Re:set//short story
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冬の雨は、酷く寒い。
今日の天気予報だと深夜から雨だと、お天気キャスターのお姉さんが言っていたというのに。
「わ、雨降ってる!」
最後の授業が始まる頃、クラスの誰かが声を上げた。
口々に「最悪ゥ…、傘持ってきてないし」「売店にまだあるかな…」とザワついている。
私の傘といえば、紺色の花柄のものがあるけど……残念ながら玄関に置いてきた。
『外に出掛けられるなら、念の為持って行ってくださいね。』と神田さんに伝えているので、彼が雨に打たれるようなことはないだろうけど…。
「……どうやって帰ろうかなぁ」
あめあめふれふれ
いつも通り、元の世界に戻るための手立てがないか街を探索していた。
夕方から降りだす、突然の雨。
テレビとやらでは『深夜から明け方まで雨でしょう』と言っていたくせに、全くアテにならないもんだ。
(……傘、これしかないんじゃねぇのか?)
居候させてもらっている名無しの家には、これしか傘がなかった。
一人暮らしなのだ。確かに一本あれば傘なんて事足りるだろう。
――確か、アイツが通う学校とやらは二駅程先にあったはずだ。
湿り気を帯びた冬の空気を肺いっぱいに吸い込んで、俺は出来たての水溜まりを大股で飛び越えた。
***
最後の授業が終わり、ホームルームも終わった。
外を見れば相変わらず酷い雨足だ。
ザァザァと音を立てて降りしきる雨は、まるでジャングルに降り注ぐスコールよう。
灰色に染まった景色をぼんやり眺め、私は小さく溜息をついた。
荷物をまとめて靴箱に行けば、何故か周りの生徒が浮き足立っている。
男女関係なしに向けられる視線の先には――
「名無し。」
傘を片手に、腕を組んで立っている神田さんの姿。
彼ほど長い髪も珍しいのだろうが、きっと皆が視線を向けていた理由は彼の顔だろう。
十人中九人は確実に振り向く彼の美貌は、顔面偏差値で推し量れるものではないからだ。
名前を呼ばれ、半分程の視線がこちらに向けられる。
嬉しい。びっくりした。そして少し居心地が悪い。
「……か、神田さん!?どうしてここに…」
「雨降ってるからな。」
至ってシンプルな答えだ。
人に迎えに来てもらうなんて、初めてだった。
なんとも言えない感情が胸の奥から溢れて、こんな些細なことなのに涙が出そうになる。
「あ、りがとう、ございます。」
「早く帰るぞ。ここにいたら知らねぇヤツに声掛けれれてばっかで面倒くせぇ…」
そりゃ貴方の顔がいいからですよ。
なんてことは言葉にせず、露骨に嫌そうな顔をする神田さんを見上げて思わず笑ってしまった。
「嫌だったら帰っても良かったんですよ?」
「迎えに来た意味がなくなるだろうが。」
軽く頬を摘まれれば、甘い痛みがほんのり走る。
今はこの痛みすら、なんだか嬉しかった。
「……傘、もう一本買った方がいいですかね?」
「迎えに来りゃいい話だろ。」
そんな他愛のない会話をしながら、雨音に包まれた街へ二人で踏み出した。
次の日、普段話しをしないクラスメイトにも矢鱈と質問攻めにあったのは言うまでもないだろう。
今日の天気予報だと深夜から雨だと、お天気キャスターのお姉さんが言っていたというのに。
「わ、雨降ってる!」
最後の授業が始まる頃、クラスの誰かが声を上げた。
口々に「最悪ゥ…、傘持ってきてないし」「売店にまだあるかな…」とザワついている。
私の傘といえば、紺色の花柄のものがあるけど……残念ながら玄関に置いてきた。
『外に出掛けられるなら、念の為持って行ってくださいね。』と神田さんに伝えているので、彼が雨に打たれるようなことはないだろうけど…。
「……どうやって帰ろうかなぁ」
あめあめふれふれ
いつも通り、元の世界に戻るための手立てがないか街を探索していた。
夕方から降りだす、突然の雨。
テレビとやらでは『深夜から明け方まで雨でしょう』と言っていたくせに、全くアテにならないもんだ。
(……傘、これしかないんじゃねぇのか?)
居候させてもらっている名無しの家には、これしか傘がなかった。
一人暮らしなのだ。確かに一本あれば傘なんて事足りるだろう。
――確か、アイツが通う学校とやらは二駅程先にあったはずだ。
湿り気を帯びた冬の空気を肺いっぱいに吸い込んで、俺は出来たての水溜まりを大股で飛び越えた。
***
最後の授業が終わり、ホームルームも終わった。
外を見れば相変わらず酷い雨足だ。
ザァザァと音を立てて降りしきる雨は、まるでジャングルに降り注ぐスコールよう。
灰色に染まった景色をぼんやり眺め、私は小さく溜息をついた。
荷物をまとめて靴箱に行けば、何故か周りの生徒が浮き足立っている。
男女関係なしに向けられる視線の先には――
「名無し。」
傘を片手に、腕を組んで立っている神田さんの姿。
彼ほど長い髪も珍しいのだろうが、きっと皆が視線を向けていた理由は彼の顔だろう。
十人中九人は確実に振り向く彼の美貌は、顔面偏差値で推し量れるものではないからだ。
名前を呼ばれ、半分程の視線がこちらに向けられる。
嬉しい。びっくりした。そして少し居心地が悪い。
「……か、神田さん!?どうしてここに…」
「雨降ってるからな。」
至ってシンプルな答えだ。
人に迎えに来てもらうなんて、初めてだった。
なんとも言えない感情が胸の奥から溢れて、こんな些細なことなのに涙が出そうになる。
「あ、りがとう、ございます。」
「早く帰るぞ。ここにいたら知らねぇヤツに声掛けれれてばっかで面倒くせぇ…」
そりゃ貴方の顔がいいからですよ。
なんてことは言葉にせず、露骨に嫌そうな顔をする神田さんを見上げて思わず笑ってしまった。
「嫌だったら帰っても良かったんですよ?」
「迎えに来た意味がなくなるだろうが。」
軽く頬を摘まれれば、甘い痛みがほんのり走る。
今はこの痛みすら、なんだか嬉しかった。
「……傘、もう一本買った方がいいですかね?」
「迎えに来りゃいい話だろ。」
そんな他愛のない会話をしながら、雨音に包まれた街へ二人で踏み出した。
次の日、普段話しをしないクラスメイトにも矢鱈と質問攻めにあったのは言うまでもないだろう。
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