僕達のロズウェル事件簿
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呪いにかかってから、数日が経過した。
目が覚めると、心臓に悪い光景が目の前に広がっている。
血溜まりの実験台とか、カビ臭く薄暗い部屋――など、いつか見た景色ではないのだが、これはこれで眼福を通り越して目に毒だ。
「おはよ、名無し。」
透き通るように綺麗な長い睫毛。
色素という色素が薄く、映えるように鮮やかな空色の瞳が眩しい。
女優肌のように滑らかな頬。ささくれひとつ無い唇。
造形が国宝級の五条さんの顔をここ数日毎朝見せつけられているが、これには一生慣れそうにない。
――それが鼻先数十センチの近さなのだから、口から心臓が飛び出そうになるのも無理はないだろう。
しかも彼は『今起きました』という雰囲気ではなく、随分前から起きている様子だった。
「おはよう、ございます」
欠伸を噛み殺しながら挨拶を返せば、満足そうに笑って、未だに離れないままの手をキュッと握り返してくれる。
それがなんだか気恥ずかしくて、一瞬だけ息が詰まってしまった。
「あの、前から気になっていたんですけど、いつから起きられているんですか?」
「ついさっきかな。」
「嘘でしょう。…起きたなら起こして下さっていいんですよ」
起き抜けには御手洗へ行きたいだろうし、喉も乾いているだろう。
申し訳なさで胃がキュッと縮こまるような気分になった。胃に穴が空きそうだ。
「えー、起こしたら名無しの寝顔見れないじゃん。」
「ま、まさかずっと見てたんですか?冗談でしょう?」
寝顔なんて、そんないいものじゃないだろうに。
私の動揺をよそに、五条さんが浮かべる笑顔は実に無邪気なものだった。
「名無しのほっぺ、大福みたいにフニフニなんだね」
つついたんですか。私の頬を。
思わず無防備だった頬を左手で覆えば、寝起きだからかいつもより少し脂っぽい感触。
それが何だか恥ずかしく、今すぐ布団の中へ隠れてしまいたい衝動と、顔を洗いたい欲求と、『だから硝子さんにデリカシーがないって言われるんですよ』と文句を言いたくなった感情が渦巻いて、私は何も言えなくなってしまった。
「ま、僕が早起きなのは気にしないで。色々あるからね。」
「……色々?」
「そ、色々。」
理由を軽く問うてもニッコリと笑うだけ。
どうせ問い詰めても無駄だろう。
私は今日も朝から跳ね上がる心拍数を落ち着かせるため、大きく深呼吸を繰り返すのであった。
#06.ひみつのモーニング
痩けた頬が、ふくふくと日増しに人間らしく、やわらかい肉付きになり、今や指で押せばふわふわとした感触に。
これを『ニヤけるな』というのは無理のある話だ。
――実の所、名無しと同棲していた時から朝は彼女より早起きしていた。
理由は、健全男性諸君ならほぼ毎日経験していることだ。
所謂、朝勃ち。
あと大きな声で言えないが、まぁ、『処理』もある。
……溜まるものなんだから仕方ない。しかも名無しとは四六時中一緒なんだから。
むしろオオカミになることなく、右手と仲良ししていることを褒めて欲しいくらいだ。
起こすことなく、最短で、手早く。
それが成せるのは、隣で寝息を立てている彼女をオカズにしているからか。
うんうん、我ながらクズだと思う。僕だって分かっているよ。
バレた時はどうするのか、って?
……さて、どうしてやろうか。
その時はオオカミになってしまうのも、いっそアリかもしれない。
目が覚めると、心臓に悪い光景が目の前に広がっている。
血溜まりの実験台とか、カビ臭く薄暗い部屋――など、いつか見た景色ではないのだが、これはこれで眼福を通り越して目に毒だ。
「おはよ、名無し。」
透き通るように綺麗な長い睫毛。
色素という色素が薄く、映えるように鮮やかな空色の瞳が眩しい。
女優肌のように滑らかな頬。ささくれひとつ無い唇。
造形が国宝級の五条さんの顔をここ数日毎朝見せつけられているが、これには一生慣れそうにない。
――それが鼻先数十センチの近さなのだから、口から心臓が飛び出そうになるのも無理はないだろう。
しかも彼は『今起きました』という雰囲気ではなく、随分前から起きている様子だった。
「おはよう、ございます」
欠伸を噛み殺しながら挨拶を返せば、満足そうに笑って、未だに離れないままの手をキュッと握り返してくれる。
それがなんだか気恥ずかしくて、一瞬だけ息が詰まってしまった。
「あの、前から気になっていたんですけど、いつから起きられているんですか?」
「ついさっきかな。」
「嘘でしょう。…起きたなら起こして下さっていいんですよ」
起き抜けには御手洗へ行きたいだろうし、喉も乾いているだろう。
申し訳なさで胃がキュッと縮こまるような気分になった。胃に穴が空きそうだ。
「えー、起こしたら名無しの寝顔見れないじゃん。」
「ま、まさかずっと見てたんですか?冗談でしょう?」
寝顔なんて、そんないいものじゃないだろうに。
私の動揺をよそに、五条さんが浮かべる笑顔は実に無邪気なものだった。
「名無しのほっぺ、大福みたいにフニフニなんだね」
つついたんですか。私の頬を。
思わず無防備だった頬を左手で覆えば、寝起きだからかいつもより少し脂っぽい感触。
それが何だか恥ずかしく、今すぐ布団の中へ隠れてしまいたい衝動と、顔を洗いたい欲求と、『だから硝子さんにデリカシーがないって言われるんですよ』と文句を言いたくなった感情が渦巻いて、私は何も言えなくなってしまった。
「ま、僕が早起きなのは気にしないで。色々あるからね。」
「……色々?」
「そ、色々。」
理由を軽く問うてもニッコリと笑うだけ。
どうせ問い詰めても無駄だろう。
私は今日も朝から跳ね上がる心拍数を落ち着かせるため、大きく深呼吸を繰り返すのであった。
#06.ひみつのモーニング
痩けた頬が、ふくふくと日増しに人間らしく、やわらかい肉付きになり、今や指で押せばふわふわとした感触に。
これを『ニヤけるな』というのは無理のある話だ。
――実の所、名無しと同棲していた時から朝は彼女より早起きしていた。
理由は、健全男性諸君ならほぼ毎日経験していることだ。
所謂、朝勃ち。
あと大きな声で言えないが、まぁ、『処理』もある。
……溜まるものなんだから仕方ない。しかも名無しとは四六時中一緒なんだから。
むしろオオカミになることなく、右手と仲良ししていることを褒めて欲しいくらいだ。
起こすことなく、最短で、手早く。
それが成せるのは、隣で寝息を立てている彼女をオカズにしているからか。
うんうん、我ながらクズだと思う。僕だって分かっているよ。
バレた時はどうするのか、って?
……さて、どうしてやろうか。
その時はオオカミになってしまうのも、いっそアリかもしれない。