎められるだろう。一応事情は聞けるようなら聞いといてやれ」