立夏と六花
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(おや。報告受けてなかったんだけど)
顔を覆い隠す漆黒の薄布の下で、私はそっとほくそ笑む。
先程まで『餌』として夏油傑のところの小娘を放り入れていたところ、よく見知った──いや。"はるか昔"からよく知っている女が飛び込み参加してきたではないか。
一年半……否、二年ぶりか。
高専に、六眼に、五条悟に。私があの穴蔵へ出入りしていることを勘づかれては面倒なことになるため、二年前の夏頃に足を運ぶのをやめたのだ。
(元気そうで何より。…いや、死ねぬ身体なのに元気もなにもないか)
観客席の隅で運営に紛れて見物したいのは山々だが、此処も潮時だろう。
彼女がここにいるということは遅かれ早かれ高専に気取られる。
(非呪術師の脳に手を加える、いい実験になった。……成果としては悪くない。)
刺激に飢えた金持ちのための道楽、という名目。
『酒池肉林』
現代では酒と肉に溺れると解釈されているが、本来の意味は司馬遷による『史記』に由来する。
かつて悪逆を極めた妲己が酒で池を満たし、林に放った肉──つまり、奴隷が猛獣に食い殺される様を、文字通り高みの見物をしたことが語源だ。
この見世物にとってお誂え向きの名前と言えるだろう。
しかしこれは、表向き。
此処は箱庭。私の新しい実験場。
来るべき日に備え、私の飽くなき欲求を満たすためのフラスコなのだ。
呪霊が視えるよう、『彼』が忌み嫌う非呪術師に脳を作り替える術式を使った。
そして身内という餌で誘き寄せるつもりだったが──
立夏と六花#■■
「もっと観ておきたいが、そろそろ頃合だろうな。」
これは裏梅にいい土産話が出来た。
私は黒布の下で笑みを深く刻み、人知れず観客の海から音もなく沈んだ。
顔を覆い隠す漆黒の薄布の下で、私はそっとほくそ笑む。
先程まで『餌』として夏油傑のところの小娘を放り入れていたところ、よく見知った──いや。"はるか昔"からよく知っている女が飛び込み参加してきたではないか。
一年半……否、二年ぶりか。
高専に、六眼に、五条悟に。私があの穴蔵へ出入りしていることを勘づかれては面倒なことになるため、二年前の夏頃に足を運ぶのをやめたのだ。
(元気そうで何より。…いや、死ねぬ身体なのに元気もなにもないか)
観客席の隅で運営に紛れて見物したいのは山々だが、此処も潮時だろう。
彼女がここにいるということは遅かれ早かれ高専に気取られる。
(非呪術師の脳に手を加える、いい実験になった。……成果としては悪くない。)
刺激に飢えた金持ちのための道楽、という名目。
『酒池肉林』
現代では酒と肉に溺れると解釈されているが、本来の意味は司馬遷による『史記』に由来する。
かつて悪逆を極めた妲己が酒で池を満たし、林に放った肉──つまり、奴隷が猛獣に食い殺される様を、文字通り高みの見物をしたことが語源だ。
この見世物にとってお誂え向きの名前と言えるだろう。
しかしこれは、表向き。
此処は箱庭。私の新しい実験場。
来るべき日に備え、私の飽くなき欲求を満たすためのフラスコなのだ。
呪霊が視えるよう、『彼』が忌み嫌う非呪術師に脳を作り替える術式を使った。
そして身内という餌で誘き寄せるつもりだったが──
立夏と六花#■■
「もっと観ておきたいが、そろそろ頃合だろうな。」
これは裏梅にいい土産話が出来た。
私は黒布の下で笑みを深く刻み、人知れず観客の海から音もなく沈んだ。