short story
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ゆず湯とは、邪気を祓う意味も含まれるらしい。
「何をしてる?小娘。」
低い声。
頬や額に浮かんだ痣。
一見『虎杖悠仁』に見える少年は、実の所『虎杖悠仁』ではなかった。
「カボチャの煮付けと、豚汁を作っているんですよ。」
「ほぅ。」
近い。
息が掛かるような近さだ。
顔を左へ向ければ鼻先が彼の頬に擦れるのではないかと思う程に、近い。
「冬至か。」
「えぇ。今日はゆず湯も皆に用意してますよ」
「成程、現代ではそういった風習があるのか」
「起源は明らかではありませんけど、少なくとも平安時代にはなかった風習でしょうね。」
またどうしてこんなに距離が近いのか。
数年間付き合いのある五条並に距離が近い。
そして何故か、こんなに邪悪な呪霊だというのに殺気を一切向けられない。
――理由は、分からないけど。
料理に関心があるのか、意外にも興味深くまな板の上の材料を眺める宿儺。
やりづらさを感じながら、豚汁にトッピングする柚子の皮を細く小さく剥いていく。
……香り付け程度でいいだろう。あとはゆず湯に使うため、ストンと真っ二つ。輪切りにした。
「柚子には邪気を祓う効果があるそうですから…宿儺殿、ついうっかり祓われたりして。」
「はっ、それはお前もだろう?小娘。」
嫌味を言えば、嫌味を返される。
残念。去年も一昨年も身体に変化はありませんでした。
……そんな反論は、一瞬にして呑まれる。
顎を掴まれ、頬に這う舌。
ベロりと生暖かく、湿った感触に、床から1cm程飛び上がりそうになってしまった。
反射的に掴んだのは柚。
輪切りにした果肉を虎杖――ではなく、宿儺に向け、思い切り指先に力を込める。
顔面へ飛び跳ねる柑橘の果汁。
狙うべき的が『4つ』あるのだから、実に反撃しやすい。
「すいません。手が滑りました。」
「〜〜〜ッ!」
柚子を置き、スウェットの袖で頬を拭う。
身体は可愛い後輩のものだとしても、やはりどうしても不快感があるのは、中身が虎杖とはかけ離れた人格だからだろうか。
手癖の悪い呪霊に対して小さく溜息をつき、やれやれどうしたものかと名無しはそっと肩を竦めた。
悪霊退散!
「…………う、ぉっ、なんか目が痛い!?」
「あ。ホントに祓えた。」
「え、なんで俺名無しのトコにいるの?」
「さて。つまみ食いにでもきたのかな?」
カボチャの煮付けを彼の口に放り込んでやり、「ごめんね、目をしっかり洗っておいで」と名無しは小さく笑うのであった。
「何をしてる?小娘。」
低い声。
頬や額に浮かんだ痣。
一見『虎杖悠仁』に見える少年は、実の所『虎杖悠仁』ではなかった。
「カボチャの煮付けと、豚汁を作っているんですよ。」
「ほぅ。」
近い。
息が掛かるような近さだ。
顔を左へ向ければ鼻先が彼の頬に擦れるのではないかと思う程に、近い。
「冬至か。」
「えぇ。今日はゆず湯も皆に用意してますよ」
「成程、現代ではそういった風習があるのか」
「起源は明らかではありませんけど、少なくとも平安時代にはなかった風習でしょうね。」
またどうしてこんなに距離が近いのか。
数年間付き合いのある五条並に距離が近い。
そして何故か、こんなに邪悪な呪霊だというのに殺気を一切向けられない。
――理由は、分からないけど。
料理に関心があるのか、意外にも興味深くまな板の上の材料を眺める宿儺。
やりづらさを感じながら、豚汁にトッピングする柚子の皮を細く小さく剥いていく。
……香り付け程度でいいだろう。あとはゆず湯に使うため、ストンと真っ二つ。輪切りにした。
「柚子には邪気を祓う効果があるそうですから…宿儺殿、ついうっかり祓われたりして。」
「はっ、それはお前もだろう?小娘。」
嫌味を言えば、嫌味を返される。
残念。去年も一昨年も身体に変化はありませんでした。
……そんな反論は、一瞬にして呑まれる。
顎を掴まれ、頬に這う舌。
ベロりと生暖かく、湿った感触に、床から1cm程飛び上がりそうになってしまった。
反射的に掴んだのは柚。
輪切りにした果肉を虎杖――ではなく、宿儺に向け、思い切り指先に力を込める。
顔面へ飛び跳ねる柑橘の果汁。
狙うべき的が『4つ』あるのだから、実に反撃しやすい。
「すいません。手が滑りました。」
「〜〜〜ッ!」
柚子を置き、スウェットの袖で頬を拭う。
身体は可愛い後輩のものだとしても、やはりどうしても不快感があるのは、中身が虎杖とはかけ離れた人格だからだろうか。
手癖の悪い呪霊に対して小さく溜息をつき、やれやれどうしたものかと名無しはそっと肩を竦めた。
悪霊退散!
「…………う、ぉっ、なんか目が痛い!?」
「あ。ホントに祓えた。」
「え、なんで俺名無しのトコにいるの?」
「さて。つまみ食いにでもきたのかな?」
カボチャの煮付けを彼の口に放り込んでやり、「ごめんね、目をしっかり洗っておいで」と名無しは小さく笑うのであった。