追憶の星
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「流魂街の住人の……魂魄消失、ですか?」
「そうっス。しかも多い少ないはあるものの、霊力がある魂魄が狙われている傾向があるようっス」
二番隊隊舎。
上座に夜一が座し、浦原が報告書片手に説明する。
「そこでボクと貴女で調査することになりました。」
「いいんですか?少人数…しかも三席が出るとすれば、これ機密任務では?」
名無しの予想は正しいようだ。
脇息へ凭れていた肘を置き直し、夜一は小さく頷いた。
「その通りじゃ。しかしお主は今は二番隊に所属しており、そして此奴のお目付け役じゃろう。
……それに、お主の『探し人』はまだ見つかっておらぬようじゃしな」
「確かに。怪しい事件は調べてみるに限りますね」
刻志玄隆の足取りは未だに掴めぬまま。
事件当時の情報を、もしかしたら握っているかもしれない映像庁は――この時代は、まだ綱彌代家が牛耳っている。アレにはなるべく関わらない方がいいだろう。
それに四大貴族――いや、この当時は五大貴族か――流魂街の映像記録を収集しているとは思えない。期待するだけ無駄骨だろう。
かといって技術開発局もまだ開設されていない時代だ。
霊圧探査のシステムを作ったのは浦原かマユリか知らないが、何にせよ如何に技術開発局が重要施設なのか身をもって思い知る。
こんなに不便だなんて予想していなかった。
「ではまず北流魂街から調査しましょう。」
浦原がバインダーを閉じ、顔を上げる。
その声に名無しは黙って頷いた。
追憶の星#09
「あとは南流魂街だけっスねぇ。」
調査を開始して数日後。
残るは南流魂街の一部の地区になった。
流魂街は、かなり広い。
こうして足を使って、虱潰しに調査すれば身をもって体感する。
「流石に南流魂街は敷地が広いですね…。ここは手分けして探しましょう。」
「そうっスね。では、半刻後にここに集まりましょ」
浦原は斬魄刀を握り直し、踵を返す。
黒い死覇装の、背中。
昔、隊首羽織をはためかせた背中をずっと眺めていたせいか、どうも今の彼の背中は見慣れない。
別人のようだ。しかし、あれは浦原喜助本人である。
「……調子狂うなぁ」
名無しはぽそりと独り言を呟き、集合場所から静かに離れた。
***
半刻後。
集合場所の楠の根元に名無しは座り込み、空をそっと見上げる。
どんよりと漂う、質量がありそうな黒雲。
今にも降り出しそうな空模様に思わず溜息が零れた。
(浦原さんは、まだみたい)
霊圧を探ってもこの近くにはいないようだ。
集合時刻は少し遅れるかもしれない。
そう、思った時だった。
頭上からの、殺気。
咄嗟に気の根元から離れれば、轟音と同時に巨木が真っ二つに張り裂けた。
まるで落雷が落ちたような惨状だ。
「クカッ、クカカカ」
耳障りな電子音のような声。
しかし霊圧はない。
けれど、目の前で牙を剥いているのは間違いなく――
(虚。…霊圧を探っても見つからなかった。それに、)
仮面が、剥がれかけている。
虚であって虚ではない。
しかしこれは、破面ではない。
「破面、もどき。」
独り言のように呟いた声を、目の前の虚は聴き逃しはしなかった。
「なんダ、小娘。オレの姿ガ見えてるっていうのカ?」
落雷を放った尻尾を撫でながら、目の前の虚が舌なめずりする。
言葉を発することから、かなりの魂魄を喰らった虚なのだろう。
……いや、そんなことより、
「バッチリ見えてますよ。」
「なんダ、あの死神。流魂街のヤツらと同じよウに見えるようにすルって言ったくセによォ」
死神。
流魂街の住人に見えるようにする。
破面もどきの、虚。
一見難解なパズルだが、これは名無しにとって身に覚えのある事柄だった。
導き出される答えは、単純明快。
「……凡そ、霊力のある魂魄を集めて実験に使う…といったところかな」
確信に近い予想。
思い浮かぶのは黒縁の眼鏡を掛けた、一見好青年の男。
「まぁいいカ。死神もそろそろ喰いタいと思ってタところダ。オレの血となリ、肉とナって…」
「なるわけないでしょ。」
振り上げた斬魄刀が、宙へ瞬く。
蒼鈍色の刀身が虚の左腕を地面へ切り伏せる。
響く断末魔。
それは霊圧探知無効など意味を成さない程の、轟音に近い雄叫び。
「っこの、クソガキ!」
「死なれたら困るもの。手加減とか得意じゃないから、精々死なないように頑張ってくださいね」
「そうっス。しかも多い少ないはあるものの、霊力がある魂魄が狙われている傾向があるようっス」
二番隊隊舎。
上座に夜一が座し、浦原が報告書片手に説明する。
「そこでボクと貴女で調査することになりました。」
「いいんですか?少人数…しかも三席が出るとすれば、これ機密任務では?」
名無しの予想は正しいようだ。
脇息へ凭れていた肘を置き直し、夜一は小さく頷いた。
「その通りじゃ。しかしお主は今は二番隊に所属しており、そして此奴のお目付け役じゃろう。
……それに、お主の『探し人』はまだ見つかっておらぬようじゃしな」
「確かに。怪しい事件は調べてみるに限りますね」
刻志玄隆の足取りは未だに掴めぬまま。
事件当時の情報を、もしかしたら握っているかもしれない映像庁は――この時代は、まだ綱彌代家が牛耳っている。アレにはなるべく関わらない方がいいだろう。
それに四大貴族――いや、この当時は五大貴族か――流魂街の映像記録を収集しているとは思えない。期待するだけ無駄骨だろう。
かといって技術開発局もまだ開設されていない時代だ。
霊圧探査のシステムを作ったのは浦原かマユリか知らないが、何にせよ如何に技術開発局が重要施設なのか身をもって思い知る。
こんなに不便だなんて予想していなかった。
「ではまず北流魂街から調査しましょう。」
浦原がバインダーを閉じ、顔を上げる。
その声に名無しは黙って頷いた。
追憶の星#09
「あとは南流魂街だけっスねぇ。」
調査を開始して数日後。
残るは南流魂街の一部の地区になった。
流魂街は、かなり広い。
こうして足を使って、虱潰しに調査すれば身をもって体感する。
「流石に南流魂街は敷地が広いですね…。ここは手分けして探しましょう。」
「そうっスね。では、半刻後にここに集まりましょ」
浦原は斬魄刀を握り直し、踵を返す。
黒い死覇装の、背中。
昔、隊首羽織をはためかせた背中をずっと眺めていたせいか、どうも今の彼の背中は見慣れない。
別人のようだ。しかし、あれは浦原喜助本人である。
「……調子狂うなぁ」
名無しはぽそりと独り言を呟き、集合場所から静かに離れた。
***
半刻後。
集合場所の楠の根元に名無しは座り込み、空をそっと見上げる。
どんよりと漂う、質量がありそうな黒雲。
今にも降り出しそうな空模様に思わず溜息が零れた。
(浦原さんは、まだみたい)
霊圧を探ってもこの近くにはいないようだ。
集合時刻は少し遅れるかもしれない。
そう、思った時だった。
頭上からの、殺気。
咄嗟に気の根元から離れれば、轟音と同時に巨木が真っ二つに張り裂けた。
まるで落雷が落ちたような惨状だ。
「クカッ、クカカカ」
耳障りな電子音のような声。
しかし霊圧はない。
けれど、目の前で牙を剥いているのは間違いなく――
(虚。…霊圧を探っても見つからなかった。それに、)
仮面が、剥がれかけている。
虚であって虚ではない。
しかしこれは、破面ではない。
「破面、もどき。」
独り言のように呟いた声を、目の前の虚は聴き逃しはしなかった。
「なんダ、小娘。オレの姿ガ見えてるっていうのカ?」
落雷を放った尻尾を撫でながら、目の前の虚が舌なめずりする。
言葉を発することから、かなりの魂魄を喰らった虚なのだろう。
……いや、そんなことより、
「バッチリ見えてますよ。」
「なんダ、あの死神。流魂街のヤツらと同じよウに見えるようにすルって言ったくセによォ」
死神。
流魂街の住人に見えるようにする。
破面もどきの、虚。
一見難解なパズルだが、これは名無しにとって身に覚えのある事柄だった。
導き出される答えは、単純明快。
「……凡そ、霊力のある魂魄を集めて実験に使う…といったところかな」
確信に近い予想。
思い浮かぶのは黒縁の眼鏡を掛けた、一見好青年の男。
「まぁいいカ。死神もそろそろ喰いタいと思ってタところダ。オレの血となリ、肉とナって…」
「なるわけないでしょ。」
振り上げた斬魄刀が、宙へ瞬く。
蒼鈍色の刀身が虚の左腕を地面へ切り伏せる。
響く断末魔。
それは霊圧探知無効など意味を成さない程の、轟音に近い雄叫び。
「っこの、クソガキ!」
「死なれたら困るもの。手加減とか得意じゃないから、精々死なないように頑張ってくださいね」