追憶の星
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「はっ…はぁ、……ふぅ、」
肩で息をしつつ、藍染を組み敷く。
首元には刃。
周囲には斬魄刀から作り出した、蒼炎を纏った刃が無数に突き立っていた。
半ば焼け野原になっている花の海へ長年の怨敵を沈め、名無しが声を振り絞る。
珠のような汗を一筋垂らし、勝ち誇るように笑った。
「勝った!!」
追憶の星#25
「どうした。トドメは刺さないのかい?」
名無しに組み敷かれたまま、息切れはしているものの余裕の表情を浮かべて藍染が笑う。
『この娘になら殺されてもいい。』
そんな風に見えるのは、浦原の気の所為ではないのだろう。
「刺しませんよ。言ったでしょう。半殺しに留めておく、って」
藍染のそばに落ちていた、剥き身になっている鏡花水月。
それを鞘に収め、名無しは浦原へ放り投げた。
「浦原さん。それ触っといてください。そうすれば完全催眠に掛からないので」
名無しにそう言われ、一見ただの刀に戻った斬魄刀に触れる。
……頭の中で、硝子が砕ける音が聞こえた。
きっとこれが催眠が解けた合図なのだろう。
一言で言えば、ぬかりない。
そして容赦ない。
先程まで怒涛のように降り注いでいた刃の雨。
指先ひとつの動きで炎の矢を的確に指揮する姿は、流麗にして堂々たるものだった。
霊子と霊力を練り合わせ、刃を無限湧きのように魅せるその戦い方は……一見死神のように見えるが、実際のところは『滅却師』のそれに酷似していた。
霊王の欠片があると、それ程までに霊力の絶対数が上がるものなのか?
いや、きっとそうじゃない。
目の前の少女が『例外』なのだ。
だからこそ《斬魄刀のレプリカ》を大量に創り出し、莫大な霊力をもって湯水のように使役できる。
――理解すればする程、彼女は『規格外』だと実感する。
多少性能は劣るものの、投擲のために斬魄刀を霊力で作り上げている。
狂気の沙汰だ。
それにきっと、彼女は
「本気ではなかったな?」
少し、忌々しそうに。
血溜まりの中で倒れたままの藍染が、ぽそりと呟いた。
「本気ですよ。奥の手を使わない状態で、ですけど」
「私は使うに値しなかったというのか?」
「いえ。使ったあと動けなくなるので『使ってはいけない』と約束してるんです。」
誰と、とは言わない。言う必要もないだろう。
名無しがここまで律儀に約束を守る相手となれば、ただ一人しかいないのだから。
「本当は、貴方に手出しなんてするつもりもなかった。いくら現状を引っ掻き回されても静観するつもりでした。
――けど、貴方は私の逆鱗に触れた。『浦原さんに罪を被せる』ことは、絶対に見過ごすことも許すことも出来ない。」
一度目は止めることが出来なかった。
だからこそ、二度目は、ない。
それは名無しにとって何を差し置いても許し難く、阻止しなければいけないことだった。
彼が二度も居場所を奪われることは、あってはならないのだ。
「そんなに、大事なのか」
藍染の独白に近いような呟き。
それを至近距離にいた名無しが聞き逃すはずもなく。
「当たり前じゃないですか。」
さも当然と言わんばかりに即答する。
例え世界と天秤に掛けたところで、その答えは変わることがないだろう。
一点の曇りもない返答に、藍染は呆れたように薄く笑みを浮かべるのだった。
「いやぁ、そんなにキッパリ言われたら照れますねぇ」
場にそぐわない、のんびりした声。
浦原のものだが『浦原』ではない。
風に靡く黒い羽織。
杖に擬態した斬魄刀を帯刀し、生成色と千歳緑の縞模様の帽子。
見間違えるはずもない。
「やぁやぁ。お迎えに上がりましたよ、名無しサン。」
肩で息をしつつ、藍染を組み敷く。
首元には刃。
周囲には斬魄刀から作り出した、蒼炎を纏った刃が無数に突き立っていた。
半ば焼け野原になっている花の海へ長年の怨敵を沈め、名無しが声を振り絞る。
珠のような汗を一筋垂らし、勝ち誇るように笑った。
「勝った!!」
追憶の星#25
「どうした。トドメは刺さないのかい?」
名無しに組み敷かれたまま、息切れはしているものの余裕の表情を浮かべて藍染が笑う。
『この娘になら殺されてもいい。』
そんな風に見えるのは、浦原の気の所為ではないのだろう。
「刺しませんよ。言ったでしょう。半殺しに留めておく、って」
藍染のそばに落ちていた、剥き身になっている鏡花水月。
それを鞘に収め、名無しは浦原へ放り投げた。
「浦原さん。それ触っといてください。そうすれば完全催眠に掛からないので」
名無しにそう言われ、一見ただの刀に戻った斬魄刀に触れる。
……頭の中で、硝子が砕ける音が聞こえた。
きっとこれが催眠が解けた合図なのだろう。
一言で言えば、ぬかりない。
そして容赦ない。
先程まで怒涛のように降り注いでいた刃の雨。
指先ひとつの動きで炎の矢を的確に指揮する姿は、流麗にして堂々たるものだった。
霊子と霊力を練り合わせ、刃を無限湧きのように魅せるその戦い方は……一見死神のように見えるが、実際のところは『滅却師』のそれに酷似していた。
霊王の欠片があると、それ程までに霊力の絶対数が上がるものなのか?
いや、きっとそうじゃない。
目の前の少女が『例外』なのだ。
だからこそ《斬魄刀のレプリカ》を大量に創り出し、莫大な霊力をもって湯水のように使役できる。
――理解すればする程、彼女は『規格外』だと実感する。
多少性能は劣るものの、投擲のために斬魄刀を霊力で作り上げている。
狂気の沙汰だ。
それにきっと、彼女は
「本気ではなかったな?」
少し、忌々しそうに。
血溜まりの中で倒れたままの藍染が、ぽそりと呟いた。
「本気ですよ。奥の手を使わない状態で、ですけど」
「私は使うに値しなかったというのか?」
「いえ。使ったあと動けなくなるので『使ってはいけない』と約束してるんです。」
誰と、とは言わない。言う必要もないだろう。
名無しがここまで律儀に約束を守る相手となれば、ただ一人しかいないのだから。
「本当は、貴方に手出しなんてするつもりもなかった。いくら現状を引っ掻き回されても静観するつもりでした。
――けど、貴方は私の逆鱗に触れた。『浦原さんに罪を被せる』ことは、絶対に見過ごすことも許すことも出来ない。」
一度目は止めることが出来なかった。
だからこそ、二度目は、ない。
それは名無しにとって何を差し置いても許し難く、阻止しなければいけないことだった。
彼が二度も居場所を奪われることは、あってはならないのだ。
「そんなに、大事なのか」
藍染の独白に近いような呟き。
それを至近距離にいた名無しが聞き逃すはずもなく。
「当たり前じゃないですか。」
さも当然と言わんばかりに即答する。
例え世界と天秤に掛けたところで、その答えは変わることがないだろう。
一点の曇りもない返答に、藍染は呆れたように薄く笑みを浮かべるのだった。
「いやぁ、そんなにキッパリ言われたら照れますねぇ」
場にそぐわない、のんびりした声。
浦原のものだが『浦原』ではない。
風に靡く黒い羽織。
杖に擬態した斬魄刀を帯刀し、生成色と千歳緑の縞模様の帽子。
見間違えるはずもない。
「やぁやぁ。お迎えに上がりましたよ、名無しサン。」