short story
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授業を兼ねた実地任務に向かう前のこと。
名無しを見つけた虎杖が大きく手を振り、釘崎が元気よく声を掛け、伏黒が軽く会釈し、五条がトドメと言わんばかりに名無しの頭へ顎を乗せた。
他愛ない会話をひとつふたつ交わし、箒を持った名無しが立ち去った後。
「名無しって、姿勢いいのね。」
ポツリと零した釘崎の感想に、隣の伏黒は表情ひとつ変えず問うた。
「突然どうした。」
「背筋もシャンと伸びてるし、そう思っただけよ。」
最後の成長期に伸び悩んだ高校生と同じくらいの、決して長身とは言えない背丈。
有り体に言えば、女性平均身長に少し足りないくらい。
それでもスッと伸びた背筋は清く正しく、澱みない歩調も相まって――そう。
佇まいが『綺麗』なのだ。
「あー、確かに。猫背でダラッとしてるのとか、想像つかねーもんな」
何事も卒無く、丁寧に。
物の扱いひとつとっても丁重な動きでキビキビとタスクをこなしていく姿は、まさに『仕事の出来る寮母さん』だ。
人間なのだから気を抜く時だってあるはずなのだが、どうしてもその姿が想像出来ず、虎杖の一言に伏黒と釘崎はウンウンと頷いた。
「いいデショ。僕の名無し。」
一方、デレデレと浮かれているのは彼らの担任。
黙っていればアイマスクをした不審者。
アイマスクを取れば絶世の美形。
口を開ければ五歳児と同レベルのテンションとはしゃぎっぷりで、周囲を疲弊させる達人だ。
そんな五条と付き合っているというのだから、本当に世の中は何が起こるか分からない。
まさに、事実は小説よりも奇なり……といったところか。
「……すぐそうやって惚気に持っていくのは、どうかと思うわ…」
担任の浮ついた声音に対して、呆れ果てた色を隠すことなく釘崎は大きく溜息を吐き出した。
シャキッと、ダラッと。
「だってさ。」
「私もダラダラする時はするんですけどね…」
そして、夜。
仕事という仕事を終え、夕飯も済ませ、三人掛けソファで寛ぐ五条。
……の隣で、ニンテンドーSwitchでダラダラ遊んでいるのは名無しだ。
日中、こまネズミのように働いていた姿とはうって変わり、海外ドラマを見ている五条に凭れてゲームに勤しんでいた。
彼女の言う通り、まさに今『ダラダラしている』。
「今とか?」
「今とか。」
名無しの髪を人差し指に絡めて、くるくると弄ぶ五条。
そんな行為を気にする様子もなく、名無しはプレイヤーの狼のキャラクターを手慣れた動作で動かす。
「いつも気を張りすぎなんじゃない?もっとリラックスリラックス〜」
「昔ほど気を張っていませんよ。リラックスは…今してるじゃないですか。」
「学生の頃に比べたらダラけすぎのような気もしますけど」と一言添えながら、背もたれにしている五条へ遠慮なく体重をかける。
といっても、元々五条からすれば羽のように軽い彼女の体重。
重だるいとか煩わしいなんて思うはずもなく、ただその温かくて程よい重みは、まさに至福と言えた。
比較的仲のいい家入や七海にだって、こんな風に遠慮なくくっつく事なんてないだろう。元々彼女は遠慮の塊なのだから。
――ここまで絆すのにかなり時間を要し、人生で一番あの手この手と手段を使ったのは五条だけの秘密だ。
「僕だけの特権?」
「まぁ、今のところは。」
今のところなんて可愛げのないことを言っているが、恐らく半永久的にだろう。
彼女は素っ気ない返事とは裏腹に、驚く程に一途なのだから。
名無しの返答を聞いて五条は、緩んだ表情を隠すことなく「うーん」と唸りながら首を傾げた。
「……なんですか?」
「もっと普段からゆるゆるしてもいいのにな〜って思う反面、部屋着でダラダラしてる名無しを知ってるのは僕だけっていう優越感に浸りたい独占欲が、脳内会議で大乱闘スマッシュブラザーズしてるカンジ」
「物騒ですね。」
くすりと綻ぶような笑みを零しながら、名無しは五条の顔を下から無遠慮に覗き見上げるのであった。
名無しを見つけた虎杖が大きく手を振り、釘崎が元気よく声を掛け、伏黒が軽く会釈し、五条がトドメと言わんばかりに名無しの頭へ顎を乗せた。
他愛ない会話をひとつふたつ交わし、箒を持った名無しが立ち去った後。
「名無しって、姿勢いいのね。」
ポツリと零した釘崎の感想に、隣の伏黒は表情ひとつ変えず問うた。
「突然どうした。」
「背筋もシャンと伸びてるし、そう思っただけよ。」
最後の成長期に伸び悩んだ高校生と同じくらいの、決して長身とは言えない背丈。
有り体に言えば、女性平均身長に少し足りないくらい。
それでもスッと伸びた背筋は清く正しく、澱みない歩調も相まって――そう。
佇まいが『綺麗』なのだ。
「あー、確かに。猫背でダラッとしてるのとか、想像つかねーもんな」
何事も卒無く、丁寧に。
物の扱いひとつとっても丁重な動きでキビキビとタスクをこなしていく姿は、まさに『仕事の出来る寮母さん』だ。
人間なのだから気を抜く時だってあるはずなのだが、どうしてもその姿が想像出来ず、虎杖の一言に伏黒と釘崎はウンウンと頷いた。
「いいデショ。僕の名無し。」
一方、デレデレと浮かれているのは彼らの担任。
黙っていればアイマスクをした不審者。
アイマスクを取れば絶世の美形。
口を開ければ五歳児と同レベルのテンションとはしゃぎっぷりで、周囲を疲弊させる達人だ。
そんな五条と付き合っているというのだから、本当に世の中は何が起こるか分からない。
まさに、事実は小説よりも奇なり……といったところか。
「……すぐそうやって惚気に持っていくのは、どうかと思うわ…」
担任の浮ついた声音に対して、呆れ果てた色を隠すことなく釘崎は大きく溜息を吐き出した。
シャキッと、ダラッと。
「だってさ。」
「私もダラダラする時はするんですけどね…」
そして、夜。
仕事という仕事を終え、夕飯も済ませ、三人掛けソファで寛ぐ五条。
……の隣で、ニンテンドーSwitchでダラダラ遊んでいるのは名無しだ。
日中、こまネズミのように働いていた姿とはうって変わり、海外ドラマを見ている五条に凭れてゲームに勤しんでいた。
彼女の言う通り、まさに今『ダラダラしている』。
「今とか?」
「今とか。」
名無しの髪を人差し指に絡めて、くるくると弄ぶ五条。
そんな行為を気にする様子もなく、名無しはプレイヤーの狼のキャラクターを手慣れた動作で動かす。
「いつも気を張りすぎなんじゃない?もっとリラックスリラックス〜」
「昔ほど気を張っていませんよ。リラックスは…今してるじゃないですか。」
「学生の頃に比べたらダラけすぎのような気もしますけど」と一言添えながら、背もたれにしている五条へ遠慮なく体重をかける。
といっても、元々五条からすれば羽のように軽い彼女の体重。
重だるいとか煩わしいなんて思うはずもなく、ただその温かくて程よい重みは、まさに至福と言えた。
比較的仲のいい家入や七海にだって、こんな風に遠慮なくくっつく事なんてないだろう。元々彼女は遠慮の塊なのだから。
――ここまで絆すのにかなり時間を要し、人生で一番あの手この手と手段を使ったのは五条だけの秘密だ。
「僕だけの特権?」
「まぁ、今のところは。」
今のところなんて可愛げのないことを言っているが、恐らく半永久的にだろう。
彼女は素っ気ない返事とは裏腹に、驚く程に一途なのだから。
名無しの返答を聞いて五条は、緩んだ表情を隠すことなく「うーん」と唸りながら首を傾げた。
「……なんですか?」
「もっと普段からゆるゆるしてもいいのにな〜って思う反面、部屋着でダラダラしてる名無しを知ってるのは僕だけっていう優越感に浸りたい独占欲が、脳内会議で大乱闘スマッシュブラザーズしてるカンジ」
「物騒ですね。」
くすりと綻ぶような笑みを零しながら、名無しは五条の顔を下から無遠慮に覗き見上げるのであった。