short story
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「さっきから何やってるんですか…」
風呂。
湯船にとっぷり浸かりながら、五条は名無しの頭に柚を乗せていた。
一つだけなら可愛らしいだろう。
今、その柚の上に、更にもう一つ重ねようとしていた。
……積み木が何かと勘違いしているのだろうか、この男は。
「ん〜?カピバラでこういうのあったよなぁ、って。」
「げっ歯類と同じにしないでください…」
高専の寮に備え付けられた湯船はお世辞にも広いとは言えない。
それは勿論、管理人室も同じく。
そんな湯船に五条が浸かり、足の間に名無しが挟まる。
これは大人気ない大人が散々『一緒に風呂に入る』と駄々を捏ねた結果だった。
身の危険を感じるような気もしなくもないが、今のところ大丈夫のようだ。……今のところ。
「今日名無しを抱きしめて寝たらいい匂いするんだろうな〜」
「柚の匂いはするでしょうね。」
柑橘の匂いが移ったお湯。
肩までとっぷり浸かっていたらば、移り香になるだろう。
「味は〜?」
「それはしないでしょうね。」
「へぇ?」
鏡があれば気づけたのだろうが、生憎湯気ですっかり曇ってしまっている。
名無しの背後で、柚を片手にニヤリと五条が口角を上げた。
「どれどれ?」
「びゃっ」
冷めてしまった湯が、一筋滑り落ちる白いうなじ。
しっとりとした絹を彷彿させるような首筋に僅かに歯を立て、五条は強く吸い付いた。
太陽を知らないような白い肌は、僅かな石鹸の匂いと柚の鼻奥を擽る柑橘の匂いがした。
「な、何するんですか!」
「んー、味見?」
ペロリと舌を出し、悪戯っぽく笑う五条。
後ろから抱き竦められているようなこの体勢では反撃すらできない。
名無しの頬が赤いのは、逆上せている……わけではなさそうだ。
「ね、おかわり。」
ちゅっ、と可愛らしいリップ音と共に落とされる唇。
強請るような青い瞳に覗き込まれれば、忽ち断り文句は湯気に溶ける。
ずるい。
本当に、この大人はズルい。
「……ダメって言っても、するくせに…」
「でも名無しだって満更じゃないでしょ?」
本当に、この人は。
あぁ柚子湯様。
邪気だけでなく、五条悟の煩悩も祓ってくださいな。
名無しは心の中でそっと祈りつつ、ぷかりと浮かぶ柚へ、黙って視線を逸らすのであった。
winter tasting
次の日。
「どうしたの?風邪?」
マフラーをぐるぐる巻きにして、口元から下をすっぽり覆い隠した名無し。
心配そうに顔を覗き込んでくる釘崎に「まぁ、うん」と歯切れの悪い返事を返す。
「…声もどうした?」
「…………のどかぜ。」
「柚子湯入った後に風邪って、なんかツイてないなー」
伏黒にまで心配され、虎杖にまで同情される。
「長湯でもしちゃったのカナ~?」
そして、白々しく笑う五条。
……誰のせいよ、誰の!
名無しは黙って五条の腰に鉄拳をお見舞いし、『味見』を散々された首元を覆い隠すように顔を埋めるのであった。
風呂。
湯船にとっぷり浸かりながら、五条は名無しの頭に柚を乗せていた。
一つだけなら可愛らしいだろう。
今、その柚の上に、更にもう一つ重ねようとしていた。
……積み木が何かと勘違いしているのだろうか、この男は。
「ん〜?カピバラでこういうのあったよなぁ、って。」
「げっ歯類と同じにしないでください…」
高専の寮に備え付けられた湯船はお世辞にも広いとは言えない。
それは勿論、管理人室も同じく。
そんな湯船に五条が浸かり、足の間に名無しが挟まる。
これは大人気ない大人が散々『一緒に風呂に入る』と駄々を捏ねた結果だった。
身の危険を感じるような気もしなくもないが、今のところ大丈夫のようだ。……今のところ。
「今日名無しを抱きしめて寝たらいい匂いするんだろうな〜」
「柚の匂いはするでしょうね。」
柑橘の匂いが移ったお湯。
肩までとっぷり浸かっていたらば、移り香になるだろう。
「味は〜?」
「それはしないでしょうね。」
「へぇ?」
鏡があれば気づけたのだろうが、生憎湯気ですっかり曇ってしまっている。
名無しの背後で、柚を片手にニヤリと五条が口角を上げた。
「どれどれ?」
「びゃっ」
冷めてしまった湯が、一筋滑り落ちる白いうなじ。
しっとりとした絹を彷彿させるような首筋に僅かに歯を立て、五条は強く吸い付いた。
太陽を知らないような白い肌は、僅かな石鹸の匂いと柚の鼻奥を擽る柑橘の匂いがした。
「な、何するんですか!」
「んー、味見?」
ペロリと舌を出し、悪戯っぽく笑う五条。
後ろから抱き竦められているようなこの体勢では反撃すらできない。
名無しの頬が赤いのは、逆上せている……わけではなさそうだ。
「ね、おかわり。」
ちゅっ、と可愛らしいリップ音と共に落とされる唇。
強請るような青い瞳に覗き込まれれば、忽ち断り文句は湯気に溶ける。
ずるい。
本当に、この大人はズルい。
「……ダメって言っても、するくせに…」
「でも名無しだって満更じゃないでしょ?」
本当に、この人は。
あぁ柚子湯様。
邪気だけでなく、五条悟の煩悩も祓ってくださいな。
名無しは心の中でそっと祈りつつ、ぷかりと浮かぶ柚へ、黙って視線を逸らすのであった。
winter tasting
次の日。
「どうしたの?風邪?」
マフラーをぐるぐる巻きにして、口元から下をすっぽり覆い隠した名無し。
心配そうに顔を覗き込んでくる釘崎に「まぁ、うん」と歯切れの悪い返事を返す。
「…声もどうした?」
「…………のどかぜ。」
「柚子湯入った後に風邪って、なんかツイてないなー」
伏黒にまで心配され、虎杖にまで同情される。
「長湯でもしちゃったのカナ~?」
そして、白々しく笑う五条。
……誰のせいよ、誰の!
名無しは黙って五条の腰に鉄拳をお見舞いし、『味見』を散々された首元を覆い隠すように顔を埋めるのであった。