萌黄の清明
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「ねぇ、いいの?あの子まだ一年でしょ?」
小柄な少女が瓶を片手に構える。
細い体躯。
幼さが残る横顔。
とてもじゃないが呪術師として強そうには見えない。
「大丈夫大丈夫。むしろこの程度で躓かれたら困るんだよねぇ」
助手席と運転席の間へ身を乗り出して、五条は嬉々とした表情を浮かべる。
「まぁ見てなって。僕の名無し、結構強いんだから」
自信満々な笑みを浮かべた新米教師は、それはそれは腹が立つ程にニタリといい笑顔を浮かべるのであった。
萌黄の清明#07
小瓶から繰り出したのは、ひと掬いの水。
瞬く間に刃の形に形成されたそれは、まるで透明な日本刀だ。
「術式、展開。」
水圧を上げ、変化自在な一振の刃となる水。
足に、筋肉に、血管の隅々へ呪力を。
――瞬発的に早まる速度。それと同時にポテンシャル以上の動きに筋肉が悲鳴を上げる。
すかさずかけるのは反転術式。焼ききれた神経や筋は痛みを感じる前にキレイさっぱり元通りだ。
鍛え方が足りぬと言うなら、消耗して補ってやればいい。
まぁこんな芸当、出来る呪術師はそうそういないのだが。
速度を落とすよりも早く、鮮やかに決める一刀両断。
節足動物の成りをした異形の呪霊は、断末魔を上げると同時に霧散する。
まずは、一体。
木々の隙間から放たれる蜘蛛の鋼糸。
取られる足元。
バランスを崩すと同時に手をつけたのは、自生する木々。
「木気比和、」
呪力を流せば、風に揺らされるがままだった木々が突如轟く。
まるで『生物』か『魔物』のように伸びる枝、蔦、根。
瞬く間に土蜘蛛を地に縛り付け、その肢体を呑み込まんとする。
絡んだ糸を切り落とし、木々の間を跳ぶように。
一歩、二歩、踏み込んで三歩。
抵抗できぬ蜘蛛の首を切り落とせば、ヒトのものではない血肉が辺りへ四散した。
***
「ホントにあの子、一年?」
「だから言ったじゃん。」
呪霊を次々と祓う少女。
鬱蒼とした足場など気にしないと言わんばかりに、刀を持った彼女が山中を駆ける。
「……あの噂も本当なの?」
車内でそっと五条へ問えば、後部座席から…それはそれはとても長い溜息が吐き出された。
「……はーーー、そういうのだけは広まるの早いんだから」
人の口に戸を立てられないとはいうが。
五条は至極面倒くさそうに髪を掻きむしった。
「そうは見えないのが正直な感想ね。私には普通の女の子にしか見えないや」
小柄で、細くて、どこにでもいるような女の子。
呪術とは無縁の、なんでもない穏やかな日常に溶けてそうな少女だ。
蓋を開けてみれば『階級なし』とは到底思えない程の、目も覚めるような鮮やかな術捌き。
少なくとも【呪術師】とはいえ、目の前の五条悟ほど異常者には見えない。
それが歌姫の所感だった。
「――僕ね、歌姫のそーゆーとこ割と好きよ?」
「へー。私は割とマジでアンタのこと嫌いだけどね。」
小柄な少女が瓶を片手に構える。
細い体躯。
幼さが残る横顔。
とてもじゃないが呪術師として強そうには見えない。
「大丈夫大丈夫。むしろこの程度で躓かれたら困るんだよねぇ」
助手席と運転席の間へ身を乗り出して、五条は嬉々とした表情を浮かべる。
「まぁ見てなって。僕の名無し、結構強いんだから」
自信満々な笑みを浮かべた新米教師は、それはそれは腹が立つ程にニタリといい笑顔を浮かべるのであった。
萌黄の清明#07
小瓶から繰り出したのは、ひと掬いの水。
瞬く間に刃の形に形成されたそれは、まるで透明な日本刀だ。
「術式、展開。」
水圧を上げ、変化自在な一振の刃となる水。
足に、筋肉に、血管の隅々へ呪力を。
――瞬発的に早まる速度。それと同時にポテンシャル以上の動きに筋肉が悲鳴を上げる。
すかさずかけるのは反転術式。焼ききれた神経や筋は痛みを感じる前にキレイさっぱり元通りだ。
鍛え方が足りぬと言うなら、消耗して補ってやればいい。
まぁこんな芸当、出来る呪術師はそうそういないのだが。
速度を落とすよりも早く、鮮やかに決める一刀両断。
節足動物の成りをした異形の呪霊は、断末魔を上げると同時に霧散する。
まずは、一体。
木々の隙間から放たれる蜘蛛の鋼糸。
取られる足元。
バランスを崩すと同時に手をつけたのは、自生する木々。
「木気比和、」
呪力を流せば、風に揺らされるがままだった木々が突如轟く。
まるで『生物』か『魔物』のように伸びる枝、蔦、根。
瞬く間に土蜘蛛を地に縛り付け、その肢体を呑み込まんとする。
絡んだ糸を切り落とし、木々の間を跳ぶように。
一歩、二歩、踏み込んで三歩。
抵抗できぬ蜘蛛の首を切り落とせば、ヒトのものではない血肉が辺りへ四散した。
***
「ホントにあの子、一年?」
「だから言ったじゃん。」
呪霊を次々と祓う少女。
鬱蒼とした足場など気にしないと言わんばかりに、刀を持った彼女が山中を駆ける。
「……あの噂も本当なの?」
車内でそっと五条へ問えば、後部座席から…それはそれはとても長い溜息が吐き出された。
「……はーーー、そういうのだけは広まるの早いんだから」
人の口に戸を立てられないとはいうが。
五条は至極面倒くさそうに髪を掻きむしった。
「そうは見えないのが正直な感想ね。私には普通の女の子にしか見えないや」
小柄で、細くて、どこにでもいるような女の子。
呪術とは無縁の、なんでもない穏やかな日常に溶けてそうな少女だ。
蓋を開けてみれば『階級なし』とは到底思えない程の、目も覚めるような鮮やかな術捌き。
少なくとも【呪術師】とはいえ、目の前の五条悟ほど異常者には見えない。
それが歌姫の所感だった。
「――僕ね、歌姫のそーゆーとこ割と好きよ?」
「へー。私は割とマジでアンタのこと嫌いだけどね。」