しあわせ家族計画
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それは、愛娘に突然言われた。
穏やかな昼下がり。
親バカ浦原喜助はもちふわ肌の娘に、今日も今日とて頬ずりしていた。
「とっと、ちょいちょい、や。」
拙い言葉で放たれた、拒絶。
何が『ちょりちょり』なのかは、言うまでもないだろう。
「で、情けなくベコベコに凹んでるんですか?」
「だって『イヤ』っスよ?あのもちもちふわふわの手で、わざわざ顎を押し退けて…」
べそべそと愚痴を連ねる浦原と、少し面倒くさそうに愚痴に付き合う名無し。
浦原喜助を精神的に、完膚無きまでに叩きのめした張本人・ナナシは隣の和室でお昼寝中だ。
「まぁ確かにその無精髭はチクチクしますね。」
「え。キスする時とかずっとチクチクするって思ってたンっスか?」
「そうですね。」
最初はくすぐったかったが、今となってはすっかり慣れてしまった。喉元過ぎればナントヤラ、だ。
(むしろちょっとクセになってきてるのは絶対に言わないようにしよう)
言ったら言ったで面倒くさいことになりそうだから。
そう。例えばナナシに行なった頬ずりの刑とか。
「……あぁ、でも商店街のお肉屋さんのおばちゃんに『旦那様は結構歳上でいらっしゃるのね』と言われたことはありますね。」
別に浦原に小皺が出来てきたとか、肌年齢が見るからに下がってきているとか、そういう話ではない。
むしろ何年経ってもピチピチしているので、ちょっと腹が立つくらいだ。
原因は、娘も嫌がった『アレ』だろう。
「髭を剃ったらナナシにも嫌がられないのでは?」
「これ、一応ボクのトレードマークっスよ?」
「そうだったんですか?」
それは初耳だ。
むしろトレードマークは帽子と下駄だと思っていた。
「まぁ、でも髭を剃ったらかなりお若く見えるんじゃないんですか?」
清潔感は大事だ。
浦原が決して清潔感がないわけではないのだが、出で立ちが全体的に胡散臭い。
せめて髭を剃ったら胡散臭さが一割程削減されるだろうに。
「……名無しサンは若く見える方がいいっスか?」
「え?まぁ、そうですね。」
正直、どっちでもいい。
そもそも惚れた腫れたのきっかけは外見ではないから、その辺は特にこだわりはない。
……勿論外見も好きだが。
なにせ顔がいい。絶対本人には言わないが。
気のない返事を適当に返せば、弾かれたように立ち上がる浦原。
徒競走並の速さで洗面台に向かっていったが――。
(いいのかな。トレードマーク。)
家の奥から聞こえてくる水音に耳を傾けながら、名無しはのんびり欠伸をひとつ零すのだった。
喜助、断捨離をするの巻
「とっと、ちょいちょい、ばいばい?」
「そ。チョリチョリはバイバイしたんっス。」
その晩、可愛い愛娘・ナナシへの頬ずりは拒否されなかったそうな。めでたしめでたし。
穏やかな昼下がり。
親バカ浦原喜助はもちふわ肌の娘に、今日も今日とて頬ずりしていた。
「とっと、ちょいちょい、や。」
拙い言葉で放たれた、拒絶。
何が『ちょりちょり』なのかは、言うまでもないだろう。
「で、情けなくベコベコに凹んでるんですか?」
「だって『イヤ』っスよ?あのもちもちふわふわの手で、わざわざ顎を押し退けて…」
べそべそと愚痴を連ねる浦原と、少し面倒くさそうに愚痴に付き合う名無し。
浦原喜助を精神的に、完膚無きまでに叩きのめした張本人・ナナシは隣の和室でお昼寝中だ。
「まぁ確かにその無精髭はチクチクしますね。」
「え。キスする時とかずっとチクチクするって思ってたンっスか?」
「そうですね。」
最初はくすぐったかったが、今となってはすっかり慣れてしまった。喉元過ぎればナントヤラ、だ。
(むしろちょっとクセになってきてるのは絶対に言わないようにしよう)
言ったら言ったで面倒くさいことになりそうだから。
そう。例えばナナシに行なった頬ずりの刑とか。
「……あぁ、でも商店街のお肉屋さんのおばちゃんに『旦那様は結構歳上でいらっしゃるのね』と言われたことはありますね。」
別に浦原に小皺が出来てきたとか、肌年齢が見るからに下がってきているとか、そういう話ではない。
むしろ何年経ってもピチピチしているので、ちょっと腹が立つくらいだ。
原因は、娘も嫌がった『アレ』だろう。
「髭を剃ったらナナシにも嫌がられないのでは?」
「これ、一応ボクのトレードマークっスよ?」
「そうだったんですか?」
それは初耳だ。
むしろトレードマークは帽子と下駄だと思っていた。
「まぁ、でも髭を剃ったらかなりお若く見えるんじゃないんですか?」
清潔感は大事だ。
浦原が決して清潔感がないわけではないのだが、出で立ちが全体的に胡散臭い。
せめて髭を剃ったら胡散臭さが一割程削減されるだろうに。
「……名無しサンは若く見える方がいいっスか?」
「え?まぁ、そうですね。」
正直、どっちでもいい。
そもそも惚れた腫れたのきっかけは外見ではないから、その辺は特にこだわりはない。
……勿論外見も好きだが。
なにせ顔がいい。絶対本人には言わないが。
気のない返事を適当に返せば、弾かれたように立ち上がる浦原。
徒競走並の速さで洗面台に向かっていったが――。
(いいのかな。トレードマーク。)
家の奥から聞こえてくる水音に耳を傾けながら、名無しはのんびり欠伸をひとつ零すのだった。
喜助、断捨離をするの巻
「とっと、ちょいちょい、ばいばい?」
「そ。チョリチョリはバイバイしたんっス。」
その晩、可愛い愛娘・ナナシへの頬ずりは拒否されなかったそうな。めでたしめでたし。