しあわせ家族計画
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ちょっとした私用で、浦原さんに用事があった。
…まぁ用事と言っても大した事ではない。
先日買ったギターの、替えの弦を仕入れられるか・というなんてことはない話だ。
珍しく瀞霊廷――しかも十二番隊に顔を出しているそうなので、俺は休憩時間の合間を縫って技術開発局に顔を出した。
わがやのPhotography
「おや、檜佐木副隊長。こんな所へ来られるなんて珍しい。」
阿近に出された客用の茶をのほほんと啜りながら、浦原さんがひらひらと片手を振る。
まるで客なんて来ていないような態度で、少し離れたところで粛々と作業を行うのは涅隊長だ。
……相変わらず隊長と浦原さんは仲が悪いらしい。
いや。訂正しよう。
涅隊長が、一方的に浦原さんを毛嫌いしている。うん、これがしっくりくる。
技術開発局での用事は終わっていないようだが、どうやら今は暇を持て余しているらしい。
俺は一言断り、仕事とは関係ない私用を切り出した。
「浦原さん、仕事で来てるのにすみません。先日買ったギターの替えの弦なんですけど…」
念の為二本ずつ。
俺の話をうんうんと頷きながら聞いた浦原さんは、注文のメモを取るためスマホ型になった伝令神機を取り出した。
「かしこまりました。じゃあまた入荷次第お届けいたしますね。」
「毎度すみません」
「なんの。仕事っスからぁ」
一体何が彼の本業なのやら。
俺は困ったように小さく笑い、なんとなしに視線を机の上に落とした。
浦原の、伝令神機。
そのロック画面には女性が二人。
正しくは母親になって少し大人びてきた少女と、まだよちよち歩きが始まったばかりの乳児。
蛍光緑の、ストローのような吹き棒を持った名無し。
彼女の片手には目にも鮮やかなピンク色の小さな容器。
俺だってこれは知っている。シャボン玉だ。
母親がふくふくと繰り出す虹色の泡の群れを、見るからにむにむにとした小さな両手を上げて追いかける彼らの子供。
ありふれた――しかし幸せに溢れた日常を切り取ったような写真が、固く無機質な画面に煌々と映っていた。
……確か少し前は名無しと娘さんが揃って昼寝をしている写真…だった、気がする。
以前にちらりと見ただけで、うろ覚えだが。
「その写真、いいですね」
ぽそりと零れた、素直な一言。
それを聞いた涅隊長は『あーあ』と言わんばかりの表情を浮かべ、阿近に至っては露骨に視線を逸らされた。
浦原さんといえば――珍しく、花の咲くような笑顔で(それはそれで少し気味が悪かった)俺に伝令神機の画面を見せてきた。
「いいでしょ!いやぁ〜名無しサンと娘が今日も可愛くて、」
これはそういうラジオ番組なのか?と疑いたくなるレベルで、出るわ出るわマシンガントークの嫁自慢と娘自慢。
パーソナリティ・浦原は、それはそれはデレデレとした……何とも緩みきった表情で、あれやこれやと写真を一枚一枚見せてくれた。
……俺の知らない新たな一面を発見した気分だ。
いや、浦原さんが妻子を大事にしているのは知っていたが、ここまではしゃぐのはちょっと予想外だった。
何せ『何を考えているのか分からない死神ランキング』を作るとしたら、この人がブッチギリの一位に輝くこと間違いなしだろうから。
「全く、喧しい!写真よりも本人達を寄越したまえ!貴様の自慢話など腹が空くばかりだヨ!」
「えーーー。嫌っス。」
即答。
まるで『息子と孫に会わせろ』と催促する姑と、余裕の表情でそれを拒否する嫁のようだ。
……いや、そんなことを口にした日には俺の命がないのは知っているので、死んでも口にはしないが。
「……………いつもこんな感じなのか?」
「こうなった浦原さんは最低半刻は解放してくれねぇぞ。」
恐る恐る阿近に問えば、げんなりした表情で答えてくれた。
本当に話は長くなるらしい。
客用の湯呑みをスっと差し出された俺は、ただ困ったように笑うしか出来なかった。
…まぁ用事と言っても大した事ではない。
先日買ったギターの、替えの弦を仕入れられるか・というなんてことはない話だ。
珍しく瀞霊廷――しかも十二番隊に顔を出しているそうなので、俺は休憩時間の合間を縫って技術開発局に顔を出した。
わがやのPhotography
「おや、檜佐木副隊長。こんな所へ来られるなんて珍しい。」
阿近に出された客用の茶をのほほんと啜りながら、浦原さんがひらひらと片手を振る。
まるで客なんて来ていないような態度で、少し離れたところで粛々と作業を行うのは涅隊長だ。
……相変わらず隊長と浦原さんは仲が悪いらしい。
いや。訂正しよう。
涅隊長が、一方的に浦原さんを毛嫌いしている。うん、これがしっくりくる。
技術開発局での用事は終わっていないようだが、どうやら今は暇を持て余しているらしい。
俺は一言断り、仕事とは関係ない私用を切り出した。
「浦原さん、仕事で来てるのにすみません。先日買ったギターの替えの弦なんですけど…」
念の為二本ずつ。
俺の話をうんうんと頷きながら聞いた浦原さんは、注文のメモを取るためスマホ型になった伝令神機を取り出した。
「かしこまりました。じゃあまた入荷次第お届けいたしますね。」
「毎度すみません」
「なんの。仕事っスからぁ」
一体何が彼の本業なのやら。
俺は困ったように小さく笑い、なんとなしに視線を机の上に落とした。
浦原の、伝令神機。
そのロック画面には女性が二人。
正しくは母親になって少し大人びてきた少女と、まだよちよち歩きが始まったばかりの乳児。
蛍光緑の、ストローのような吹き棒を持った名無し。
彼女の片手には目にも鮮やかなピンク色の小さな容器。
俺だってこれは知っている。シャボン玉だ。
母親がふくふくと繰り出す虹色の泡の群れを、見るからにむにむにとした小さな両手を上げて追いかける彼らの子供。
ありふれた――しかし幸せに溢れた日常を切り取ったような写真が、固く無機質な画面に煌々と映っていた。
……確か少し前は名無しと娘さんが揃って昼寝をしている写真…だった、気がする。
以前にちらりと見ただけで、うろ覚えだが。
「その写真、いいですね」
ぽそりと零れた、素直な一言。
それを聞いた涅隊長は『あーあ』と言わんばかりの表情を浮かべ、阿近に至っては露骨に視線を逸らされた。
浦原さんといえば――珍しく、花の咲くような笑顔で(それはそれで少し気味が悪かった)俺に伝令神機の画面を見せてきた。
「いいでしょ!いやぁ〜名無しサンと娘が今日も可愛くて、」
これはそういうラジオ番組なのか?と疑いたくなるレベルで、出るわ出るわマシンガントークの嫁自慢と娘自慢。
パーソナリティ・浦原は、それはそれはデレデレとした……何とも緩みきった表情で、あれやこれやと写真を一枚一枚見せてくれた。
……俺の知らない新たな一面を発見した気分だ。
いや、浦原さんが妻子を大事にしているのは知っていたが、ここまではしゃぐのはちょっと予想外だった。
何せ『何を考えているのか分からない死神ランキング』を作るとしたら、この人がブッチギリの一位に輝くこと間違いなしだろうから。
「全く、喧しい!写真よりも本人達を寄越したまえ!貴様の自慢話など腹が空くばかりだヨ!」
「えーーー。嫌っス。」
即答。
まるで『息子と孫に会わせろ』と催促する姑と、余裕の表情でそれを拒否する嫁のようだ。
……いや、そんなことを口にした日には俺の命がないのは知っているので、死んでも口にはしないが。
「……………いつもこんな感じなのか?」
「こうなった浦原さんは最低半刻は解放してくれねぇぞ。」
恐る恐る阿近に問えば、げんなりした表情で答えてくれた。
本当に話は長くなるらしい。
客用の湯呑みをスっと差し出された俺は、ただ困ったように笑うしか出来なかった。
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