追憶の星
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「温泉っス!名無しサン、温泉っスよ!」
「やめといた方がいいですよ。それ、素手で触ったら頭がリーゼントになりますから。」
「ゴラァ!誰が素敵なリーゼントだァ!」
「褒めてないし、うるさいです。やかましいのはししおどしだけで十分ですよ」
ここは麒麟殿。
麒麟寺天示郎が霊王から与えられた零番離殿だ。
彼の別名『泉湯鬼』の名の通り、ここには滾々と湯が湧き出る場所だ。
追憶の星#22
「はー、これボクの遊び場にも欲しいっスねぇ。」
パシャパシャと手首まで『白骨地獄』に入れては『血の池地獄』に漬け直す浦原。
古い霊力が出て、新しい霊力に入れ替わる名湯に感銘を受けつつ、珍しく目をキラキラと輝かせていた。
「おう。真似して作るなら好きにしろ。何せこの湯は最高だからな。」
「…この名前はどうにかならなかったんですか?」
あまりにもおどろおどろしい『名湯』の名前に、ほとほと呆れる名無し。
誰もこんな湯、効能はともかく入りたいと思うわけがない。生臭いにも程がある。
ちなみにこの湯の名前について、将来黒崎一護も苦言を申し立てるのだが――それは百年以上先の話だ。
「浦原さん。気が済んだなら早く次の場所に行きますよ。むしろ今回の目的はそれなんですから。」
「オイオイ。俺は和尚から『丁重にもてなせ』って言われてるんだぞ?湯に浸からずお暇しちまうのかよ」
「ですって。名無しサン。混浴っスよ?」
「絶対に入りません。二重の意味で!」
わくわくと胸を躍らせる浦原の腕を引いて、湯殿の外へ真っ直ぐ歩き出す名無し。
じとりと麒麟寺に向ける視線は、実に冷ややかである。
「そもそも私、零番隊なんてこれっっっぽっちも信用してませんから。そんな連中の前で無防備になるほど馬鹿じゃないんで。」
ピシャリと言い放ち、苛立ちを含め足を踏み鳴らす。
ぱっくりと開いた空間に身を滑らせて「あぁ!まだ湯のサンプル採取してないっス!」と騒ぐ男を連れた少女は、消えるように姿を眩ませた。
「やれやれ。随分と嫌われてるみたいだが……未来の俺らはなにをやらかしたのやら。」
***
「浅打に戻った斬魄刀か!HAHAHA!そいつはお手上げサ!しかも持ち主は既に死んでるってなると〜〜〜?High,ちゃんボクにもインポッシブー!!」
「よし。じゃあこんなボロ屋には用はありません。戻りましょう、浦原さん。」
「Hey!Hey,Hey!名無しチャン!ステイステイ!」
鳳凰殿。『刀神』二枚屋王悦。
全ての斬魄刀の原型である『浅打』を作っている人物。
パーマにダウン、サングラスに刈り上げ。
見た目は完全にラッパーのそれだが、腕は確かな男――のはずなのだが。
魂の抜けた斬魄刀の能力解析は、やはりここでも不可能らしい。
それが分かると即座に、何事もなく立ち上がる名無し。
浦原もここでは特にめぼしいものはないらしく、少し残念そうに追随しようとする。
「同じ『霊王サマ』の欠片を所持した能力者なら、名無しチャンの斬魄刀調べたら分かるかもしれないんDA。ちょいとちゃんボクに見せて欲しいなPlease show me!」
「寝言は寝て言ってください。貴方に渡すくらいなら分からずじまいになった方がマシに決まっているでしょう?」
腰に据えていた天狼に手を伸ばそうとした二枚屋の手を、容赦なく振り払う名無し。
得体の知れない連中に渡すわけがない。
まなこ和尚をはじめ、零番隊は未だに真意が汲み取れない相手なのだから。
「瀞霊廷に戻りますよ、浦原さん。」
「おや?あの和尚のトコロはいいンっスか?」
「絶対行きません。」
「なんじゃ、来ぬのか。」
ぬっと背後から現れるのは兵主部だ。
いつの間にいたのだろう。……いや、気配を完全に消すことくらいこの男にとっては朝飯前なのだろうが。
「行きませんよ。そのまま『いざという時のスペア』にされそうですし。」
「ふはは!そうじゃの、それがいい。儂もまだ青い果実を摘み取る趣味はないからのぅ」
たくわえた髭を撫でながら、達磨のような男は快活に笑う。
「霊王様にもご挨拶はせぬのか?」
「しても無駄でしょう。」
ピシャリと言い放つ名無し。
四肢をもがれ、死んでいるのか生きているのかすら怪しい状態なのは、当の本人から聞いている。
生き物の『尊厳』すら奪われたかの王に、かける言葉など見つかるはずもない。
「お主の半身のようなものであろうに。冷たいのぅ」
「言い方を変えましょうか?こんな物騒な所、早くお暇したいんですよ。」
「全く、我らも嫌われたものじゃの。」
「…綱彌代家の所業は許し難いですが、それを見過ごした零番隊も同罪ですから。」
霊王の守護が零番隊の使命だなんて、冗談も甚だしい。
『霊王というシステムで成り立っている尸魂界と、その楔である《霊王》という肩書きのモノを守る』というのが正しいだろう。
つまり霊王が誰がなろうと、何者であろうと構わない。
「その件に関しては…ふむ、その通りじゃがの。しかしその結末を、恐らく霊王様は視ておられたじゃろう。ならば我らが邪魔だてするまでもない」
そう。こういう連中なのだ。
手足をもがれる前に『彼』が抱いた、死神に対する恐怖も、行き場所がなくて世界を飛び越えてまで逃げた『彼』の気持ちも、汲み取ろうとすらしない。
血が通っているかすら疑わしい程に、ヒトの心を持ち合わせていない。
「……貴方の、そういう所が嫌いなんですよ。兵主部一兵衛。」
名無しの吐き捨てるような一言に、まなこ和尚は満足気に笑うだけだった。
「やめといた方がいいですよ。それ、素手で触ったら頭がリーゼントになりますから。」
「ゴラァ!誰が素敵なリーゼントだァ!」
「褒めてないし、うるさいです。やかましいのはししおどしだけで十分ですよ」
ここは麒麟殿。
麒麟寺天示郎が霊王から与えられた零番離殿だ。
彼の別名『泉湯鬼』の名の通り、ここには滾々と湯が湧き出る場所だ。
追憶の星#22
「はー、これボクの遊び場にも欲しいっスねぇ。」
パシャパシャと手首まで『白骨地獄』に入れては『血の池地獄』に漬け直す浦原。
古い霊力が出て、新しい霊力に入れ替わる名湯に感銘を受けつつ、珍しく目をキラキラと輝かせていた。
「おう。真似して作るなら好きにしろ。何せこの湯は最高だからな。」
「…この名前はどうにかならなかったんですか?」
あまりにもおどろおどろしい『名湯』の名前に、ほとほと呆れる名無し。
誰もこんな湯、効能はともかく入りたいと思うわけがない。生臭いにも程がある。
ちなみにこの湯の名前について、将来黒崎一護も苦言を申し立てるのだが――それは百年以上先の話だ。
「浦原さん。気が済んだなら早く次の場所に行きますよ。むしろ今回の目的はそれなんですから。」
「オイオイ。俺は和尚から『丁重にもてなせ』って言われてるんだぞ?湯に浸からずお暇しちまうのかよ」
「ですって。名無しサン。混浴っスよ?」
「絶対に入りません。二重の意味で!」
わくわくと胸を躍らせる浦原の腕を引いて、湯殿の外へ真っ直ぐ歩き出す名無し。
じとりと麒麟寺に向ける視線は、実に冷ややかである。
「そもそも私、零番隊なんてこれっっっぽっちも信用してませんから。そんな連中の前で無防備になるほど馬鹿じゃないんで。」
ピシャリと言い放ち、苛立ちを含め足を踏み鳴らす。
ぱっくりと開いた空間に身を滑らせて「あぁ!まだ湯のサンプル採取してないっス!」と騒ぐ男を連れた少女は、消えるように姿を眩ませた。
「やれやれ。随分と嫌われてるみたいだが……未来の俺らはなにをやらかしたのやら。」
***
「浅打に戻った斬魄刀か!HAHAHA!そいつはお手上げサ!しかも持ち主は既に死んでるってなると〜〜〜?High,ちゃんボクにもインポッシブー!!」
「よし。じゃあこんなボロ屋には用はありません。戻りましょう、浦原さん。」
「Hey!Hey,Hey!名無しチャン!ステイステイ!」
鳳凰殿。『刀神』二枚屋王悦。
全ての斬魄刀の原型である『浅打』を作っている人物。
パーマにダウン、サングラスに刈り上げ。
見た目は完全にラッパーのそれだが、腕は確かな男――のはずなのだが。
魂の抜けた斬魄刀の能力解析は、やはりここでも不可能らしい。
それが分かると即座に、何事もなく立ち上がる名無し。
浦原もここでは特にめぼしいものはないらしく、少し残念そうに追随しようとする。
「同じ『霊王サマ』の欠片を所持した能力者なら、名無しチャンの斬魄刀調べたら分かるかもしれないんDA。ちょいとちゃんボクに見せて欲しいなPlease show me!」
「寝言は寝て言ってください。貴方に渡すくらいなら分からずじまいになった方がマシに決まっているでしょう?」
腰に据えていた天狼に手を伸ばそうとした二枚屋の手を、容赦なく振り払う名無し。
得体の知れない連中に渡すわけがない。
まなこ和尚をはじめ、零番隊は未だに真意が汲み取れない相手なのだから。
「瀞霊廷に戻りますよ、浦原さん。」
「おや?あの和尚のトコロはいいンっスか?」
「絶対行きません。」
「なんじゃ、来ぬのか。」
ぬっと背後から現れるのは兵主部だ。
いつの間にいたのだろう。……いや、気配を完全に消すことくらいこの男にとっては朝飯前なのだろうが。
「行きませんよ。そのまま『いざという時のスペア』にされそうですし。」
「ふはは!そうじゃの、それがいい。儂もまだ青い果実を摘み取る趣味はないからのぅ」
たくわえた髭を撫でながら、達磨のような男は快活に笑う。
「霊王様にもご挨拶はせぬのか?」
「しても無駄でしょう。」
ピシャリと言い放つ名無し。
四肢をもがれ、死んでいるのか生きているのかすら怪しい状態なのは、当の本人から聞いている。
生き物の『尊厳』すら奪われたかの王に、かける言葉など見つかるはずもない。
「お主の半身のようなものであろうに。冷たいのぅ」
「言い方を変えましょうか?こんな物騒な所、早くお暇したいんですよ。」
「全く、我らも嫌われたものじゃの。」
「…綱彌代家の所業は許し難いですが、それを見過ごした零番隊も同罪ですから。」
霊王の守護が零番隊の使命だなんて、冗談も甚だしい。
『霊王というシステムで成り立っている尸魂界と、その楔である《霊王》という肩書きのモノを守る』というのが正しいだろう。
つまり霊王が誰がなろうと、何者であろうと構わない。
「その件に関しては…ふむ、その通りじゃがの。しかしその結末を、恐らく霊王様は視ておられたじゃろう。ならば我らが邪魔だてするまでもない」
そう。こういう連中なのだ。
手足をもがれる前に『彼』が抱いた、死神に対する恐怖も、行き場所がなくて世界を飛び越えてまで逃げた『彼』の気持ちも、汲み取ろうとすらしない。
血が通っているかすら疑わしい程に、ヒトの心を持ち合わせていない。
「……貴方の、そういう所が嫌いなんですよ。兵主部一兵衛。」
名無しの吐き捨てるような一言に、まなこ和尚は満足気に笑うだけだった。