追憶の星
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現世へ、急ぎ戻る。
浦原商店に帰れば「店長なら、焼き芋が食べたいって言ってふらりと出掛けたぞ」とジン太が答えた。
恐らく行先は商店街。
人混みをビルの上から見下ろし、霊圧を探ればそこに浦原の姿があった。
あっさり見つかったことに安堵し、名無しはほっと息をついた。
――しかし、その安心は一瞬で消え去る。
背後から浦原に近づく一人の影。
殺気は、ない。気配も一般人のそれに近い。
しかし黒い外套の姿は街中ではかなり異質だ。
名無しは写真と映像で見た人相の男がそこに立っていることに、顔を青ざめた。
刻志 玄隆の姿が、そこにあった。
ふらふらと浦原に近づく刻志。
斬魄刀の鞘は地面へ無造作に投げられ、浦原の身体が刺される瞬間。
「浦原さん!」
咄嗟に掴んだ刻志の肩。
しかし寸のところで脇差ほどの斬魄刀の切先は、浦原の腹部を掠る。
その瞬間、自由落下するような感覚と、目もくらむような光に包まれ――
刻志 玄隆と、彼の肩を咄嗟に掴んだ名無しの姿は、忽然と消えてしまった。
追想の星#02
岩をくり抜いた――否、洞窟を改造したような、と言った方がしっくりくるだろう。
そこは煉獄。
白い囚人服を着た『危険分子』がいる場所。
目を開けば、刻志の肩を掴んだままの名無しと、肩を掴まれた刻志がいた。
「この、……女!お前のせいで座標が『ズレた』じゃねぇか!」
おもむろに掴まれた胸倉。
人畜無害そうな、至って平凡な容姿の男は、青筋を立てながら喚き散らした。
「おやおや。何の騒ぎっスか?……あらら。帯刀した死神が二人。やだなぁ、不法侵入っスかねぇ…」
夜一サンにボクが怒られちゃうじゃないっスか。
怠そうに発せられる言葉、声。
それは聞き間違えるはずもない。
名無しは慌てて首をそちらに向けるが、それよりも刻志に突き飛ばされる方が早かった。
「死ね!浦原喜助!」
黒装束に身を包んだ男に向かって、振り下ろされる刃。
鈍色に光った刀身。風を斬る音が聞こえた。
「はいはい、と。」
――信じられるだろうか。
刻志の太刀筋は、悪くなかった。
多少焦りはあったものの、確実に人体の急所を狙った刃は、そのまま刺されば重傷は間逃れなかっただろう。
それを赤子の手を捻るように、投げ飛ばす浦原。
それも、素手で。
「っぐ、ぅ…!…っクソ!」
出直しだ。
そう言わんばかりに、蛆虫の巣の唯一の出入口に走る刻志。
それを逃がすわけには、いかなかった。
霊圧遮断外套を羽織られている状態では、一度姿を見失えば見つける事は容易ではないからだ。
「あっ!こら、待て!」
「待つのはキミっスよぉ。」
力強く引っ張られる手首。
組み伏せられた地面は固く、頭を勢いよく打ち付けられた。痛い。
「蛆虫の巣は帯刀禁止っスよ。
――というか、まぁ…不法侵入の時点で口封じが必要なんっスけどぉ」
淡々と上から降ってくる声は、やけに冷淡だ。
首を辛うじて回せば、死覇装のような装束を纏った青年。
意匠は似ているが、袖や袴の裾を絞っている服装は、どちらかと言うと『忍者』のそれだ。
隠密機動の、装束。
黒頭巾と口布で隠した表情は読み取れないが、唯一露わになっている目元は毎日見ているものだった。
…知っているものより、随分と冷ややかなものではあるけれど。
「痛たたたた!関節キマってます!事情を聞いてくださいってば、浦原さん!」
名無しはありったけの大きな声で、蛆虫の巣で叫ぶのであった。
浦原商店に帰れば「店長なら、焼き芋が食べたいって言ってふらりと出掛けたぞ」とジン太が答えた。
恐らく行先は商店街。
人混みをビルの上から見下ろし、霊圧を探ればそこに浦原の姿があった。
あっさり見つかったことに安堵し、名無しはほっと息をついた。
――しかし、その安心は一瞬で消え去る。
背後から浦原に近づく一人の影。
殺気は、ない。気配も一般人のそれに近い。
しかし黒い外套の姿は街中ではかなり異質だ。
名無しは写真と映像で見た人相の男がそこに立っていることに、顔を青ざめた。
刻志 玄隆の姿が、そこにあった。
ふらふらと浦原に近づく刻志。
斬魄刀の鞘は地面へ無造作に投げられ、浦原の身体が刺される瞬間。
「浦原さん!」
咄嗟に掴んだ刻志の肩。
しかし寸のところで脇差ほどの斬魄刀の切先は、浦原の腹部を掠る。
その瞬間、自由落下するような感覚と、目もくらむような光に包まれ――
刻志 玄隆と、彼の肩を咄嗟に掴んだ名無しの姿は、忽然と消えてしまった。
追想の星#02
岩をくり抜いた――否、洞窟を改造したような、と言った方がしっくりくるだろう。
そこは煉獄。
白い囚人服を着た『危険分子』がいる場所。
目を開けば、刻志の肩を掴んだままの名無しと、肩を掴まれた刻志がいた。
「この、……女!お前のせいで座標が『ズレた』じゃねぇか!」
おもむろに掴まれた胸倉。
人畜無害そうな、至って平凡な容姿の男は、青筋を立てながら喚き散らした。
「おやおや。何の騒ぎっスか?……あらら。帯刀した死神が二人。やだなぁ、不法侵入っスかねぇ…」
夜一サンにボクが怒られちゃうじゃないっスか。
怠そうに発せられる言葉、声。
それは聞き間違えるはずもない。
名無しは慌てて首をそちらに向けるが、それよりも刻志に突き飛ばされる方が早かった。
「死ね!浦原喜助!」
黒装束に身を包んだ男に向かって、振り下ろされる刃。
鈍色に光った刀身。風を斬る音が聞こえた。
「はいはい、と。」
――信じられるだろうか。
刻志の太刀筋は、悪くなかった。
多少焦りはあったものの、確実に人体の急所を狙った刃は、そのまま刺されば重傷は間逃れなかっただろう。
それを赤子の手を捻るように、投げ飛ばす浦原。
それも、素手で。
「っぐ、ぅ…!…っクソ!」
出直しだ。
そう言わんばかりに、蛆虫の巣の唯一の出入口に走る刻志。
それを逃がすわけには、いかなかった。
霊圧遮断外套を羽織られている状態では、一度姿を見失えば見つける事は容易ではないからだ。
「あっ!こら、待て!」
「待つのはキミっスよぉ。」
力強く引っ張られる手首。
組み伏せられた地面は固く、頭を勢いよく打ち付けられた。痛い。
「蛆虫の巣は帯刀禁止っスよ。
――というか、まぁ…不法侵入の時点で口封じが必要なんっスけどぉ」
淡々と上から降ってくる声は、やけに冷淡だ。
首を辛うじて回せば、死覇装のような装束を纏った青年。
意匠は似ているが、袖や袴の裾を絞っている服装は、どちらかと言うと『忍者』のそれだ。
隠密機動の、装束。
黒頭巾と口布で隠した表情は読み取れないが、唯一露わになっている目元は毎日見ているものだった。
…知っているものより、随分と冷ややかなものではあるけれど。
「痛たたたた!関節キマってます!事情を聞いてくださいってば、浦原さん!」
名無しはありったけの大きな声で、蛆虫の巣で叫ぶのであった。