追憶の星
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「ふぅ、無事戻れましたね」
「そ、そう……です、ね…………」
尸魂界 瀞霊廷某所。
森の中にポッカリと拓いた空地に、瞬きをした瞬間たどり着いていた。
媒介として役目を終えたのか、刻志が使っていた斬魄刀は真っ二つに折れてしまっている。
もう二度と、過去で殺される被害者は出ないだろう。
正直、元の時代に戻れたという実感と共に喜びたいところなのだが――それどころではない。
触れられた唇が何だか熱くて、名無しは口元を押さえて黙りこくっていた。
「名無しサン、顔真っ赤っスけど。」
「へ!?いや、その、ビックリして…」
浦原ではあるのだが、あれは浦原であって浦原ではない。
同じ顔だったからなのか、それともまた別の理由からか。
反射的に火照ってしまった赤みは早々におさまるわけもなく、正直どうしていいものか分からなかった。
「キスされたのがっスか?」
「きっ…………そ、う、です、けど、」
歯切れ悪く返事をすれば「ふーん」と、これまた無感情な相槌を浦原が返した。
「昔のボクなんっスから、どうせちゃらんぽらんしてて、不埒なセクハラを名無しサンにしまくってたんじゃないっスか?」
「…………?、いえ…下半身はとてつもなくだらしなかったですけど……。そういえば、セクハラらしいセクハラはしてこなかったですね。」
下半身がだらしない、という一言は非常に引っ掛かるが…予想していなかったまさかの回答に浦原本人が面食らった。
こう言ってはなんだが女の子を見れば誰彼構わず手を出していた。
隊長になってからは多忙の為頻度が減り、名無しと出会ってからはトドメと言わんばかりにぱったりとなくなったが。
それがどうだ。
あのヤリ盛りだった浦原喜助が、セクハラすらしなかった。
裏を返せばそれだけ大切にしていたという、揺るぎない事実なわけで。
(…………なーに本気になってるんっスか。昔のアタシ)
内心舌打ちを零すが、当の本人に届くことはないだろう。
同族嫌悪だと自覚はしていたが、そんなところまで似なくていいだろうに。
そもそも彼女に触れていいのは己ただ一人だけだ。
それを颯爽に。一瞬で。唇を奪っていくだなんて。
――もし、もしもだ。もしもの、話だ。
過去の自分にもう一度会うことがあれば、間違いなく血祭りにあげてしまうかもしれない。
元はと言えば己が一太刀浴びたせいなので、あまり声を大にして言えないところが悔しいところではある。
そんなモヤモヤを抱えて、言葉にする代わりに浦原は溜息を一度吐いた。
「ということで、」
「う、わ!?」
「名無しサン禁断症状でボクの股間が爆発しそうなんでとっとと現世に帰って、布団に行きましょ。」
「露骨なこと言うのはやめませんか!?そういうところですよ、浦原さん!」
いくらか痩せてしまった腰を抱き、身体を寄せる。
ムードの欠けらもないと言えばそうなのだが、禁断症状が出ているのは確かだ。
むしろ帰ってくるまで過激な名無し摂取行動を取らなかったことを褒めて欲しいくらいだ。
「だってずっと過去のボクと一緒だったから、名無しサンは寂しくなかったでしょう?ボクはすーーーっごく寂しかったのに。」
まるで拗ねた子供のような言葉に自分でも笑ってしまいそうになる。
しかし目の前の少女は決して笑うことはなく、少しだけムッと口元を尖らせた。
まさに不服そうな顔、と言ったところか。
視線を右往左往彷徨わせ、ボソボソと小さな声で不満を漏らした。
「……………………………寂しかったに決まってるんじゃないですか。」
普段の距離感なら決して聞こえないであろう言葉。
それは浦原が抱えていた過去の自分への鬱憤を全て吹き飛ばす程の一言だった。
「……………え?名無しサン、聞こえませんでした。しっかり録音するんでもう一回お願いします!テイク2いきましょう!」
「聞こえてるじゃないですか!言いません!二度といいません!」
伝令神機の録音機能を起動するが、バッサリ断られてしまった。
無念だが、ここは我慢することにしよう。
追憶の星#28
「浦原さん。」
「なんっスか?」
「思い切り、ギュッてしてください。」
珍しく、両手を広げて強請る恋人のお願いを断る男がいたら見てみたいものだ。
互いの欠けていた何かを埋めるよう、小さな背中を覆い隠すように手を回し、名無しはあたたかい胸板に頬を当て強くしがみついた。
「おかえりなさい、名無しサン。」
「ただいま帰りました、浦原さん。」
「そ、そう……です、ね…………」
尸魂界 瀞霊廷某所。
森の中にポッカリと拓いた空地に、瞬きをした瞬間たどり着いていた。
媒介として役目を終えたのか、刻志が使っていた斬魄刀は真っ二つに折れてしまっている。
もう二度と、過去で殺される被害者は出ないだろう。
正直、元の時代に戻れたという実感と共に喜びたいところなのだが――それどころではない。
触れられた唇が何だか熱くて、名無しは口元を押さえて黙りこくっていた。
「名無しサン、顔真っ赤っスけど。」
「へ!?いや、その、ビックリして…」
浦原ではあるのだが、あれは浦原であって浦原ではない。
同じ顔だったからなのか、それともまた別の理由からか。
反射的に火照ってしまった赤みは早々におさまるわけもなく、正直どうしていいものか分からなかった。
「キスされたのがっスか?」
「きっ…………そ、う、です、けど、」
歯切れ悪く返事をすれば「ふーん」と、これまた無感情な相槌を浦原が返した。
「昔のボクなんっスから、どうせちゃらんぽらんしてて、不埒なセクハラを名無しサンにしまくってたんじゃないっスか?」
「…………?、いえ…下半身はとてつもなくだらしなかったですけど……。そういえば、セクハラらしいセクハラはしてこなかったですね。」
下半身がだらしない、という一言は非常に引っ掛かるが…予想していなかったまさかの回答に浦原本人が面食らった。
こう言ってはなんだが女の子を見れば誰彼構わず手を出していた。
隊長になってからは多忙の為頻度が減り、名無しと出会ってからはトドメと言わんばかりにぱったりとなくなったが。
それがどうだ。
あのヤリ盛りだった浦原喜助が、セクハラすらしなかった。
裏を返せばそれだけ大切にしていたという、揺るぎない事実なわけで。
(…………なーに本気になってるんっスか。昔のアタシ)
内心舌打ちを零すが、当の本人に届くことはないだろう。
同族嫌悪だと自覚はしていたが、そんなところまで似なくていいだろうに。
そもそも彼女に触れていいのは己ただ一人だけだ。
それを颯爽に。一瞬で。唇を奪っていくだなんて。
――もし、もしもだ。もしもの、話だ。
過去の自分にもう一度会うことがあれば、間違いなく血祭りにあげてしまうかもしれない。
元はと言えば己が一太刀浴びたせいなので、あまり声を大にして言えないところが悔しいところではある。
そんなモヤモヤを抱えて、言葉にする代わりに浦原は溜息を一度吐いた。
「ということで、」
「う、わ!?」
「名無しサン禁断症状でボクの股間が爆発しそうなんでとっとと現世に帰って、布団に行きましょ。」
「露骨なこと言うのはやめませんか!?そういうところですよ、浦原さん!」
いくらか痩せてしまった腰を抱き、身体を寄せる。
ムードの欠けらもないと言えばそうなのだが、禁断症状が出ているのは確かだ。
むしろ帰ってくるまで過激な名無し摂取行動を取らなかったことを褒めて欲しいくらいだ。
「だってずっと過去のボクと一緒だったから、名無しサンは寂しくなかったでしょう?ボクはすーーーっごく寂しかったのに。」
まるで拗ねた子供のような言葉に自分でも笑ってしまいそうになる。
しかし目の前の少女は決して笑うことはなく、少しだけムッと口元を尖らせた。
まさに不服そうな顔、と言ったところか。
視線を右往左往彷徨わせ、ボソボソと小さな声で不満を漏らした。
「……………………………寂しかったに決まってるんじゃないですか。」
普段の距離感なら決して聞こえないであろう言葉。
それは浦原が抱えていた過去の自分への鬱憤を全て吹き飛ばす程の一言だった。
「……………え?名無しサン、聞こえませんでした。しっかり録音するんでもう一回お願いします!テイク2いきましょう!」
「聞こえてるじゃないですか!言いません!二度といいません!」
伝令神機の録音機能を起動するが、バッサリ断られてしまった。
無念だが、ここは我慢することにしよう。
追憶の星#28
「浦原さん。」
「なんっスか?」
「思い切り、ギュッてしてください。」
珍しく、両手を広げて強請る恋人のお願いを断る男がいたら見てみたいものだ。
互いの欠けていた何かを埋めるよう、小さな背中を覆い隠すように手を回し、名無しはあたたかい胸板に頬を当て強くしがみついた。
「おかえりなさい、名無しサン。」
「ただいま帰りました、浦原さん。」
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