僕達のロズウェル事件簿
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「ええっと、ななしさん。これは…?」
「気にしないでください、ちょっと呪われただけです。」
「そーそ。参観日だと思って〜」
#08.とある補助監督の授業にて
ななしさんから説明を受けたが、どうやら呪われて五条さんと手が離せなくなったようだった。
だから伊地知さんが胃薬追加で飲んでいたのか…と納得しつつ、授業をいつも通り進めることにした。
……しかし、目の前に五条悟がいるということはかなりの圧で。
伊地知さんが胃薬を手放せない理由、わかった気がした。
あと義務教育時代、やたらと担任の教師が授業参観の時に緊張していたり張り切っていた理由が、今更ながら分かってしまった。分かりたくなかった。
しかし、こんな状況でもななしさんはしっかり予習して来ていたようだった。
真面目で、理解力も高い。
分からないところがあれば、授業のキリがいいところで手短に訊ねてくるので、彼女はまさに優秀な生徒と言えるだろう。
それに加え、手放しで『可愛い』と太鼓判を押せる容姿。
……いや、勿論個人の好みはあるだろうが。
少なくとも俺は可愛いと思うし、彼氏がいるのかどうか非常に気になるところではあった。
補助監督は高専の授業も兼任するため、業務過多になりがちだ。
おかげで仕事が嫌になる時もあるが、この授業の時間だけは嫌いじゃない。
いつも通り充実した時間になる――はずだった。
目の前に、特級呪術師……しかも、上層部の悩みの種であり、補助監督の中でも要注意人物として一番に挙げられる男がいるのだから。
真剣にノートを取るななしさんを、ほわほわした気持ちで眺める隙なんてありゃしない。
ああ、俺の癒しの時間が……。
授業の最後、小テストをしている間。
俺は手持ち無沙汰で、教室へぐるりと視線を一巡させた。
必然的にばちりと絡む視線。
ななしさんは小テストを行っているため、俺と目が合うのは一人しかいない。
……いや。黒い目隠しをしているせいで、視線が合っているかどうか怪しいが、少なくとも俺は相手を見てしまったし、恐らく相手は俺を見ている。
形のいい唇がゆっくり開かれた。
音もなく、所謂『口パク』で発せられる言葉。
――読唇術なんて身につけていなくても分かる。
『この子は、僕のだよ』
これは、警告だ。
……どこまで知っているのか。
どこまで、気付いていたのか。
態度に出した覚えもないし、そんな素振りはなかったはずだ。
俺は腹の底からサッと血の気が引いていくような冷たさを感じ、チョークの粉が粉砂糖のように落ちている床へ視線を落とした。
特級呪術師、こっわ…。
***
小テストを解くため伏し目がちになった薄い瞼。
黒い睫毛がやわらかく影を落とした目元は真剣そのものだった。
授業態度もいい。
理解も早い。
予め予習を済ませ、履修前で真っ白であるはずの教科書には付箋とマーカーが既に引かれていた。
『真面目だ』『几帳面だ』『賢い』とは思っていたが、なるほど。こうやって予習している結果なのだろう。
こうして彼女の隣の席に座り、通常教科の授業を聞いていると、まるで僕まで学生になったような錯覚に陥る。
名無しが同級生だったなら――きっと、記憶の中の青い春は、更に鮮やかになっていただろうに。
(ま、ちょうどいい牽制にはなったかな。)
僕は眠気を隠すことなく欠伸をひとつ零し、数時間前まで名無しと繋いでいた左手で気だるく頬杖をつくのであった。
「気にしないでください、ちょっと呪われただけです。」
「そーそ。参観日だと思って〜」
#08.とある補助監督の授業にて
ななしさんから説明を受けたが、どうやら呪われて五条さんと手が離せなくなったようだった。
だから伊地知さんが胃薬追加で飲んでいたのか…と納得しつつ、授業をいつも通り進めることにした。
……しかし、目の前に五条悟がいるということはかなりの圧で。
伊地知さんが胃薬を手放せない理由、わかった気がした。
あと義務教育時代、やたらと担任の教師が授業参観の時に緊張していたり張り切っていた理由が、今更ながら分かってしまった。分かりたくなかった。
しかし、こんな状況でもななしさんはしっかり予習して来ていたようだった。
真面目で、理解力も高い。
分からないところがあれば、授業のキリがいいところで手短に訊ねてくるので、彼女はまさに優秀な生徒と言えるだろう。
それに加え、手放しで『可愛い』と太鼓判を押せる容姿。
……いや、勿論個人の好みはあるだろうが。
少なくとも俺は可愛いと思うし、彼氏がいるのかどうか非常に気になるところではあった。
補助監督は高専の授業も兼任するため、業務過多になりがちだ。
おかげで仕事が嫌になる時もあるが、この授業の時間だけは嫌いじゃない。
いつも通り充実した時間になる――はずだった。
目の前に、特級呪術師……しかも、上層部の悩みの種であり、補助監督の中でも要注意人物として一番に挙げられる男がいるのだから。
真剣にノートを取るななしさんを、ほわほわした気持ちで眺める隙なんてありゃしない。
ああ、俺の癒しの時間が……。
授業の最後、小テストをしている間。
俺は手持ち無沙汰で、教室へぐるりと視線を一巡させた。
必然的にばちりと絡む視線。
ななしさんは小テストを行っているため、俺と目が合うのは一人しかいない。
……いや。黒い目隠しをしているせいで、視線が合っているかどうか怪しいが、少なくとも俺は相手を見てしまったし、恐らく相手は俺を見ている。
形のいい唇がゆっくり開かれた。
音もなく、所謂『口パク』で発せられる言葉。
――読唇術なんて身につけていなくても分かる。
『この子は、僕のだよ』
これは、警告だ。
……どこまで知っているのか。
どこまで、気付いていたのか。
態度に出した覚えもないし、そんな素振りはなかったはずだ。
俺は腹の底からサッと血の気が引いていくような冷たさを感じ、チョークの粉が粉砂糖のように落ちている床へ視線を落とした。
特級呪術師、こっわ…。
***
小テストを解くため伏し目がちになった薄い瞼。
黒い睫毛がやわらかく影を落とした目元は真剣そのものだった。
授業態度もいい。
理解も早い。
予め予習を済ませ、履修前で真っ白であるはずの教科書には付箋とマーカーが既に引かれていた。
『真面目だ』『几帳面だ』『賢い』とは思っていたが、なるほど。こうやって予習している結果なのだろう。
こうして彼女の隣の席に座り、通常教科の授業を聞いていると、まるで僕まで学生になったような錯覚に陥る。
名無しが同級生だったなら――きっと、記憶の中の青い春は、更に鮮やかになっていただろうに。
(ま、ちょうどいい牽制にはなったかな。)
僕は眠気を隠すことなく欠伸をひとつ零し、数時間前まで名無しと繋いでいた左手で気だるく頬杖をつくのであった。