ファーストドライブ!
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「神社に祀られてる神様も大変だよね。他人の願いなんか勝手に託されてさ」
よくある参拝の作法である二拝二拍手一拝を行った後、僕はおみくじを引きながらぽそりと呟いた。
結果は小吉で、特別良くもないが悪もない。パッとしないことを書かれており、実に面白味のないものだ。
名無しも末吉で書いている内容は僕と大差なく、丁寧に折って財布の中にしまいこんだ。
「……こういうの、呪霊に転じたりしないんですか?」
周りに配慮してか、トーンを抑えて名無しが問う。
術師として当然の疑問だろう。
「縁切りが有名な所だとたまにね。みんな雑念多すぎなんだよ」
「まぁ…『あのカップル別れろ〜!』とか願う人はいるでしょうね。」
「それはもう呪いなのにね。分かってないよねぇ」
格式が高かったり、観光地になっている神社仏閣は特に多い。
そこで呪霊が発生した場合、フリーの呪術師よりも情報の機密性が高い高専関係者の術師が選ばれるケースが度々ある。
何せ、あぁいう手合いの寺社は外聞に対して敏感だ。
変な噂が立ったり格が落ちるようなトラブルが発生した場合、風評被害を受けやすい立場だからだろう。
お陰で僕の過重労働の原因のひとつになっている。恨み節の一つくらい吐いてもバチは当たらないはずだ。
以上の説明を名無しに一通り話し終えたら、困ったように彼女ははにかむ。
「すみません。こういうところ、あまり好きじゃなかったですか?」
「ん?あぁ、いんや。ただ仕事がチラついちゃうよね、って話。やだよね〜、僕ったらワーカーホリックみた〜い。」
こういう案件は県外出張の原因になることが多い。
日々成長する彼女の様子を担任であるにも関わらず、しっかり見届けることが出来ない要因の一つだ。
つい声音に苛立ちが滲んでしまったことを、僕にしては珍しく内心こっそり反省した。
「ま、呪霊もいるんだし?神様がいてもおかしくはないよね。僕はあんまし信じてないけど。」
「五条さんって信心深そうではないですもんね」
「そりゃもう。行事を執り行う場合、形式くらいは取り繕うけどね?」
そう答えれば、何を想像したのか「確かに五条さんは和服も似合われますし、様になって格好良いでしょうね」と名無しは一人納得している。
ちょっとちょっと、本物が目の前にいるでしょ。
想像の中の僕に思いを馳せないで欲しい。
「──あ。でも、あぁいうのはいいよね。」
僕の視界に映ったのは黒い紋付羽織袴を着た男と、白無垢を着た女。
神前婚なのだろう。幸せそうに寄り添っている姿は絵に描いたような新婚像だ。
当然ながら呪霊がいる神社などで祝い事など行えない。
呪術界なんてものはそもそも日陰者の集まりだが、それでもこうして誰かの為になるのなら、呪霊を祓うしか能がないとしても悪い事ではないのだろう。
「確かに。綺麗ですね、白無垢。ウエディングドレスも華やかでいいですけど、綿帽子のフォルムとか日本の美って感じで素敵です。」
「名無しもあぁいうの着たい?」
日焼けを知らないような肌に、濡羽色のように艶のある黒髪。
ほっそりとした体型に、すっと伸びた背筋。
彼女があの清廉とした白を纏えば、さぞかし見栄えする花嫁になるだろうに。
だというのに名無しは困る素振りもなく、何故か当然のように首を振る。
「結婚願望はないので、見ているだけで十分ですよ」
ファーストドライブ!#07
「きっと似合うのになぁ」
そんな僕の呟きを聞きながら、彼女は黙って花嫁の背中を眺めていた。
よくある参拝の作法である二拝二拍手一拝を行った後、僕はおみくじを引きながらぽそりと呟いた。
結果は小吉で、特別良くもないが悪もない。パッとしないことを書かれており、実に面白味のないものだ。
名無しも末吉で書いている内容は僕と大差なく、丁寧に折って財布の中にしまいこんだ。
「……こういうの、呪霊に転じたりしないんですか?」
周りに配慮してか、トーンを抑えて名無しが問う。
術師として当然の疑問だろう。
「縁切りが有名な所だとたまにね。みんな雑念多すぎなんだよ」
「まぁ…『あのカップル別れろ〜!』とか願う人はいるでしょうね。」
「それはもう呪いなのにね。分かってないよねぇ」
格式が高かったり、観光地になっている神社仏閣は特に多い。
そこで呪霊が発生した場合、フリーの呪術師よりも情報の機密性が高い高専関係者の術師が選ばれるケースが度々ある。
何せ、あぁいう手合いの寺社は外聞に対して敏感だ。
変な噂が立ったり格が落ちるようなトラブルが発生した場合、風評被害を受けやすい立場だからだろう。
お陰で僕の過重労働の原因のひとつになっている。恨み節の一つくらい吐いてもバチは当たらないはずだ。
以上の説明を名無しに一通り話し終えたら、困ったように彼女ははにかむ。
「すみません。こういうところ、あまり好きじゃなかったですか?」
「ん?あぁ、いんや。ただ仕事がチラついちゃうよね、って話。やだよね〜、僕ったらワーカーホリックみた〜い。」
こういう案件は県外出張の原因になることが多い。
日々成長する彼女の様子を担任であるにも関わらず、しっかり見届けることが出来ない要因の一つだ。
つい声音に苛立ちが滲んでしまったことを、僕にしては珍しく内心こっそり反省した。
「ま、呪霊もいるんだし?神様がいてもおかしくはないよね。僕はあんまし信じてないけど。」
「五条さんって信心深そうではないですもんね」
「そりゃもう。行事を執り行う場合、形式くらいは取り繕うけどね?」
そう答えれば、何を想像したのか「確かに五条さんは和服も似合われますし、様になって格好良いでしょうね」と名無しは一人納得している。
ちょっとちょっと、本物が目の前にいるでしょ。
想像の中の僕に思いを馳せないで欲しい。
「──あ。でも、あぁいうのはいいよね。」
僕の視界に映ったのは黒い紋付羽織袴を着た男と、白無垢を着た女。
神前婚なのだろう。幸せそうに寄り添っている姿は絵に描いたような新婚像だ。
当然ながら呪霊がいる神社などで祝い事など行えない。
呪術界なんてものはそもそも日陰者の集まりだが、それでもこうして誰かの為になるのなら、呪霊を祓うしか能がないとしても悪い事ではないのだろう。
「確かに。綺麗ですね、白無垢。ウエディングドレスも華やかでいいですけど、綿帽子のフォルムとか日本の美って感じで素敵です。」
「名無しもあぁいうの着たい?」
日焼けを知らないような肌に、濡羽色のように艶のある黒髪。
ほっそりとした体型に、すっと伸びた背筋。
彼女があの清廉とした白を纏えば、さぞかし見栄えする花嫁になるだろうに。
だというのに名無しは困る素振りもなく、何故か当然のように首を振る。
「結婚願望はないので、見ているだけで十分ですよ」
ファーストドライブ!#07
「きっと似合うのになぁ」
そんな僕の呟きを聞きながら、彼女は黙って花嫁の背中を眺めていた。