萌黄の清明
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「はぁ〜い、今日からこのクラスの担任になった五条悟でぇ〜す。では自己紹介から始めようかな!はい、じゃあ新人呪術師のななしさんからどうぞ!」
「先生。このクラス、私一人ですけど?」
教卓と、生徒用の机。
一つずつしか置いていない教室は、やたらと広く感じる。
黒板を背に立つ、目隠しをした五条。
そして学習椅子に姿勢よく座った名無しが、小さく手を挙げながら問うた。
「だってぇ。呪術師なんてそもそもレアだし、最近は少子化の影響もあるしー」
「自己紹介する必要ありますかね」
「こういうのは形が大事なんじゃない?」
と、言われても。
お互いの好物や性格すら把握しつつある間柄だというのに、今更必要だろうか。
「……ななし名無しです。好きな食べ物は卵粥です。よろしくお願いします…?」
「はい!じゃあこの一年このクラスで頑張っていきましょう!」
茶番。物凄い茶番だ。
初めての教職に張り切っているのか、浮ついた五条の声がいつもより弾んで聞こえる。
「じゃあ学生証を渡そうかな。一応身分証明書になるから大事に――」
「…………五条さん?」
言葉を詰まらせ、険しい表情で学生証を凝視する。
名無しが名前を恐る恐る呼ぶが、返事は返ってこなかった。
「…………誤字脱字あるみたいだから、ちょーっと学長のところへ行ってくるね。名無しはここで待ってて。」
「あの。誤字脱字って?」
「いやいや。見なくていいよ。」
後ろ手でサッと隠される学生証。
……なんて事ない誤字脱字なら笑いながら見せてくれるだろう。
考えられることは、ひとつ。
「特級呪具とか書かれてました?」
この人は意外と嘘が下手なのかもしれない。
一瞬。
ほんの一瞬だけ、空気が凍る。
「……名無しさぁ、その妙に敏いのどうにかならない?」
「五条さんが分かりやすいのでは?」
「いやいや。僕は何考えてるか分からない、ミステリアスなイケメンなのがウリなんだよ?」
手を五条の前に突き出せば、観念したように肩を竦め、学生証を差し出してくれた。
階級はなし。
備考欄に『特級呪具』とまぁ丁寧に書かれている。
憶測だが……夜蛾のことだ。それはきちんと上に抗議はしてくれたのだろうが…まぁ結果はこうだ。
夜蛾へ訴えても仕方がない。彼だって気苦労が多い立場なのだ、余計なストレスは控えてあげたい。
「まぁ妥当でしょう。学生証なんてただの身分証明なんですから、気にしませんよ。」
名前、生年月日。住所は寮。
うん。誤字脱字なし。
なら身分証明としては問題ないだろう。
「でもこれってさ。言い方悪いけど『特級呪具として扱う』って暗に言われてるんだよ?上層部全員ぶっ殺したくならない?」
「五条さん、どうどう。教職に有るまじき発言が出てますよ。」
ピッと中指を立てる五条の手をそっと抑える名無し。
とてもじゃないが他の新入生がいなくて良かった。
こんな初日から怒り狂う担任の姿はとてもじゃないが初見で見せられない。
ムスッと拗ねた表情になっているものの、恐らく心底腹を立てているのだろう。
臍を曲げてしまった担任を見て、困ってしまうと同時に、ほんの少しだけ『嬉しい』と感じてしまう自分自身もいる。
そんな己の困った性格に呆れてしまうが、やはりこの気持ちは素直に伝えておくべきだろう。
「気にしませんよ。呪術師になるためにここに来たんですから、結果は後々ついてくるんじゃないですか?それに……」
「それに?」
「……五条さんが、呪術師だって言ってくれるなら、それだけで十分です。」
他の誰でもない。
この人に『呪術師』だと言ってもらえるなら本望だ。
それ以外の誰かが『人ではない』と後ろ指を指してきたとしても、それだけでしゃんと前を向いて行けそうな気がした。
萌黄の清明#02
「名無しちゃん〜〜〜も〜そういうとこ〜〜〜」
「う、わ。ちょっと、髪がくしゃくしゃになるじゃないですか。やめてくださいよ、五条さん」
「それ。」
「どれです?」
「学校じゃ『五条先生』って呼んで欲しいな。」
「あ、そうですね…すみません、失礼しました。」
「んーん。ただ単に僕が『先生』って呼んでもらいたいだけだから。」
思った以上に浮かれてるかも。
そう言ってはにかむ五条さん……いや、五条先生は、年相応よりも幼く見えた。
それで喜んでもらえるなら、いくらでも呼ぼうじゃないか。
「学校の外だったら好きに呼んでいいから。悟とかさ〜」
「じゃあ学校の外では五条さんで。」
「……名無し〜〜〜そういうとこだぞぅ〜」
「だからどういうとこですか!あぁもう、もじゃもじゃになる!」
「先生。このクラス、私一人ですけど?」
教卓と、生徒用の机。
一つずつしか置いていない教室は、やたらと広く感じる。
黒板を背に立つ、目隠しをした五条。
そして学習椅子に姿勢よく座った名無しが、小さく手を挙げながら問うた。
「だってぇ。呪術師なんてそもそもレアだし、最近は少子化の影響もあるしー」
「自己紹介する必要ありますかね」
「こういうのは形が大事なんじゃない?」
と、言われても。
お互いの好物や性格すら把握しつつある間柄だというのに、今更必要だろうか。
「……ななし名無しです。好きな食べ物は卵粥です。よろしくお願いします…?」
「はい!じゃあこの一年このクラスで頑張っていきましょう!」
茶番。物凄い茶番だ。
初めての教職に張り切っているのか、浮ついた五条の声がいつもより弾んで聞こえる。
「じゃあ学生証を渡そうかな。一応身分証明書になるから大事に――」
「…………五条さん?」
言葉を詰まらせ、険しい表情で学生証を凝視する。
名無しが名前を恐る恐る呼ぶが、返事は返ってこなかった。
「…………誤字脱字あるみたいだから、ちょーっと学長のところへ行ってくるね。名無しはここで待ってて。」
「あの。誤字脱字って?」
「いやいや。見なくていいよ。」
後ろ手でサッと隠される学生証。
……なんて事ない誤字脱字なら笑いながら見せてくれるだろう。
考えられることは、ひとつ。
「特級呪具とか書かれてました?」
この人は意外と嘘が下手なのかもしれない。
一瞬。
ほんの一瞬だけ、空気が凍る。
「……名無しさぁ、その妙に敏いのどうにかならない?」
「五条さんが分かりやすいのでは?」
「いやいや。僕は何考えてるか分からない、ミステリアスなイケメンなのがウリなんだよ?」
手を五条の前に突き出せば、観念したように肩を竦め、学生証を差し出してくれた。
階級はなし。
備考欄に『特級呪具』とまぁ丁寧に書かれている。
憶測だが……夜蛾のことだ。それはきちんと上に抗議はしてくれたのだろうが…まぁ結果はこうだ。
夜蛾へ訴えても仕方がない。彼だって気苦労が多い立場なのだ、余計なストレスは控えてあげたい。
「まぁ妥当でしょう。学生証なんてただの身分証明なんですから、気にしませんよ。」
名前、生年月日。住所は寮。
うん。誤字脱字なし。
なら身分証明としては問題ないだろう。
「でもこれってさ。言い方悪いけど『特級呪具として扱う』って暗に言われてるんだよ?上層部全員ぶっ殺したくならない?」
「五条さん、どうどう。教職に有るまじき発言が出てますよ。」
ピッと中指を立てる五条の手をそっと抑える名無し。
とてもじゃないが他の新入生がいなくて良かった。
こんな初日から怒り狂う担任の姿はとてもじゃないが初見で見せられない。
ムスッと拗ねた表情になっているものの、恐らく心底腹を立てているのだろう。
臍を曲げてしまった担任を見て、困ってしまうと同時に、ほんの少しだけ『嬉しい』と感じてしまう自分自身もいる。
そんな己の困った性格に呆れてしまうが、やはりこの気持ちは素直に伝えておくべきだろう。
「気にしませんよ。呪術師になるためにここに来たんですから、結果は後々ついてくるんじゃないですか?それに……」
「それに?」
「……五条さんが、呪術師だって言ってくれるなら、それだけで十分です。」
他の誰でもない。
この人に『呪術師』だと言ってもらえるなら本望だ。
それ以外の誰かが『人ではない』と後ろ指を指してきたとしても、それだけでしゃんと前を向いて行けそうな気がした。
萌黄の清明#02
「名無しちゃん〜〜〜も〜そういうとこ〜〜〜」
「う、わ。ちょっと、髪がくしゃくしゃになるじゃないですか。やめてくださいよ、五条さん」
「それ。」
「どれです?」
「学校じゃ『五条先生』って呼んで欲しいな。」
「あ、そうですね…すみません、失礼しました。」
「んーん。ただ単に僕が『先生』って呼んでもらいたいだけだから。」
思った以上に浮かれてるかも。
そう言ってはにかむ五条さん……いや、五条先生は、年相応よりも幼く見えた。
それで喜んでもらえるなら、いくらでも呼ぼうじゃないか。
「学校の外だったら好きに呼んでいいから。悟とかさ〜」
「じゃあ学校の外では五条さんで。」
「……名無し〜〜〜そういうとこだぞぅ〜」
「だからどういうとこですか!あぁもう、もじゃもじゃになる!」