晴着に花めく
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「五条さん、着きましたよ。歩けますか?」
「んんん…………」
家入さんにメッセージの連絡を入れる。
お会計を払い、タクシーの後部座席から引き摺り下ろすようにして肩を貸せば、思った以上にずしりと重みがのしかかる。
「うわ、重…」
軽く文句を言うものの、ぽやぽやした彼の耳に届くはずもない。
呪力を足腰に込めて、歩き出す。
冗談半分であの場で答えたが、本当にいいトレーニングになりそうだ。
「もうすぐマンションですからね。頑張ってください。」
目の前には見知ったマンション。
私が人としての生活を、再び手に入れた場所。
開錠する為にダメ元で自分の指で指紋認証をすれば、呆気なく開く鍵。
「登録、削除しておけばいいのに」と担任の不用心さを咎める言葉とは裏腹に、私の口元はどうしても緩んでしまっていた。
***
「よい、しょっと。」
五条さんのお宅にある大きめのソファへ寝転がせば、朱を散らせた頬が緩み、なんとも無防備な様子で眠る担任の姿。
寝室のベッドも考えたが、流石に勝手に入るのは忍びない。
何故ならもう一緒に暮らしていないのだ。もう彼だけのパーソナルスペースである。勝手に踏み込むのは居た堪れない。
「これでよし。」
五条さんが着ていたコートを肩にかけ、私が着ていたアウターを足元にかける。
気密性が高いマンション故か、思ったより部屋は冷え込んでいないが、それでも風邪を引いてもらっては後味が悪い。
「五条さん、お水飲めますか?気持ち悪くなったりしていませんか?」
「んー……」
トントンと軽く肩を叩き、呼びかける。
意識がふわふわと浮上してきたのか、澄んだ空色の双眸を薄らと開き、寝ぼけた様子で口を開いた。
「……俺のへやに、名無しがいる。」
「はい。すみません、鍵をポケットからお借りしました」
普段の一人称ではないところから見ると、もしかしたらこっちが素なのかもしれない。
しぱしぱと瞬きを何度か繰り返した後、五条さんはゆるゆる……というかぶらぶらと情けない手招きした。
「名無し、名無し。ちょっとこい。」
「なんですか?五条さ、うわっ!?」
見ているだけで脱力しそうな手招きとは別物のように、抱き竦められた腕は驚く程に強かった。
いや。むしろ酔っ払っているから加減が利かないのか。
痛くはないが、脱出するにはかなり骨が折れそうな力強さだった。
「さむいからあたためて。」
「寝室にお邪魔してよければお布団持ってきましょうか?かぶったら暖かくなりますから、」
「やだ。」
横幅はあるものの、二人で寝転がるには狭いソファ。
五条さんの胸板を枕に、私は大人しく湯たんぽにされるしか選択肢を与えられなかった。
……抱き抱えたまま横になって、重くないのだろうか。
特に今日は沢山食べて飲んだのだ。体重は絶対に増えている。間違いなく。
置かれた状況を飲み込めなくて見当違いなことをグルグルと巡らせていると、頭上で「ふっ」と軽く笑う吐息が落ちてきた。
「あったけぇー…もう俺、ずっとこうしとく…」
この台詞を最後に、五条さんは文字通り『ぐっすり』眠りについてしまった。
晴着に花めく#07
「……ウソでしょ。うわ、腕外れないんだけど。」
「んんん…………」
家入さんにメッセージの連絡を入れる。
お会計を払い、タクシーの後部座席から引き摺り下ろすようにして肩を貸せば、思った以上にずしりと重みがのしかかる。
「うわ、重…」
軽く文句を言うものの、ぽやぽやした彼の耳に届くはずもない。
呪力を足腰に込めて、歩き出す。
冗談半分であの場で答えたが、本当にいいトレーニングになりそうだ。
「もうすぐマンションですからね。頑張ってください。」
目の前には見知ったマンション。
私が人としての生活を、再び手に入れた場所。
開錠する為にダメ元で自分の指で指紋認証をすれば、呆気なく開く鍵。
「登録、削除しておけばいいのに」と担任の不用心さを咎める言葉とは裏腹に、私の口元はどうしても緩んでしまっていた。
***
「よい、しょっと。」
五条さんのお宅にある大きめのソファへ寝転がせば、朱を散らせた頬が緩み、なんとも無防備な様子で眠る担任の姿。
寝室のベッドも考えたが、流石に勝手に入るのは忍びない。
何故ならもう一緒に暮らしていないのだ。もう彼だけのパーソナルスペースである。勝手に踏み込むのは居た堪れない。
「これでよし。」
五条さんが着ていたコートを肩にかけ、私が着ていたアウターを足元にかける。
気密性が高いマンション故か、思ったより部屋は冷え込んでいないが、それでも風邪を引いてもらっては後味が悪い。
「五条さん、お水飲めますか?気持ち悪くなったりしていませんか?」
「んー……」
トントンと軽く肩を叩き、呼びかける。
意識がふわふわと浮上してきたのか、澄んだ空色の双眸を薄らと開き、寝ぼけた様子で口を開いた。
「……俺のへやに、名無しがいる。」
「はい。すみません、鍵をポケットからお借りしました」
普段の一人称ではないところから見ると、もしかしたらこっちが素なのかもしれない。
しぱしぱと瞬きを何度か繰り返した後、五条さんはゆるゆる……というかぶらぶらと情けない手招きした。
「名無し、名無し。ちょっとこい。」
「なんですか?五条さ、うわっ!?」
見ているだけで脱力しそうな手招きとは別物のように、抱き竦められた腕は驚く程に強かった。
いや。むしろ酔っ払っているから加減が利かないのか。
痛くはないが、脱出するにはかなり骨が折れそうな力強さだった。
「さむいからあたためて。」
「寝室にお邪魔してよければお布団持ってきましょうか?かぶったら暖かくなりますから、」
「やだ。」
横幅はあるものの、二人で寝転がるには狭いソファ。
五条さんの胸板を枕に、私は大人しく湯たんぽにされるしか選択肢を与えられなかった。
……抱き抱えたまま横になって、重くないのだろうか。
特に今日は沢山食べて飲んだのだ。体重は絶対に増えている。間違いなく。
置かれた状況を飲み込めなくて見当違いなことをグルグルと巡らせていると、頭上で「ふっ」と軽く笑う吐息が落ちてきた。
「あったけぇー…もう俺、ずっとこうしとく…」
この台詞を最後に、五条さんは文字通り『ぐっすり』眠りについてしまった。
晴着に花めく#07
「……ウソでしょ。うわ、腕外れないんだけど。」