追憶の星
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……刻志玄隆が、殺された?」
「昨晩のことじゃ。……残念ながら、映像庁の記録も残っておる。」
溜息をつきながら夜一が髪を掻き毟る。
その麗しい横顔は信じられないと言わんばかりに曇っており、美しい形の眉は気難しそうに寄せられていた。
「――容疑者は、喜助。二番隊三席、浦原喜助じゃ。」
追憶の星#16
夜一に付き従うようについて行けば、案内されたのは二番隊の隊首室だった。
来客用の上質なソファには山本元柳斎が腰を据えている。
「…未来からきた罪人を一目見ようと思ったのじゃが――ふむ。まさか浦原三席が手に掛けるとはの」
閉じられていた瞳を僅かに開けば、叱咤の色を浮かべた眼光がこちらを覗き見る。
正しくは、名無しの一歩前にいる夜一を。
「申し訳ない。三席は現在、牢に収監しておる。如何なる処断も――」
「話を遮ってすみません。ちょっといいですか?」
遠慮がちに、しかし怯えた様子は微塵も見せず、名無しが発言権を主張するため小さく挙手をする。
「浦原三席が犯行を行った証拠はあるんですか?」
「映像庁からの監視映像じゃ。昨晩、地下牢の犯行が映像で残っておる」
「それ、見せてもらっていいですか?」
じろりとこちらを見遣る山本の視線が少々痛いが、こればかりは仕方ない。
それこそ『浦原喜助、除隊』なんて、笑うに笑えない。蛆虫の巣行き確定である。
小型のモニターに映るのは、刻志玄隆の独房。
なんとか、身の潔白を晴らすための証拠を見つけなければ。
名無しは大きく息を吸い込んで「再生をお願いします」と声を振り絞った。
***
『随分荒れてますねぇ』
『浦原、喜助…!』
『ふむ。なるほど。貴方が刻志さんですか』
刻志が憎らしげに浦原の名前を吐き捨てる。
――彼には、浦原喜助に見えるのだろう。
きっと、名無しの横にいる二人も。
『過去に遡ることが出来る斬魄刀ですか。なるほど、空間転移や時間停止など…禁忌とされる鬼道によく似ている。』
スラリと抜かれる斬魄刀。
独房の必要最低限の灯りが、鋭い刃渡りを鈍く光らせる。
『……オイ、冗談だろ?俺を殺せば、あの女も元の時代に戻れなくなるんだぞ?』
『むしろそれが目的ですよ。――そう、貴方の魂魄にある『霊王の欠片』なんて、ただの副産物です。』
殺気石で出来た牢獄を、一刀両断する。
まるで木の葉を真っ二つにするように、中にいた男の胴体も――呆気なく、泣き別れにして。
断末魔さえ赦さない、慈悲なき一閃。
剣術のお手本のような袈裟斬りは、状況が状況でなければまさに流麗と言えるだろう。
『安心してください。ちゃんと貴方の『欠片』は、実験で有効に活用させていただきますから。』
斬魄刀にこびり付いた血を振り払い、彼は愉しそうに口角を釣り上げた。
『……すまないとは思ってますよ。そう、子供じみた言い訳をするなら――気が、変わったんですよ。黒崎名無しさん。』
***
「どこからどう見ても、浦原三席のようじゃが。」
考え込む名無しに対して、山本がワントーン低い声で問いかける。
……証拠は、ある。
それをどうやって説明するかが問題だ。
「この映像は浦原三席にはお見せしていないんですよね?」
「見せておらぬ。容疑がかかっておる、と説明した上で、牢に閉じ込めておるが?」
「なるほど。」
名無しはひとつ頷き、口角を小さく上げた。
「大丈夫です。浦原三席は無罪ですよ。今からそれを証明しましょう。」
「昨晩のことじゃ。……残念ながら、映像庁の記録も残っておる。」
溜息をつきながら夜一が髪を掻き毟る。
その麗しい横顔は信じられないと言わんばかりに曇っており、美しい形の眉は気難しそうに寄せられていた。
「――容疑者は、喜助。二番隊三席、浦原喜助じゃ。」
追憶の星#16
夜一に付き従うようについて行けば、案内されたのは二番隊の隊首室だった。
来客用の上質なソファには山本元柳斎が腰を据えている。
「…未来からきた罪人を一目見ようと思ったのじゃが――ふむ。まさか浦原三席が手に掛けるとはの」
閉じられていた瞳を僅かに開けば、叱咤の色を浮かべた眼光がこちらを覗き見る。
正しくは、名無しの一歩前にいる夜一を。
「申し訳ない。三席は現在、牢に収監しておる。如何なる処断も――」
「話を遮ってすみません。ちょっといいですか?」
遠慮がちに、しかし怯えた様子は微塵も見せず、名無しが発言権を主張するため小さく挙手をする。
「浦原三席が犯行を行った証拠はあるんですか?」
「映像庁からの監視映像じゃ。昨晩、地下牢の犯行が映像で残っておる」
「それ、見せてもらっていいですか?」
じろりとこちらを見遣る山本の視線が少々痛いが、こればかりは仕方ない。
それこそ『浦原喜助、除隊』なんて、笑うに笑えない。蛆虫の巣行き確定である。
小型のモニターに映るのは、刻志玄隆の独房。
なんとか、身の潔白を晴らすための証拠を見つけなければ。
名無しは大きく息を吸い込んで「再生をお願いします」と声を振り絞った。
***
『随分荒れてますねぇ』
『浦原、喜助…!』
『ふむ。なるほど。貴方が刻志さんですか』
刻志が憎らしげに浦原の名前を吐き捨てる。
――彼には、浦原喜助に見えるのだろう。
きっと、名無しの横にいる二人も。
『過去に遡ることが出来る斬魄刀ですか。なるほど、空間転移や時間停止など…禁忌とされる鬼道によく似ている。』
スラリと抜かれる斬魄刀。
独房の必要最低限の灯りが、鋭い刃渡りを鈍く光らせる。
『……オイ、冗談だろ?俺を殺せば、あの女も元の時代に戻れなくなるんだぞ?』
『むしろそれが目的ですよ。――そう、貴方の魂魄にある『霊王の欠片』なんて、ただの副産物です。』
殺気石で出来た牢獄を、一刀両断する。
まるで木の葉を真っ二つにするように、中にいた男の胴体も――呆気なく、泣き別れにして。
断末魔さえ赦さない、慈悲なき一閃。
剣術のお手本のような袈裟斬りは、状況が状況でなければまさに流麗と言えるだろう。
『安心してください。ちゃんと貴方の『欠片』は、実験で有効に活用させていただきますから。』
斬魄刀にこびり付いた血を振り払い、彼は愉しそうに口角を釣り上げた。
『……すまないとは思ってますよ。そう、子供じみた言い訳をするなら――気が、変わったんですよ。黒崎名無しさん。』
***
「どこからどう見ても、浦原三席のようじゃが。」
考え込む名無しに対して、山本がワントーン低い声で問いかける。
……証拠は、ある。
それをどうやって説明するかが問題だ。
「この映像は浦原三席にはお見せしていないんですよね?」
「見せておらぬ。容疑がかかっておる、と説明した上で、牢に閉じ込めておるが?」
「なるほど。」
名無しはひとつ頷き、口角を小さく上げた。
「大丈夫です。浦原三席は無罪ですよ。今からそれを証明しましょう。」