しあわせ家族計画
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
例のアレが来ないから、おかしいとは思っていた。
心当たりはある。あるのだ。むしろ無い方がおかしい。
ペン程のサイズの、プラスチック製のスティック。
取り付けられた二つの小さな小窓からは、赤々とした線が一本ずつ滲んでいた。
『判定』『終了』と書かれた文字を何度も見るが、やはり見間違えではないのだろう。
「出来ちゃった。」
1mmのしあわせ
さて。どのタイミングで言うべきか。
雨とジン太がいる目の前……ではやめておこう。
一応彼らも大人になったとはいえ、こういう話を大っぴらにしていいものか迷ってしまう。
確実に二人になる時といえば寝る直前なのだが…。
「あ、名無しサン。ボクちょっと研究室ですることがあるんで先に寝ちゃっといてください」
「あ。はい。」
なんとも淡白な返事を返してしまった。
いやいや、ちょっと話があるんで…となぜ言えないのか。
……正確には、少しだけ勇気がなくて言えないのだが。
(うーん…意気地無し)
脳裏に過ぎるのは完全に縁切りしてしまった両親の顔。
あぁならないだろうか。
あぁはなりたくない。
浦原に鬱陶しがられないだろうか。
ないとは思うが、所謂『最悪の事態』にならない、という保障はどこにもないのだ。
風呂の湯船から上がり、ふわふわのバスタオルで髪を拭く。
視線を落とせばぺたんこの腹部が視界に入る……が、正直自覚がない。
見た目に変化もなければ、勿論『モゾモゾ動く』なんてことは随分先の話だろう。
(……って悩んでも仕方ないもんなぁ)
大丈夫、大丈夫。
最悪の事態だったとしても、とりあえずマユリに相談してしまえばいいんだ。
有難いことに給金はしっかり頂いている。尸魂界で暮らすとなれば、しばらくはお金の心配はしなくてもいいだろう。
風呂上がりの牛乳を飲み干して、小さく溜息をつく。
ぐるぐると考えてしまうのは『最悪の事態』の先のことばかり。
変なところで臆病なせいで、打ち明けられずにいるせいだろう。
――それも仕方ないといえば、仕方ない。
思春期頃まで家族に振り回され続けた人生だったのだから。
ましてや、自分が親になるかもしれない、なんて。
静まり返った台所で、牛乳を飲んだ後のコップをシンクに入れ、スマホ型になった伝令神機をぼんやり眺める。
検索をかけるワードは『初期症状』『どうやって打ち明けたか』………
「なーにしてるんっスか?」
不意に背後から声をかけられ、床から1センチ飛び上がる。
覆い被さるように覗き込んできた浦原に、名無しは口から心臓が飛び出てきたような錯覚に陥った。
手から滑り落ちる伝令神機。
ゴトンと端末が落ちる音が、いつもより大きく響いた気がした。
「びっ……くりした…。何してるって、牛乳飲んでただけですよ?」
よいしょ、と言いながら名無しの伝令神機を拾い上げる浦原。
名無しも拾おうとしゃがみ込んだ時だった。
「そうなんっスか?いえ、気のせいだったらいいンっスけど…。なんか夕方、様子が変だったので」
こうも長く一緒に暮らしていれば分かるのだろうか?
薄い暗がりの中、栗色の瞳と視線が絡んだ。
「出来ちゃいました。赤ちゃん。」
ぽろりと。
口から零れた、一言。
ちゃんと、きちんと、言うつもりだったのに。
それは思ってた以上に呆気なく溢れた、教えたくて伝えたくて仕方がなかった言葉。
お互いしゃがみ込んだままフリーズする。
浦原に至っては瞬きすらしていない。
「…………………あの、浦原さん?」
「名無しサン。」
「は、はい。」
すぅーーー、はぁーーー………
ゆっくり深呼吸して、浦原は声を張り上げた。
「やっっっっったーーーーー!」
浦原商店の主の、今まで聞いたことないような声量かつ、歓喜に満ちた浮ついた声。
これからの不安や、後ろ向きに悩んでいたあれやこれを全部吹き飛ばすような『夫』の声に、名無しは思わず小さくしりもちをついてしまった。
寝付いていた他の面々が飛び起きたのは……また別の話。
心当たりはある。あるのだ。むしろ無い方がおかしい。
ペン程のサイズの、プラスチック製のスティック。
取り付けられた二つの小さな小窓からは、赤々とした線が一本ずつ滲んでいた。
『判定』『終了』と書かれた文字を何度も見るが、やはり見間違えではないのだろう。
「出来ちゃった。」
1mmのしあわせ
さて。どのタイミングで言うべきか。
雨とジン太がいる目の前……ではやめておこう。
一応彼らも大人になったとはいえ、こういう話を大っぴらにしていいものか迷ってしまう。
確実に二人になる時といえば寝る直前なのだが…。
「あ、名無しサン。ボクちょっと研究室ですることがあるんで先に寝ちゃっといてください」
「あ。はい。」
なんとも淡白な返事を返してしまった。
いやいや、ちょっと話があるんで…となぜ言えないのか。
……正確には、少しだけ勇気がなくて言えないのだが。
(うーん…意気地無し)
脳裏に過ぎるのは完全に縁切りしてしまった両親の顔。
あぁならないだろうか。
あぁはなりたくない。
浦原に鬱陶しがられないだろうか。
ないとは思うが、所謂『最悪の事態』にならない、という保障はどこにもないのだ。
風呂の湯船から上がり、ふわふわのバスタオルで髪を拭く。
視線を落とせばぺたんこの腹部が視界に入る……が、正直自覚がない。
見た目に変化もなければ、勿論『モゾモゾ動く』なんてことは随分先の話だろう。
(……って悩んでも仕方ないもんなぁ)
大丈夫、大丈夫。
最悪の事態だったとしても、とりあえずマユリに相談してしまえばいいんだ。
有難いことに給金はしっかり頂いている。尸魂界で暮らすとなれば、しばらくはお金の心配はしなくてもいいだろう。
風呂上がりの牛乳を飲み干して、小さく溜息をつく。
ぐるぐると考えてしまうのは『最悪の事態』の先のことばかり。
変なところで臆病なせいで、打ち明けられずにいるせいだろう。
――それも仕方ないといえば、仕方ない。
思春期頃まで家族に振り回され続けた人生だったのだから。
ましてや、自分が親になるかもしれない、なんて。
静まり返った台所で、牛乳を飲んだ後のコップをシンクに入れ、スマホ型になった伝令神機をぼんやり眺める。
検索をかけるワードは『初期症状』『どうやって打ち明けたか』………
「なーにしてるんっスか?」
不意に背後から声をかけられ、床から1センチ飛び上がる。
覆い被さるように覗き込んできた浦原に、名無しは口から心臓が飛び出てきたような錯覚に陥った。
手から滑り落ちる伝令神機。
ゴトンと端末が落ちる音が、いつもより大きく響いた気がした。
「びっ……くりした…。何してるって、牛乳飲んでただけですよ?」
よいしょ、と言いながら名無しの伝令神機を拾い上げる浦原。
名無しも拾おうとしゃがみ込んだ時だった。
「そうなんっスか?いえ、気のせいだったらいいンっスけど…。なんか夕方、様子が変だったので」
こうも長く一緒に暮らしていれば分かるのだろうか?
薄い暗がりの中、栗色の瞳と視線が絡んだ。
「出来ちゃいました。赤ちゃん。」
ぽろりと。
口から零れた、一言。
ちゃんと、きちんと、言うつもりだったのに。
それは思ってた以上に呆気なく溢れた、教えたくて伝えたくて仕方がなかった言葉。
お互いしゃがみ込んだままフリーズする。
浦原に至っては瞬きすらしていない。
「…………………あの、浦原さん?」
「名無しサン。」
「は、はい。」
すぅーーー、はぁーーー………
ゆっくり深呼吸して、浦原は声を張り上げた。
「やっっっっったーーーーー!」
浦原商店の主の、今まで聞いたことないような声量かつ、歓喜に満ちた浮ついた声。
これからの不安や、後ろ向きに悩んでいたあれやこれを全部吹き飛ばすような『夫』の声に、名無しは思わず小さくしりもちをついてしまった。
寝付いていた他の面々が飛び起きたのは……また別の話。
1/3ページ