萌黄の清明
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無下限術式。
アキレスと亀。
術式の収束と発散。
課外授業らしく、説明しつつ沸いてでた鬼の呪霊を祓っていく五条さん。
説明の片手間にこの数と等級の呪霊を祓うのだから、やはりこの人はとんでもないな、と改めて実感した。
『僕から離れないでね。』
そう言われ、初めて――いや、生まれてこの方初めて目にした『領域展開』。
萌黄の清明#08
「じゃあ術式順転はブラックホールの原理とはまた違うんですか」
「あれは超重力が何もかも『圧縮』してしまう原理だからね。見た目は似てるけど、あそこまでおっかないものじゃあないかな」
『帳』を張る役目を終え、私は再び運転手として山を下っていた。
後部座席では珍しく先生面した五条と、真面目な表情で『五条悟の術式』について問う少女の姿。
バックミラーでちらりと見遣ったあと、私は再び視線を前方へ向けた。
「無下限術式は……あれはつまり1を2で永遠に割り続けても0.5、0.25…となるから永遠に0にならない、つまり『当たらない』ってことになるんですか?」
「そういうこと。その『無限』を現実に引っ張ってくるのが僕の術式。」
「…………で、『発散』はえぇっと…『無限』という質量を現実に押し出す、という解釈で合ってますか?」
「そうそう。」
少女の――名無しの唸り声が真後ろからウンウン聞こえてくる。
それもそうだ。腐れ縁で五条とは長い付き合いになるが、未だに彼の術式について…正直理解出来ない。
理数系と思いきや物理法則をぶち壊してくるような術式だ。あんなもの反則に近い。
「……………あの、それって『赫』と『蒼』って同時発動は」
「出来るよ?」
「…対消滅で発生するエネルギー、みたいな原理になるんですか?」
対消滅?なんのこっちゃ。
黙って疑問符を浮かべる私とは無関係に、バックミラー越しに五条は満足そうに笑みを浮かべる。
「そうだね、そんなとこ。」
「とりあえず五条先生がトンデモ呪術師ということは分かりました。」
トンデモ呪術師。
あまりにも的を射た渾名に、私は思わず噴き出しそうになった。
「何笑ってんのさ、歌姫。」
「ふふっ…いや、人格もトンデモ野郎だから、あまりにピッタリすぎて。」
笑いを堪えながらハンドルを握っていると「違いますよ!?物凄く強い呪術師って意味ですからね!?」と必死に弁明する名無しの声が聞こえた。
あぁ、うん。なんというか――面白い子だ。
東京校にかつていた灰原のように真っ直ぐで、飲み込みが早く情報の咀嚼が『上手い』。
私が知っている彼女の経歴と照らし合わせれば、どうしても『違和感』が拭えないのが感想だが。
こんな風に正気を保っていられるものなのか?
それがそもそも異常なんじゃないのか。
――いや、よく考えたら五条のヤツとワンツーマンで教師・生徒の関係築けている時点で、やはりこの子は変わり者なのだろう。
それが、私の『ななし名無し』という女の子の第一印象だった。
アキレスと亀。
術式の収束と発散。
課外授業らしく、説明しつつ沸いてでた鬼の呪霊を祓っていく五条さん。
説明の片手間にこの数と等級の呪霊を祓うのだから、やはりこの人はとんでもないな、と改めて実感した。
『僕から離れないでね。』
そう言われ、初めて――いや、生まれてこの方初めて目にした『領域展開』。
萌黄の清明#08
「じゃあ術式順転はブラックホールの原理とはまた違うんですか」
「あれは超重力が何もかも『圧縮』してしまう原理だからね。見た目は似てるけど、あそこまでおっかないものじゃあないかな」
『帳』を張る役目を終え、私は再び運転手として山を下っていた。
後部座席では珍しく先生面した五条と、真面目な表情で『五条悟の術式』について問う少女の姿。
バックミラーでちらりと見遣ったあと、私は再び視線を前方へ向けた。
「無下限術式は……あれはつまり1を2で永遠に割り続けても0.5、0.25…となるから永遠に0にならない、つまり『当たらない』ってことになるんですか?」
「そういうこと。その『無限』を現実に引っ張ってくるのが僕の術式。」
「…………で、『発散』はえぇっと…『無限』という質量を現実に押し出す、という解釈で合ってますか?」
「そうそう。」
少女の――名無しの唸り声が真後ろからウンウン聞こえてくる。
それもそうだ。腐れ縁で五条とは長い付き合いになるが、未だに彼の術式について…正直理解出来ない。
理数系と思いきや物理法則をぶち壊してくるような術式だ。あんなもの反則に近い。
「……………あの、それって『赫』と『蒼』って同時発動は」
「出来るよ?」
「…対消滅で発生するエネルギー、みたいな原理になるんですか?」
対消滅?なんのこっちゃ。
黙って疑問符を浮かべる私とは無関係に、バックミラー越しに五条は満足そうに笑みを浮かべる。
「そうだね、そんなとこ。」
「とりあえず五条先生がトンデモ呪術師ということは分かりました。」
トンデモ呪術師。
あまりにも的を射た渾名に、私は思わず噴き出しそうになった。
「何笑ってんのさ、歌姫。」
「ふふっ…いや、人格もトンデモ野郎だから、あまりにピッタリすぎて。」
笑いを堪えながらハンドルを握っていると「違いますよ!?物凄く強い呪術師って意味ですからね!?」と必死に弁明する名無しの声が聞こえた。
あぁ、うん。なんというか――面白い子だ。
東京校にかつていた灰原のように真っ直ぐで、飲み込みが早く情報の咀嚼が『上手い』。
私が知っている彼女の経歴と照らし合わせれば、どうしても『違和感』が拭えないのが感想だが。
こんな風に正気を保っていられるものなのか?
それがそもそも異常なんじゃないのか。
――いや、よく考えたら五条のヤツとワンツーマンで教師・生徒の関係築けている時点で、やはりこの子は変わり者なのだろう。
それが、私の『ななし名無し』という女の子の第一印象だった。