五条悟の引越し事情
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「引越し、ですか?」
「そ。忙しくてあんまりマンションに戻ってないし、移動に時間を割くくらいなら職員寮に住んだ方が合理的でしょ」
久しぶりに鍛練を付き合ってもらい、喉を潤すため自販機のスポーツ飲料を一気に飲み干す。
五条はというと埃一つ纏っておらず、甘ったるそうなフルーツオレを美味しそうに飲んでいた。
唐突に教えて貰った引越し情報。
少々愛着のあるあの部屋をもう見ることがないのかと思うと、少しだけ寂しい気がする。
……それと同時に浮かんだのは、素朴な疑問。
「……五条さんのあの大きいベッド、部屋に入るんですか?」
「何のこと?」
「え?」
五条悟の引越し事情#01
「名無し、見てみて〜。すんごいふっかふか。」
百貨店のベッドへ深く腰掛ければ、質のいいスプリングがふんわりと身体を押し返す。
色んな家具を物色する僕を横目に、真っ先に値札を確認するのは名無しだ。
白いブラウスに細身のスキニーパンツ。細い足首がよく見える裾丈は、ある意味絶対領域かもしれない。
欲を言えばスカートとか、ショートパンツとかで生脚を拝みたい下心はあるのだけど。
「……高ッ」
「普通でしょ。ま、僕柔らかすぎるベッドあんま好きじゃないんだけど」
「ゼロが多い」と目を逸らしながら値札をそっと伏せる彼女は、相変わらず金銭感覚が極々一般家庭レベルだ。
そんな反応が見たくて僕は好みでもないベッドを物色したのだけど、きっと彼女は知る由もないだろう。
「……今更なんですけど」
「何?」
「私が買い物、ついてきてよかったんですか?」
何を今更。僕が誘ったというのに。
「名無し、ツレなーい。折角の引越しだよ?一人で家具を見るより、誰かと見たほうが楽しくない?」
「まぁ、そうかもしれませんが。」
コホンと小さく咳払い。
居心地悪そうにしているのは、百貨店の雰囲気が場違いだと感じているせいだろうか。
所在なさげに辺りを見回す名無しは、彼女には悪いが小動物のようで可愛らしい。……こんなこと口にした日には暫く口を聞いて貰えないのだろうが。
「周りからは不思議な組み合わせだと思われてそうだな、と思って。」
「どう見てもカップルでしょ?」
「それはないでしょう。」
悪意なき、一刀両断。
はいはい今日も脈ナシ。……嘘でしょ?この僕相手に?ちょっとショックかも。
「『先生』ってお呼びしてもいいんですけど、休日に教師と生徒で買い物…ってただならない感じがしますよね。」
「えぇ〜ただならない感じってどういう感じ?」
「教育委員会が黙っちゃいない案件ですよ。だからそうですね……精々、全く似ていない腹違いの兄妹とか……」
それも無理があるんじゃ。
喉まで出かかった言葉を呑み込み、僕は口角をニヤッと吊り上げた。
「じゃ、お兄ちゃんって呼ばなきゃね。」
「そうですね、悟お兄ちゃん。」
軽口を返せば、軽口で返ってくる。
──彼女のそれもなんとなしに返した、ただの冗談だろう。
薮蛇。あるいは自爆。もしくは墓穴を掘った。
不意に打ち返された百点満点の答えは、一人っ子かつ邪な想いを寄せる僕に突き刺さる。やめてよ、変な性癖開発するの。
……あと下の名前呼ばれるの、これが初めてっていうのもどうなのよ、僕。
(平常心、平常心)
とりあえず夜蛾学長の顔でも思い出しておこう。
「そ。忙しくてあんまりマンションに戻ってないし、移動に時間を割くくらいなら職員寮に住んだ方が合理的でしょ」
久しぶりに鍛練を付き合ってもらい、喉を潤すため自販機のスポーツ飲料を一気に飲み干す。
五条はというと埃一つ纏っておらず、甘ったるそうなフルーツオレを美味しそうに飲んでいた。
唐突に教えて貰った引越し情報。
少々愛着のあるあの部屋をもう見ることがないのかと思うと、少しだけ寂しい気がする。
……それと同時に浮かんだのは、素朴な疑問。
「……五条さんのあの大きいベッド、部屋に入るんですか?」
「何のこと?」
「え?」
五条悟の引越し事情#01
「名無し、見てみて〜。すんごいふっかふか。」
百貨店のベッドへ深く腰掛ければ、質のいいスプリングがふんわりと身体を押し返す。
色んな家具を物色する僕を横目に、真っ先に値札を確認するのは名無しだ。
白いブラウスに細身のスキニーパンツ。細い足首がよく見える裾丈は、ある意味絶対領域かもしれない。
欲を言えばスカートとか、ショートパンツとかで生脚を拝みたい下心はあるのだけど。
「……高ッ」
「普通でしょ。ま、僕柔らかすぎるベッドあんま好きじゃないんだけど」
「ゼロが多い」と目を逸らしながら値札をそっと伏せる彼女は、相変わらず金銭感覚が極々一般家庭レベルだ。
そんな反応が見たくて僕は好みでもないベッドを物色したのだけど、きっと彼女は知る由もないだろう。
「……今更なんですけど」
「何?」
「私が買い物、ついてきてよかったんですか?」
何を今更。僕が誘ったというのに。
「名無し、ツレなーい。折角の引越しだよ?一人で家具を見るより、誰かと見たほうが楽しくない?」
「まぁ、そうかもしれませんが。」
コホンと小さく咳払い。
居心地悪そうにしているのは、百貨店の雰囲気が場違いだと感じているせいだろうか。
所在なさげに辺りを見回す名無しは、彼女には悪いが小動物のようで可愛らしい。……こんなこと口にした日には暫く口を聞いて貰えないのだろうが。
「周りからは不思議な組み合わせだと思われてそうだな、と思って。」
「どう見てもカップルでしょ?」
「それはないでしょう。」
悪意なき、一刀両断。
はいはい今日も脈ナシ。……嘘でしょ?この僕相手に?ちょっとショックかも。
「『先生』ってお呼びしてもいいんですけど、休日に教師と生徒で買い物…ってただならない感じがしますよね。」
「えぇ〜ただならない感じってどういう感じ?」
「教育委員会が黙っちゃいない案件ですよ。だからそうですね……精々、全く似ていない腹違いの兄妹とか……」
それも無理があるんじゃ。
喉まで出かかった言葉を呑み込み、僕は口角をニヤッと吊り上げた。
「じゃ、お兄ちゃんって呼ばなきゃね。」
「そうですね、悟お兄ちゃん。」
軽口を返せば、軽口で返ってくる。
──彼女のそれもなんとなしに返した、ただの冗談だろう。
薮蛇。あるいは自爆。もしくは墓穴を掘った。
不意に打ち返された百点満点の答えは、一人っ子かつ邪な想いを寄せる僕に突き刺さる。やめてよ、変な性癖開発するの。
……あと下の名前呼ばれるの、これが初めてっていうのもどうなのよ、僕。
(平常心、平常心)
とりあえず夜蛾学長の顔でも思い出しておこう。
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