short story
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青白かったり、黄金色だったり。
シンプルな色合いながらも目が眩みそうになる程の光の洪水。
街路樹が宝石のように着飾られた景色は、冬の風物詩とも言えるだろう。
幼い頃に見たイルミネーションとはまた別格で、刺すような空気の真冬でもほんの少しだけ暖かく感じられるくらいだった。
「五条、さん、すみません!お待たせしました!」
息を切らせて待ち合わせ場所に辿り着く。
遅刻魔の彼にしては珍しく、既に待ちぼうけをしていたようだ。
急に入った任務からの、直行。
モデル顔負けで洒落こんだ五条に対して、名無しの格好は完全に任務帰り。
動きやすい格好の上からコートとマフラーを巻いただけの服装は何だか不釣り合いな気がして、心の中で声にならない雄叫びをあげた。
「お疲れサマンサ〜。」
「お疲れ、様です。すみません、待ちましたよね」
「いんや、全然?」
そう言ってサングラス越しにへらりと笑う五条。
言葉とは裏腹に彼の鼻先は赤く、立派な両肩は寒そうに竦められていた。
「うそ。寒がりなんですから、もっとあったかい格好を……いや、どこかお店に入って下さっててもよかったのに。」
巻いていたマフラーを解いて、五条の首にふわりと掛ける。
彼の服には不釣り合いかもしれないが、少しばかり我慢してもらおう。
「んー…両方却下かな。」
「なんで?」
「だって名無しがマフラー貸してくれなくなるじゃん。」
巻かれたマフラーへ満足そうに顔を埋める五条。
名無しはというと走ってきたおかげで今は正直暑いくらいだ。
だからマフラーは必要ないとはいえ――
「もしかしていつもマフラーを巻かないのはわざとですか。」
「ピンポーン。」
「ピンポーン、じゃないですよ、もう。」
呆れた人だ。
こんな草臥れたマフラーで良ければいつでも貸すけれど――さて、高専に置きっぱなしのクリスマスプレゼントをどうしてやろうか。
中身は……どうやらお呼びではないマフラーなのだが。
「で。もしかして外で待ってた理由もあるんですか?」
「うん。息を切らしながら走ってくる名無しが見たくて。」
「悪趣味じゃないですか?」
「いやいや。僕のために一生懸命走ってる姿は可愛いの一言に尽きるね。」
ニコニコといい笑顔で語る五条に対して、名無しは「やっぱり悪趣味ですよ」と毒づいた。
今度から悠々とのんびり歩いて来ることにしよう。そうしよう。
「まぁまぁ拗ねないで。ね、名無しちゃん。」
「拗ねていません。怒ってるんです。
風邪でも引いたらどうするんですか?」
「名無しが看病してくれるんだよね?」
「しますけど。しますけども!」
弱味を握られている気分だ。
五条の手のひらで踊らされているような歯痒さに、名無しはぐっと拳を握りしめた。
本当にこの人は。五条悟、そういうところある。
「機嫌直して?僕のお姫さま。」
「なーんて。」と茶化しながら、流れるような動きで首元に回される手。
僅かな重み。
人肌に温まった金属の感触。
手で首周りを触れば、先程までなかった細いチェーンが指先を滑った。
「……あの、五条さん、これ」
「んー?クリスマスプレゼント。」
「似合ってるよ。」と満足そうに笑うもんだから、『絶対高いやつ』だとか『申し訳ない』なんて言葉を呑み込んでしまった。
本当、この人はズルい大人だ。
「……ありがとう、ございます」
「あれ〜?名無し、顔真っ赤。」
「し、仕方ないじゃ、ないですか!」
嬉しさと恥ずかしさとむず痒さで、感情がぐちゃぐちゃだ。
あぁ、こんな幸せで明日バチが当たらないだろうか。
そんな縁起でもないことを何処か他人事のように、頭の隅でぼんやり考えた。
スターライトとワルツを
「じゃあ、帰ろっか?」
差し出される手。
二回りも大きな手のひらにそっと指を重ねて、名無しは小さく頷く。
二人分の影は、瞬くような星影にとけていった。
シンプルな色合いながらも目が眩みそうになる程の光の洪水。
街路樹が宝石のように着飾られた景色は、冬の風物詩とも言えるだろう。
幼い頃に見たイルミネーションとはまた別格で、刺すような空気の真冬でもほんの少しだけ暖かく感じられるくらいだった。
「五条、さん、すみません!お待たせしました!」
息を切らせて待ち合わせ場所に辿り着く。
遅刻魔の彼にしては珍しく、既に待ちぼうけをしていたようだ。
急に入った任務からの、直行。
モデル顔負けで洒落こんだ五条に対して、名無しの格好は完全に任務帰り。
動きやすい格好の上からコートとマフラーを巻いただけの服装は何だか不釣り合いな気がして、心の中で声にならない雄叫びをあげた。
「お疲れサマンサ〜。」
「お疲れ、様です。すみません、待ちましたよね」
「いんや、全然?」
そう言ってサングラス越しにへらりと笑う五条。
言葉とは裏腹に彼の鼻先は赤く、立派な両肩は寒そうに竦められていた。
「うそ。寒がりなんですから、もっとあったかい格好を……いや、どこかお店に入って下さっててもよかったのに。」
巻いていたマフラーを解いて、五条の首にふわりと掛ける。
彼の服には不釣り合いかもしれないが、少しばかり我慢してもらおう。
「んー…両方却下かな。」
「なんで?」
「だって名無しがマフラー貸してくれなくなるじゃん。」
巻かれたマフラーへ満足そうに顔を埋める五条。
名無しはというと走ってきたおかげで今は正直暑いくらいだ。
だからマフラーは必要ないとはいえ――
「もしかしていつもマフラーを巻かないのはわざとですか。」
「ピンポーン。」
「ピンポーン、じゃないですよ、もう。」
呆れた人だ。
こんな草臥れたマフラーで良ければいつでも貸すけれど――さて、高専に置きっぱなしのクリスマスプレゼントをどうしてやろうか。
中身は……どうやらお呼びではないマフラーなのだが。
「で。もしかして外で待ってた理由もあるんですか?」
「うん。息を切らしながら走ってくる名無しが見たくて。」
「悪趣味じゃないですか?」
「いやいや。僕のために一生懸命走ってる姿は可愛いの一言に尽きるね。」
ニコニコといい笑顔で語る五条に対して、名無しは「やっぱり悪趣味ですよ」と毒づいた。
今度から悠々とのんびり歩いて来ることにしよう。そうしよう。
「まぁまぁ拗ねないで。ね、名無しちゃん。」
「拗ねていません。怒ってるんです。
風邪でも引いたらどうするんですか?」
「名無しが看病してくれるんだよね?」
「しますけど。しますけども!」
弱味を握られている気分だ。
五条の手のひらで踊らされているような歯痒さに、名無しはぐっと拳を握りしめた。
本当にこの人は。五条悟、そういうところある。
「機嫌直して?僕のお姫さま。」
「なーんて。」と茶化しながら、流れるような動きで首元に回される手。
僅かな重み。
人肌に温まった金属の感触。
手で首周りを触れば、先程までなかった細いチェーンが指先を滑った。
「……あの、五条さん、これ」
「んー?クリスマスプレゼント。」
「似合ってるよ。」と満足そうに笑うもんだから、『絶対高いやつ』だとか『申し訳ない』なんて言葉を呑み込んでしまった。
本当、この人はズルい大人だ。
「……ありがとう、ございます」
「あれ〜?名無し、顔真っ赤。」
「し、仕方ないじゃ、ないですか!」
嬉しさと恥ずかしさとむず痒さで、感情がぐちゃぐちゃだ。
あぁ、こんな幸せで明日バチが当たらないだろうか。
そんな縁起でもないことを何処か他人事のように、頭の隅でぼんやり考えた。
スターライトとワルツを
「じゃあ、帰ろっか?」
差し出される手。
二回りも大きな手のひらにそっと指を重ねて、名無しは小さく頷く。
二人分の影は、瞬くような星影にとけていった。