晴着に花めく
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──ゴンッ。
硝子さんとお酒を片手に談笑していると、隣から鈍器で机を叩くような音が聞こえた。
「ご、五条さん?」
硝子さんの方へ向けていた身体を捩れば、重厚なテーブルにうつ伏した五条さんの姿があった。
サングラスが顔にめり込みそうだ。痛くないのだろうか?
すうすうと聞こえてくる規則的な寝息に、ただただ私は困惑した。
「……あの、寝てますよね?これ。」
「寝てるな。」
「でも五条さんが手に持たれているグラスって、クリームソーダですよね…?」
「……さっきカクテル飲んでいませんでしたか?この人」
七海さんの言葉で、はっと思い出す。
そういえば何杯目かのクリームソーダをオーダーする前は、確かに飲んでいた。
やたらと乾杯をしたがる酔っ払いのようだと思っていたが、本当に酔っ払っていたのかもしれない。
「…カシオレって言っていました。」
「やっぱ駄目だったか。」
「え?カクテル一杯で?」
「むしろよく保った方だよ」
からからと笑い、硝子さんは「念の為カード預かっていて良かった。」と自分の財布から五条さんの黒いクレジットカードを取り出した。
支払いも自分がするつもりだったのか、この人。
しかしアルコールで潰れる可能性があるなら飲まなくてもよかったのでは?
周りに信頼出来る人間 ばかりが集まったからだろうか。
酔いが回って正気を保っていることを諦めたのか、はたまた気が抜けたのか、それとも睡魔と疲労が勝ったのか。
考えられる要因は様々だが、恐らく全て当たらずとも遠からずだろう。
「家入さん、タクシーもう五分程で着くそうです」
「早いな。さて、七海。悪いけど五条をマンションまで放り込んでおいてくれないか?」
「分かりました」
タクシーを手配する伊地知さん。
五条さんの扱いを手馴れている硝子さんと、面倒そうだが普段お世話になってる先輩に逆らうつもりもないのだろう。七海さんが溜息混じりに頷いた。
「五条さんのお家までなら私が送りますよ?」
立候補するように手を挙げれば、硝子さんが形のいい口元を露骨に歪ませる。
「何言ってんの、名無しは今日の役だろう?」
「私はいつでも時間ありますから。それに皆さんで集まられるの久しぶりですよね?ぜひ二次会、楽しんできてください」
『集まるのが久しぶり』。
建前だけでも『そんなことない』と言われてしまうかと思ったが、予想以上にクリティカルな一言だったらしい。
数十秒流れた沈黙の後、困ったように口を開いたのは伊地知さんだった。
「五条さん、結構重いですよ?」
「大丈夫ですよ。いい筋トレになりそうです」
むん、と力こぶを作れば、伊地知さんの苦笑いが深くなった。
「……何かあったら容赦なく茂みに放り込んでくださいね。」
「分かりました。街路樹の下に植えておきます。」
七海さんの後輩らしかぬ発言。
だが否定する余地はないので、私は大きく頷いた。
「送ったら一応連絡くれるか?万が一もあるし」
「分かりました。皆さん、今日はありがとうございました。お気をつけて!あと、おやすみなさい。」
万が一ってなんだろう。
あぁ『呪詛師が襲ってきた』とか、きっとそういう類の話だろう。
私は居酒屋の入口までつけてくれたタクシーの後部座席へ千鳥足の五条さんを押し込んで、振り返った。
晴着に花めく#06
「あぁ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
「ななしさんもお気をつけて、おやすみなさい。ゆっくり休んでくださいね」
硝子さんとお酒を片手に談笑していると、隣から鈍器で机を叩くような音が聞こえた。
「ご、五条さん?」
硝子さんの方へ向けていた身体を捩れば、重厚なテーブルにうつ伏した五条さんの姿があった。
サングラスが顔にめり込みそうだ。痛くないのだろうか?
すうすうと聞こえてくる規則的な寝息に、ただただ私は困惑した。
「……あの、寝てますよね?これ。」
「寝てるな。」
「でも五条さんが手に持たれているグラスって、クリームソーダですよね…?」
「……さっきカクテル飲んでいませんでしたか?この人」
七海さんの言葉で、はっと思い出す。
そういえば何杯目かのクリームソーダをオーダーする前は、確かに飲んでいた。
やたらと乾杯をしたがる酔っ払いのようだと思っていたが、本当に酔っ払っていたのかもしれない。
「…カシオレって言っていました。」
「やっぱ駄目だったか。」
「え?カクテル一杯で?」
「むしろよく保った方だよ」
からからと笑い、硝子さんは「念の為カード預かっていて良かった。」と自分の財布から五条さんの黒いクレジットカードを取り出した。
支払いも自分がするつもりだったのか、この人。
しかしアルコールで潰れる可能性があるなら飲まなくてもよかったのでは?
周りに信頼出来る
酔いが回って正気を保っていることを諦めたのか、はたまた気が抜けたのか、それとも睡魔と疲労が勝ったのか。
考えられる要因は様々だが、恐らく全て当たらずとも遠からずだろう。
「家入さん、タクシーもう五分程で着くそうです」
「早いな。さて、七海。悪いけど五条をマンションまで放り込んでおいてくれないか?」
「分かりました」
タクシーを手配する伊地知さん。
五条さんの扱いを手馴れている硝子さんと、面倒そうだが普段お世話になってる先輩に逆らうつもりもないのだろう。七海さんが溜息混じりに頷いた。
「五条さんのお家までなら私が送りますよ?」
立候補するように手を挙げれば、硝子さんが形のいい口元を露骨に歪ませる。
「何言ってんの、名無しは今日の役だろう?」
「私はいつでも時間ありますから。それに皆さんで集まられるの久しぶりですよね?ぜひ二次会、楽しんできてください」
『集まるのが久しぶり』。
建前だけでも『そんなことない』と言われてしまうかと思ったが、予想以上にクリティカルな一言だったらしい。
数十秒流れた沈黙の後、困ったように口を開いたのは伊地知さんだった。
「五条さん、結構重いですよ?」
「大丈夫ですよ。いい筋トレになりそうです」
むん、と力こぶを作れば、伊地知さんの苦笑いが深くなった。
「……何かあったら容赦なく茂みに放り込んでくださいね。」
「分かりました。街路樹の下に植えておきます。」
七海さんの後輩らしかぬ発言。
だが否定する余地はないので、私は大きく頷いた。
「送ったら一応連絡くれるか?万が一もあるし」
「分かりました。皆さん、今日はありがとうございました。お気をつけて!あと、おやすみなさい。」
万が一ってなんだろう。
あぁ『呪詛師が襲ってきた』とか、きっとそういう類の話だろう。
私は居酒屋の入口までつけてくれたタクシーの後部座席へ千鳥足の五条さんを押し込んで、振り返った。
晴着に花めく#06
「あぁ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
「ななしさんもお気をつけて、おやすみなさい。ゆっくり休んでくださいね」