追憶の星
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――大霊書回廊。
本来ここは、一般の死神が立ち入ることすら禁じられている場所である。
集められたデータは、膨大だ。
しかしお目当てのめぼしい資料はなく、分厚い和綴じの本を開けては閉じる行為を繰り返す。
ここ数百年分の新しい情報は端末を使って浦原が。名無しはというと電子化されていない古い時代の書物を漁っていた。
正直、目が痛い。
達筆すぎる筆文字はとても素晴らしいことは分かるのだが、現代人の名無しからすれば…言い方が悪いが『蚯蚓がのたくった字』にしか見えないのだ。
そこで天狼を実体化させ、一緒に資料を物色しているのが――まぁ、お目当てのものが出てくるはずもなく。
張り巡らされた『網』にかかる、見回りの死神の霊圧。
素早く書物を棚に戻し、名無しは浦原の元へ駆けた。
「浦原さん、」
「ちぇ、もうっスか。」
何度目かの隠遁。
浦原の腕を取り、踵を打ち鳴らせば大きく口を開ける『空間の裂け目』。
「いやぁ、これ便利っスよね。」
「こんな風に悪用するとは思ってもみませんでしたけど…」
「違いますよ、名無しサン。こういうのは有効活用って言うんっス。」
楽しそうに笑う浦原を横目で見て、内心『よく言うよ』と呆れる名無しであった。
追憶の星#20
「やっぱ禁術に関しては殆ど資料が残っていませんね。」
「まぁそりゃそうでしょう。霊王の四肢を刻んで力を削いだのは綱彌代家っスから。霊王の欠片に関して資料を残すどころか、隠蔽・抹消するのが普通っスよね」
映像庁と大霊書回廊を司る、四大貴族の一派。
その一族の背景と、『綱彌代時灘』を生み出したというだけで、名無しにとっては印象が最悪の貴族様なのだが……。
「浦原さん、ご存知だったんですか?」
「いやぁ。カマをかけただけっスよ」
ヘラヘラと笑う浦原に、つい名無しは舌打ちを零してしまう。
……先日『打ち解けてから』というものの、彼は容赦なく根掘り葉掘り聞くようになった。
本人曰く『記憶置換で忘れるんでいいでしょ?』と宣っているが、果たして本当に忘れてくれるのだろうか?
「まぁ夜一サンの屋敷にお世話になっていた時代に、ちょーっとだけ四楓院家の書斎を拝見したんっスよ。その時立てた仮説が証明されてスッキリしました」
「それ拝見じゃなくて『盗み見』って言うんですよ。」
妙な壁が無くなったのはいい事なのだろうが、同時に遠慮もなくなってしまったものだから、名無しとしては頭が痛い話である。
「情報があるとすれば霊王宮なんっスけどねぇ」
「あそこは鍵がないと入れませんよ。」
なるべく立ち入りたくない場所だ。
……浦原は『協力』云々以前に、興味本位で行ってみたい場所なのだろうが。
「名無しサンなら入れるじゃないっスか。」
質問ではなく、確信で問うてくる。
そういう勘のいいところが、この男のいいところでもあり、悪いところだ。
「嫌ですよ。あそこ、頭いかれてるのばっかりなんですもん。」
「そこをなんとか〜」
「浦原さんが行ってみたいだけじゃないですか。絶対ダメです。」
茶を啜り、名無しがピシャリと断りを入れる。
どうもあそこの面々は――特に、まなこ和尚は苦手だ。
命は等しく『霊王のためにある』と本気で考えてそうな連中だ。物騒の一言に尽きる。
『霊王本人』曰くなるべくしてなった。なりたいわけではなかった。
世界を作るために、ならなくてはいけなかった。ただそれだけだというのに。
……まぁ、奉られた後に四肢をもぎ取られたのは予想外だったらしいが。
「それより刻志が遺した斬魄刀の解析の方が、情報としては有力なんじゃないですか?」
「あ。あー、あれっスか。」
持ち主が死んでしまったため、斬魄刀は誰かに呼ばれることは永劫ないだろう。
ただの浅打と殆ど変わらなくなってしまったソレは、正直調べたところで立派な手掛かりになるとは言えず――
「まぁ…浅打を作ってるヒトにきけば手がかりはあるかもしれませんけど。」
「……つまり、霊王宮に行けと?」
頭が痛い。
やはり残された選択肢はそう多くはないらしい。
本来ここは、一般の死神が立ち入ることすら禁じられている場所である。
集められたデータは、膨大だ。
しかしお目当てのめぼしい資料はなく、分厚い和綴じの本を開けては閉じる行為を繰り返す。
ここ数百年分の新しい情報は端末を使って浦原が。名無しはというと電子化されていない古い時代の書物を漁っていた。
正直、目が痛い。
達筆すぎる筆文字はとても素晴らしいことは分かるのだが、現代人の名無しからすれば…言い方が悪いが『蚯蚓がのたくった字』にしか見えないのだ。
そこで天狼を実体化させ、一緒に資料を物色しているのが――まぁ、お目当てのものが出てくるはずもなく。
張り巡らされた『網』にかかる、見回りの死神の霊圧。
素早く書物を棚に戻し、名無しは浦原の元へ駆けた。
「浦原さん、」
「ちぇ、もうっスか。」
何度目かの隠遁。
浦原の腕を取り、踵を打ち鳴らせば大きく口を開ける『空間の裂け目』。
「いやぁ、これ便利っスよね。」
「こんな風に悪用するとは思ってもみませんでしたけど…」
「違いますよ、名無しサン。こういうのは有効活用って言うんっス。」
楽しそうに笑う浦原を横目で見て、内心『よく言うよ』と呆れる名無しであった。
追憶の星#20
「やっぱ禁術に関しては殆ど資料が残っていませんね。」
「まぁそりゃそうでしょう。霊王の四肢を刻んで力を削いだのは綱彌代家っスから。霊王の欠片に関して資料を残すどころか、隠蔽・抹消するのが普通っスよね」
映像庁と大霊書回廊を司る、四大貴族の一派。
その一族の背景と、『綱彌代時灘』を生み出したというだけで、名無しにとっては印象が最悪の貴族様なのだが……。
「浦原さん、ご存知だったんですか?」
「いやぁ。カマをかけただけっスよ」
ヘラヘラと笑う浦原に、つい名無しは舌打ちを零してしまう。
……先日『打ち解けてから』というものの、彼は容赦なく根掘り葉掘り聞くようになった。
本人曰く『記憶置換で忘れるんでいいでしょ?』と宣っているが、果たして本当に忘れてくれるのだろうか?
「まぁ夜一サンの屋敷にお世話になっていた時代に、ちょーっとだけ四楓院家の書斎を拝見したんっスよ。その時立てた仮説が証明されてスッキリしました」
「それ拝見じゃなくて『盗み見』って言うんですよ。」
妙な壁が無くなったのはいい事なのだろうが、同時に遠慮もなくなってしまったものだから、名無しとしては頭が痛い話である。
「情報があるとすれば霊王宮なんっスけどねぇ」
「あそこは鍵がないと入れませんよ。」
なるべく立ち入りたくない場所だ。
……浦原は『協力』云々以前に、興味本位で行ってみたい場所なのだろうが。
「名無しサンなら入れるじゃないっスか。」
質問ではなく、確信で問うてくる。
そういう勘のいいところが、この男のいいところでもあり、悪いところだ。
「嫌ですよ。あそこ、頭いかれてるのばっかりなんですもん。」
「そこをなんとか〜」
「浦原さんが行ってみたいだけじゃないですか。絶対ダメです。」
茶を啜り、名無しがピシャリと断りを入れる。
どうもあそこの面々は――特に、まなこ和尚は苦手だ。
命は等しく『霊王のためにある』と本気で考えてそうな連中だ。物騒の一言に尽きる。
『霊王本人』曰くなるべくしてなった。なりたいわけではなかった。
世界を作るために、ならなくてはいけなかった。ただそれだけだというのに。
……まぁ、奉られた後に四肢をもぎ取られたのは予想外だったらしいが。
「それより刻志が遺した斬魄刀の解析の方が、情報としては有力なんじゃないですか?」
「あ。あー、あれっスか。」
持ち主が死んでしまったため、斬魄刀は誰かに呼ばれることは永劫ないだろう。
ただの浅打と殆ど変わらなくなってしまったソレは、正直調べたところで立派な手掛かりになるとは言えず――
「まぁ…浅打を作ってるヒトにきけば手がかりはあるかもしれませんけど。」
「……つまり、霊王宮に行けと?」
頭が痛い。
やはり残された選択肢はそう多くはないらしい。