青藍の冬至
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疲れていたのか、はたまた緊張の糸が切れたのか。
死んだように眠る彼女の隣で、ごろりと寝転がってスマホを眺める。
煌々と照らされた液晶画面の光で起こしてしまうかと思ったが、ぐっすり寝入った名無しを見遣りながら『杞憂だったか』と小さく笑った。
伊地知を急かして調べさせた資料。
今度あったらコーヒーの一杯でもご馳走してやることにしよう。
PDFに纏められた資料を、スワイプして読み解く。
それは『ななし名無し』に関する資料。
出生、戸籍、彼女を取り巻いていた環境。
それは至って自然で、普通で、何の変哲もないものだった。
が。最後のページに載せられていた、家系図を見て僕は目隠しをわざわざ取ってまで二度見してしまった。
「…………そりゃ適性もあるだろうね。」
一人心地に、呟いた。
かなり昔の――それこそ、ざっくり1200年…平安時代だろう。
あまりにも有名で、浄瑠璃の演目にもなっているような人物。
『蘆屋道満』
八百比丘尼になった娘の、父親だと言われている人物の系譜。
直系ではないものの、少なくとも血筋は脈々と受け継がれている。
――それが呪術界に知られたから、連れてこられたのだろうか。
穏やかに過ごしていた、家族も、場所も、奪われて。
あまりにも腐っている呪術師の世界に辟易してしまい、思わず深い溜息が零れた。これなら呪霊の方がまだ幾分マシかもしれない。
何度目かの溜息を吐き出して、僕はスマホを枕元に放り投げる。
捲っていた目隠しを元に戻して、いつもより温かい布団の中へ身体を滑り込ませた。
軽く寝返りを打って隣を見れば、規則的に上下する薄い身体。
痩けた頬に、ささくれ立った薄い唇。
健康的であればさぞかし可愛らしいだろうに、残念ながら『健康』とはかけ離れた見た目をしてしまっている。
(……硝子に年頃の女の子は何がいるのか、聞いとくかぁ)
きっと変質者を見るような目で見られるのだろう。
いや、決して下心はない。
ただ単に――そう、捨て猫や捨て犬を拾ったような感覚の、はず。
青藍の冬至#04
(まぁ、拾ったことないんだけど)
長さがてんで揃っていない名無しの髪をひと房撫でて、僕はそっと目を閉じた。
死んだように眠る彼女の隣で、ごろりと寝転がってスマホを眺める。
煌々と照らされた液晶画面の光で起こしてしまうかと思ったが、ぐっすり寝入った名無しを見遣りながら『杞憂だったか』と小さく笑った。
伊地知を急かして調べさせた資料。
今度あったらコーヒーの一杯でもご馳走してやることにしよう。
PDFに纏められた資料を、スワイプして読み解く。
それは『ななし名無し』に関する資料。
出生、戸籍、彼女を取り巻いていた環境。
それは至って自然で、普通で、何の変哲もないものだった。
が。最後のページに載せられていた、家系図を見て僕は目隠しをわざわざ取ってまで二度見してしまった。
「…………そりゃ適性もあるだろうね。」
一人心地に、呟いた。
かなり昔の――それこそ、ざっくり1200年…平安時代だろう。
あまりにも有名で、浄瑠璃の演目にもなっているような人物。
『蘆屋道満』
八百比丘尼になった娘の、父親だと言われている人物の系譜。
直系ではないものの、少なくとも血筋は脈々と受け継がれている。
――それが呪術界に知られたから、連れてこられたのだろうか。
穏やかに過ごしていた、家族も、場所も、奪われて。
あまりにも腐っている呪術師の世界に辟易してしまい、思わず深い溜息が零れた。これなら呪霊の方がまだ幾分マシかもしれない。
何度目かの溜息を吐き出して、僕はスマホを枕元に放り投げる。
捲っていた目隠しを元に戻して、いつもより温かい布団の中へ身体を滑り込ませた。
軽く寝返りを打って隣を見れば、規則的に上下する薄い身体。
痩けた頬に、ささくれ立った薄い唇。
健康的であればさぞかし可愛らしいだろうに、残念ながら『健康』とはかけ離れた見た目をしてしまっている。
(……硝子に年頃の女の子は何がいるのか、聞いとくかぁ)
きっと変質者を見るような目で見られるのだろう。
いや、決して下心はない。
ただ単に――そう、捨て猫や捨て犬を拾ったような感覚の、はず。
青藍の冬至#04
(まぁ、拾ったことないんだけど)
長さがてんで揃っていない名無しの髪をひと房撫でて、僕はそっと目を閉じた。