僕達のロズウェル事件簿
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「私は床で結構ですから」
「そんなことひたら腕が痛くない?ひとつのベッドで寝るの、初めてじゃないんだからさぁ」
「五条さん家のベッドでの話でしょう。これはシングルベッドですよ?」
至ってシンプルな一人用ベッド。
な名無しの寮の部屋に備え付けられているベッドで横になりながら、五条はニヤリと笑った。
「僕は構わないけど?」
「私は構います。」
「キャー!もしかしてな名無しったら僕のこと男として見てくれてる?」
からかい半分、期待半分。
五条の言葉に眉ひとつ動かさずに、な名無しは小さく首を傾げた。
「?…五条さんは男性でしょう?」
五条の質問の意図が伝わらなかったらしい。無念。
五条はガックリとあからさまに肩を落としながら「いやまぁ、そんな気はしてたけど」とため息混じりに小さく呟いた。
#04.トカゲの悪癖
結局、五条さんに根負けしてベッドで寝ることになった。
彼のマンションに居候している時は、いつの間にか抱き枕にされていることがしょっちゅうあったが、今回はわけが違う。
川の字で寝るにはやはり狭く、『五条さんが寝苦しくないか』その一点だけが気掛かりだった。
「あの、五条さん。」
「なーに?」
「思ったんですけど、私の腕を切り落としたら解決しませんかね」
それは呪いにかかった当初から考えていたこと。
切り落として呪いが解けたなら、腕を返してもらえばくっつかないことはない。
物凄く疲れるが、トカゲのしっぽのように腕を生やすことも出来る。
けれど、
「それはやめといた方がいいんじゃない?」
やっぱり。
「こういう類の呪いは『縛り』のような条件をつけるから、祓った後もしつこく呪いが続いてるわけだし。正攻法で解呪しなかった場合、どんなしっぺ返しが来るか分からないしね。まぁ、飽きるまで付き合うのが得策だよ。」
それもそうか。
「なるほど、じゃあダメですね」
期待していなかったわけじゃないが、やはり駄目のようだ。
五条さんに迷惑をかけていることだけが気掛かりだが、状況を悪化させる訳にもいかない。
私がそっと溜息をつくと同時に、至近距離から「はーーー」と大きな溜息が聞こえてきた。
「あのさ、大前提で僕がそれを許すと思ってんの?」
少し、怒っているようだった。
綺麗な形の眉は訝しげに顰められ、普段は目隠しやサングラスで隠された宝石のような瞳は不機嫌そうに細められている。
「えっと、くっつくし、なんなら生えてくるのでいいかな、って」
「…………すみません、悪癖ですね。」
「本当に。」
沈黙があまりにも雄弁に訴えてきていたものだから、つい圧に負けてしまう。
「ま、悪い癖だと分かってるならいいや」と言いながら、五条さんは空いている方の手で私の頭をくしゃりと撫でてくれた。
「ご迷惑じゃないですか?」
「いんや。僕は別にこの状況、満更でもないし〜」
言葉に、裏はない。
心の底からの本心なのだろう。
ゴロリと身体を横に向け、こちらへ身体を向けてくる五条さん。
ナツメ球だけが灯った薄暗い部屋の中でも、悪戯っぽく細めた六眼は一際鮮やかに見えた。
「それは、面倒な会議に出なくていいからですか?」
「それは盲点だったかも。」
「いいね、それ」と笑いながら、繋がれた手を引っ張られる。
私の腕よりも随分と逞しい、五条さんの自由の利く右腕が背中へするりと回された。
鼻先が、Tシャツ越しの胸板へ押し当てられる。
コットン生地に埋め尽くされた視界も然ることながら、吸い込む空気が五条さんの匂いがすることに、何故か頬がほかほかと火照った。
「あの、五条さん、私を抱き枕か何かと勘違いされていませんか…?」
「えー、だって名無し抱き心地いいんだもん」
これは、他意はないはずだ。
寝相がいつも悪いから。
気が付けば人を後ろから抱きしてめて、抱き枕にするのがこの人の癖だったではないか。
距離感がバグったスキンシップもいつも通り。
そう、別にいつも通りの『五条悟』の生態だ。
それにこの人は保護者で、担任で。
今は仕方なく衣食住を共にしているのであって、これはそう。なんでもない。
あぁ、嗚呼。心臓の音がやけにうるさい。少し静かにして欲しい。
「名無し、いい匂い。」
そう。これは、なんでもないのだ。
そっと目を閉じて、深呼吸をひとつ。
身体中の血管がバクバクと脈打つような錯覚から意識を逸らしつつ、私は「五条さん、おやすみなさい」と久方ぶりにこの言葉を口にしたのだった。
「そんなことひたら腕が痛くない?ひとつのベッドで寝るの、初めてじゃないんだからさぁ」
「五条さん家のベッドでの話でしょう。これはシングルベッドですよ?」
至ってシンプルな一人用ベッド。
な名無しの寮の部屋に備え付けられているベッドで横になりながら、五条はニヤリと笑った。
「僕は構わないけど?」
「私は構います。」
「キャー!もしかしてな名無しったら僕のこと男として見てくれてる?」
からかい半分、期待半分。
五条の言葉に眉ひとつ動かさずに、な名無しは小さく首を傾げた。
「?…五条さんは男性でしょう?」
五条の質問の意図が伝わらなかったらしい。無念。
五条はガックリとあからさまに肩を落としながら「いやまぁ、そんな気はしてたけど」とため息混じりに小さく呟いた。
#04.トカゲの悪癖
結局、五条さんに根負けしてベッドで寝ることになった。
彼のマンションに居候している時は、いつの間にか抱き枕にされていることがしょっちゅうあったが、今回はわけが違う。
川の字で寝るにはやはり狭く、『五条さんが寝苦しくないか』その一点だけが気掛かりだった。
「あの、五条さん。」
「なーに?」
「思ったんですけど、私の腕を切り落としたら解決しませんかね」
それは呪いにかかった当初から考えていたこと。
切り落として呪いが解けたなら、腕を返してもらえばくっつかないことはない。
物凄く疲れるが、トカゲのしっぽのように腕を生やすことも出来る。
けれど、
「それはやめといた方がいいんじゃない?」
やっぱり。
「こういう類の呪いは『縛り』のような条件をつけるから、祓った後もしつこく呪いが続いてるわけだし。正攻法で解呪しなかった場合、どんなしっぺ返しが来るか分からないしね。まぁ、飽きるまで付き合うのが得策だよ。」
それもそうか。
「なるほど、じゃあダメですね」
期待していなかったわけじゃないが、やはり駄目のようだ。
五条さんに迷惑をかけていることだけが気掛かりだが、状況を悪化させる訳にもいかない。
私がそっと溜息をつくと同時に、至近距離から「はーーー」と大きな溜息が聞こえてきた。
「あのさ、大前提で僕がそれを許すと思ってんの?」
少し、怒っているようだった。
綺麗な形の眉は訝しげに顰められ、普段は目隠しやサングラスで隠された宝石のような瞳は不機嫌そうに細められている。
「えっと、くっつくし、なんなら生えてくるのでいいかな、って」
「…………すみません、悪癖ですね。」
「本当に。」
沈黙があまりにも雄弁に訴えてきていたものだから、つい圧に負けてしまう。
「ま、悪い癖だと分かってるならいいや」と言いながら、五条さんは空いている方の手で私の頭をくしゃりと撫でてくれた。
「ご迷惑じゃないですか?」
「いんや。僕は別にこの状況、満更でもないし〜」
言葉に、裏はない。
心の底からの本心なのだろう。
ゴロリと身体を横に向け、こちらへ身体を向けてくる五条さん。
ナツメ球だけが灯った薄暗い部屋の中でも、悪戯っぽく細めた六眼は一際鮮やかに見えた。
「それは、面倒な会議に出なくていいからですか?」
「それは盲点だったかも。」
「いいね、それ」と笑いながら、繋がれた手を引っ張られる。
私の腕よりも随分と逞しい、五条さんの自由の利く右腕が背中へするりと回された。
鼻先が、Tシャツ越しの胸板へ押し当てられる。
コットン生地に埋め尽くされた視界も然ることながら、吸い込む空気が五条さんの匂いがすることに、何故か頬がほかほかと火照った。
「あの、五条さん、私を抱き枕か何かと勘違いされていませんか…?」
「えー、だって名無し抱き心地いいんだもん」
これは、他意はないはずだ。
寝相がいつも悪いから。
気が付けば人を後ろから抱きしてめて、抱き枕にするのがこの人の癖だったではないか。
距離感がバグったスキンシップもいつも通り。
そう、別にいつも通りの『五条悟』の生態だ。
それにこの人は保護者で、担任で。
今は仕方なく衣食住を共にしているのであって、これはそう。なんでもない。
あぁ、嗚呼。心臓の音がやけにうるさい。少し静かにして欲しい。
「名無し、いい匂い。」
そう。これは、なんでもないのだ。
そっと目を閉じて、深呼吸をひとつ。
身体中の血管がバクバクと脈打つような錯覚から意識を逸らしつつ、私は「五条さん、おやすみなさい」と久方ぶりにこの言葉を口にしたのだった。