僕達のロズウェル事件簿
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『ちょっと忘れ物。』
そう言って五条さんのマンションに連れて行かれたのだが、私は一体何を見せられているのだろう。
「ジャーン。どう?まだまだ僕もイケるでしょ?」
恐らく、五条さんが高専時代に着ていた制服だろう。
袖や裾の丈を見る限り、高校生の時から背丈が高かったのか……と不本意ながら羨ましく思ってしまった。
「五条さん、お幾つでしたっけ。」
「今年で24。」
セーフといえばセーフだし、アウトといえばアウトである。
疑惑の判定を下すことが出来ず、私は何とも言えない微妙な表情を浮かべてしまった。
「……で、なんで突然制服なんですか?」
「いやぁ、この間隣の席で授業聞いてたら、僕ももう一度学生気分を満喫したくなっちゃって。」
『このために取りに来たんですか』という言葉を呑み込んで、私は空いている手でこめかみを押える。
五条さん一人で取りに行くのなら止めはしないけれど、呪いのせいで付き合わされる身にもなってもらいたい。
未だにこの距離感で風呂やトイレ、着替えが恥ずかしいと感じてしまう私の気持ちも察して欲しかった。
まぁ言ったところで『そろそろ慣れたら?』と笑いながら一蹴されるのだろうけど。
「ってわけで。」
「はい。」
「ゲーセン行こうか」
「え、えぇ……手、繋がったままですよ?」
「だから違和感ないんじゃないの。」
「……というのは?」
「学生カップルっぽいでしょ?」
学生《バカ》ップルの間違いでは。
仲睦まじいカップルは非常に微笑ましいのだが、いざ自分がそれに扮するとなると話は別だ。
かといって目の前の悪ノリが過ぎる担任教師はウキウキである。それはもう、非常に。
「ね、ね。スタバ奢るからさぁ〜」と楽しそうに笑うものだから、私は諦めて「今日だけですよ」と項垂れるのだった。
#09.学生の遊び方
「名無し、もう少し寄ってよ〜」
「ち、近すぎじゃないですか?」
「しょーがないじゃん。手、繋いでいるんだから」
と、言われましても。
手を引かれ、肩と肩が密着してしまいそうな近さに戸惑っている間に、容赦なく光るフラッシュと落とされるシャッター。
機械から聞こえる『それじゃあ、もう一回撮るよ!』という声ほど急かすものもないだろう。
そんなやり取りをしたのが、一分前。
「……プリクラ、初めて撮りました…」
「へー。あ、だから表情ぎこちないワケ。」
「まぁ、そうですね。というか五条さんの隣で写真って、ある意味罰ゲームでしょ?」
「そこはご褒美って言って欲しいんだけど。」
写真自体撮る習慣がなかったし、そもそも住んでいた地元の生活圏内にゲームセンターがなかった。
おかげで全くサボるところがない中学生時代を送れたのだが、今思えばそれはそれで面白くない気もする。
当時の友人と写真を撮ってはしゃぐ機会があれば、慣れないプリクラも楽しく撮れたのかもしれない。
まぁ、言ったところで後の祭りなのは分かっているのだが。
筐体の外側に設置された、ラクガキブース。
五条さんは利き手ではないはずの左手で、器用にペンを持って『さとる♡名無し』とラクガキし始める始末だ。
学生時代に夏油傑や硝子さんとゲームセンターに行く機会があったのだろうか。
はたまた今まで付き合った女の人とこんな風にゲームセンターで遊ぶ機会があったのだろうか。
――画面上に写る自分の表情が酷く不細工に見えて、つい失笑してしまう。
不釣り合いだし、恥ずかしいし、何よりこういう場に慣れていないことが……ちょっとだけ惨めだった。
心臓がキュッと縮こまるような居心地の悪さを感じながら、私はスタンプ欄を何となしに物色する。
「五条さんのラクガキ、浮かれてません?」
「こーゆーのは浮かれてるくらいが丁度いいんだよ〜。んで、数年後見返して爆笑するの。『若かったな〜』って。」
私もそんな時が来るのだろうか。
「そういうものですか。」
「そーゆーもんなの。」
プリクラの印刷プレビュー写真を一見すれば、確かに学生カップルに見えなくもない。
まぁ、サングラスを掛けた学生なんて、顔がいくら良くても怪しいといえば怪しいのだが。
スタンプを選んでいれば、ふと目に付いた黒いソレ。
これなら困惑している私の不格好な表情も、幾分マシになるかもしれない。
「五条さん、五条さん。」
「ん?」
「おそろい。」
なんて。
安っぽいイラスト調の、黒いサングラス。
一番写りが悪かった私の顔にポンと乗せれば、微妙な表情も少しだけマシになった……ような気がした。
「名無し、サングラス似合わなーい。」
ケタケタと笑う、学生に化けた担任教師。
こんなちょっと苦い経験もいつか楽しい思い出に変わればいいね、なんて。私はどこか他人事のように思うのでした。
そう言って五条さんのマンションに連れて行かれたのだが、私は一体何を見せられているのだろう。
「ジャーン。どう?まだまだ僕もイケるでしょ?」
恐らく、五条さんが高専時代に着ていた制服だろう。
袖や裾の丈を見る限り、高校生の時から背丈が高かったのか……と不本意ながら羨ましく思ってしまった。
「五条さん、お幾つでしたっけ。」
「今年で24。」
セーフといえばセーフだし、アウトといえばアウトである。
疑惑の判定を下すことが出来ず、私は何とも言えない微妙な表情を浮かべてしまった。
「……で、なんで突然制服なんですか?」
「いやぁ、この間隣の席で授業聞いてたら、僕ももう一度学生気分を満喫したくなっちゃって。」
『このために取りに来たんですか』という言葉を呑み込んで、私は空いている手でこめかみを押える。
五条さん一人で取りに行くのなら止めはしないけれど、呪いのせいで付き合わされる身にもなってもらいたい。
未だにこの距離感で風呂やトイレ、着替えが恥ずかしいと感じてしまう私の気持ちも察して欲しかった。
まぁ言ったところで『そろそろ慣れたら?』と笑いながら一蹴されるのだろうけど。
「ってわけで。」
「はい。」
「ゲーセン行こうか」
「え、えぇ……手、繋がったままですよ?」
「だから違和感ないんじゃないの。」
「……というのは?」
「学生カップルっぽいでしょ?」
学生《バカ》ップルの間違いでは。
仲睦まじいカップルは非常に微笑ましいのだが、いざ自分がそれに扮するとなると話は別だ。
かといって目の前の悪ノリが過ぎる担任教師はウキウキである。それはもう、非常に。
「ね、ね。スタバ奢るからさぁ〜」と楽しそうに笑うものだから、私は諦めて「今日だけですよ」と項垂れるのだった。
#09.学生の遊び方
「名無し、もう少し寄ってよ〜」
「ち、近すぎじゃないですか?」
「しょーがないじゃん。手、繋いでいるんだから」
と、言われましても。
手を引かれ、肩と肩が密着してしまいそうな近さに戸惑っている間に、容赦なく光るフラッシュと落とされるシャッター。
機械から聞こえる『それじゃあ、もう一回撮るよ!』という声ほど急かすものもないだろう。
そんなやり取りをしたのが、一分前。
「……プリクラ、初めて撮りました…」
「へー。あ、だから表情ぎこちないワケ。」
「まぁ、そうですね。というか五条さんの隣で写真って、ある意味罰ゲームでしょ?」
「そこはご褒美って言って欲しいんだけど。」
写真自体撮る習慣がなかったし、そもそも住んでいた地元の生活圏内にゲームセンターがなかった。
おかげで全くサボるところがない中学生時代を送れたのだが、今思えばそれはそれで面白くない気もする。
当時の友人と写真を撮ってはしゃぐ機会があれば、慣れないプリクラも楽しく撮れたのかもしれない。
まぁ、言ったところで後の祭りなのは分かっているのだが。
筐体の外側に設置された、ラクガキブース。
五条さんは利き手ではないはずの左手で、器用にペンを持って『さとる♡名無し』とラクガキし始める始末だ。
学生時代に夏油傑や硝子さんとゲームセンターに行く機会があったのだろうか。
はたまた今まで付き合った女の人とこんな風にゲームセンターで遊ぶ機会があったのだろうか。
――画面上に写る自分の表情が酷く不細工に見えて、つい失笑してしまう。
不釣り合いだし、恥ずかしいし、何よりこういう場に慣れていないことが……ちょっとだけ惨めだった。
心臓がキュッと縮こまるような居心地の悪さを感じながら、私はスタンプ欄を何となしに物色する。
「五条さんのラクガキ、浮かれてません?」
「こーゆーのは浮かれてるくらいが丁度いいんだよ〜。んで、数年後見返して爆笑するの。『若かったな〜』って。」
私もそんな時が来るのだろうか。
「そういうものですか。」
「そーゆーもんなの。」
プリクラの印刷プレビュー写真を一見すれば、確かに学生カップルに見えなくもない。
まぁ、サングラスを掛けた学生なんて、顔がいくら良くても怪しいといえば怪しいのだが。
スタンプを選んでいれば、ふと目に付いた黒いソレ。
これなら困惑している私の不格好な表情も、幾分マシになるかもしれない。
「五条さん、五条さん。」
「ん?」
「おそろい。」
なんて。
安っぽいイラスト調の、黒いサングラス。
一番写りが悪かった私の顔にポンと乗せれば、微妙な表情も少しだけマシになった……ような気がした。
「名無し、サングラス似合わなーい。」
ケタケタと笑う、学生に化けた担任教師。
こんなちょっと苦い経験もいつか楽しい思い出に変わればいいね、なんて。私はどこか他人事のように思うのでした。