店主と彼女の事情シリーズ
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現世の様子を見に来たのか、はたまたサボりに来たのか。
浦原商店で雑誌を片手に醤油煎餅を齧る女性が約一名。
「名無し、名無し。」
形のいい唇を楽しそうに釣り上げ、色気のある目元を柔らかく緩ませるのは乱菊だ。
読んでいた小説から視線を上げ、私は訝しげに少し目を細めてしまった。
大体、彼女がこんな風に笑う時はロクなことがないからだ。
「これ。」
店主と少女の事情#松本乱菊の場合
現世の他愛ない、女性向け雑誌のとあるコラム。
それを指させば、目の前の少女はくるりとした小動物のような目元を更に訝しげに細める。
「……『勉強ができる人やIQの高い人は報酬系の神経が発達しているため、性欲が強いといわれています。学校で優秀なあの子は実はとってもえっちなのかも。』…って、なんですか、これ。」
「七緒が見たら顔から火を噴きそうな記事だと思わない?」
同じ副隊長である、生真面目委員長を形にしたような同僚。
この記事を見せればさぞかし京楽総隊長と七緒はそれぞれ面白い反応を見せるのだろう。
…次の女性死神協会の会合か、飲み会の時の話のネタにしようかしら?
名無しも想像したのか「あんまり七緒さんおちょくると後が怖いですよ、もう」と困ったように肩を竦めている。
勿論、そこの見極めは心得てるわ。
というか、
「ま、肩書きで言えば名無しも充分スケベなんでしょうけど」
「ぶっ!」
彼女がお茶を飲んだ瞬間を見計らって、わざと爆弾発言を落としてみる。
…いやぁ、いいわ。この子。思った通りのリアクションしてくれるんだもの。
口先だけ「大丈夫?」と声を掛けながら、噎せる名無しの背中を優しく擦る。
あぁ、我ながらなんて白々しいのかしら。
でもほら。一護並に面白いんだもの。
これだからこの子達をからかうのをやめられないわ。
「けほ、げほっ、…な、何でですか!?」
「だってぇ。霊術院を半年でパスした秀才じゃない」
一度その道を通ったからよく分かる。
いくら『下地』が出来ていたとはいえ、新しく学ぶ量・身につけることは膨大だ。
スタートラインが他の誰よりも抜きん出ており、生きていた頃に培った技量があったとしても、並大抵の努力でそれを短縮することは困難を極める。
(見えないところでの努力家は、やっぱり凄いわね)
かつての悪役ぶった幼馴染と、神童といわれている己の隊長。
愛おしいと感じると同時に、何よりも尊敬に値する。
勿論、目の前の彼女も例外ではない。
まぁ、愛しさ余ってついついからかってしまうのはご愛嬌ということで。
「…お色気撒き散らしている乱菊さんに言われても説得力が。」
「だって服が窮屈なんだもの。」
Vネックのセーターから見える谷間に視線を落としながら名無しは粛々と口元を拭う。
まぁいいじゃない、減るものじゃあるまいし。
「おや?賑やかと思えば。松本副隊長、サボりっスかぁ?」
いつものストライプ模様の帽子はどこへいったのやら。
欠伸を噛み殺しながら奥の間からのっそり出てきたのは、浦原さんだった。
元・十二番隊隊長。
技術開発局創設者にして初代局長。
…あれ?
……これはもしかして、
「ねぇ、名無し。意外と雑誌の小話も的を射てるわね?」
「乱菊さん。同じこと考えてしまったのでこれ以上何も言わないでください。」
頭が痛い・と言わんばかりに眉間を押さえる名無し。
名実共に『天才』と『スケベ』が大々的に有名な死神もそういないだろう。
雑誌で書かれていた典型的なパターンの男が、そういえば彼女の側にいるじゃないか。
「なんの話っスか?」
「浦原さん、いいからあっちに行っててくモガッ!」
「浦原さん、ほらほら。意外と雑誌のコラムも当たってるかもしれませんよ?」
早口で捲し立てる名無しの口元を手で押さえ、片手で雑誌を浦原さんに手渡す。
抗議しようと名無しが暴れるが、小柄な彼女の体を抱き竦めるのは簡単だった。
あ。石鹸のいい匂い。
雑誌を眺め「なるほど、一理あるかもしれないっスねぇ。ね、名無しサン?」と楽しそうに笑う浦原さん。
口を塞いでいた手を離せば「なんで私に振るんですか!鏡を見てから言ってもらえません!?」とキャンキャン吠える名無し。
あー。見てて飽きないわ、ホント。
「じゃあ、私はそろそろ尸魂界に帰るとするわ。あんまサボってると隊長に怒られちゃいそだしぃ」
「ちょっと、乱菊さん!?」
「はいはい~。日番谷隊長に宜しくお伝えください~」
囁かな火種を置き土産に、私は地獄蝶を一匹ふわりと解き放つ。
本当、隊長といい名無しといい。私の周りにはいっぱい楽しい子がいるから飽きないわ。
「じゃあ名無しサン、ここは真偽を確かめた上で、雑誌に意見書でも送りましょっか?」
「なんで!昼間から!そうなるんですか!」
穿界門が閉じる直前、「乱菊さん次あったら覚えといてくださいよ!」と聞こえたような気がしたが……
うん、忘れることにしましょ。
浦原商店で雑誌を片手に醤油煎餅を齧る女性が約一名。
「名無し、名無し。」
形のいい唇を楽しそうに釣り上げ、色気のある目元を柔らかく緩ませるのは乱菊だ。
読んでいた小説から視線を上げ、私は訝しげに少し目を細めてしまった。
大体、彼女がこんな風に笑う時はロクなことがないからだ。
「これ。」
店主と少女の事情#松本乱菊の場合
現世の他愛ない、女性向け雑誌のとあるコラム。
それを指させば、目の前の少女はくるりとした小動物のような目元を更に訝しげに細める。
「……『勉強ができる人やIQの高い人は報酬系の神経が発達しているため、性欲が強いといわれています。学校で優秀なあの子は実はとってもえっちなのかも。』…って、なんですか、これ。」
「七緒が見たら顔から火を噴きそうな記事だと思わない?」
同じ副隊長である、生真面目委員長を形にしたような同僚。
この記事を見せればさぞかし京楽総隊長と七緒はそれぞれ面白い反応を見せるのだろう。
…次の女性死神協会の会合か、飲み会の時の話のネタにしようかしら?
名無しも想像したのか「あんまり七緒さんおちょくると後が怖いですよ、もう」と困ったように肩を竦めている。
勿論、そこの見極めは心得てるわ。
というか、
「ま、肩書きで言えば名無しも充分スケベなんでしょうけど」
「ぶっ!」
彼女がお茶を飲んだ瞬間を見計らって、わざと爆弾発言を落としてみる。
…いやぁ、いいわ。この子。思った通りのリアクションしてくれるんだもの。
口先だけ「大丈夫?」と声を掛けながら、噎せる名無しの背中を優しく擦る。
あぁ、我ながらなんて白々しいのかしら。
でもほら。一護並に面白いんだもの。
これだからこの子達をからかうのをやめられないわ。
「けほ、げほっ、…な、何でですか!?」
「だってぇ。霊術院を半年でパスした秀才じゃない」
一度その道を通ったからよく分かる。
いくら『下地』が出来ていたとはいえ、新しく学ぶ量・身につけることは膨大だ。
スタートラインが他の誰よりも抜きん出ており、生きていた頃に培った技量があったとしても、並大抵の努力でそれを短縮することは困難を極める。
(見えないところでの努力家は、やっぱり凄いわね)
かつての悪役ぶった幼馴染と、神童といわれている己の隊長。
愛おしいと感じると同時に、何よりも尊敬に値する。
勿論、目の前の彼女も例外ではない。
まぁ、愛しさ余ってついついからかってしまうのはご愛嬌ということで。
「…お色気撒き散らしている乱菊さんに言われても説得力が。」
「だって服が窮屈なんだもの。」
Vネックのセーターから見える谷間に視線を落としながら名無しは粛々と口元を拭う。
まぁいいじゃない、減るものじゃあるまいし。
「おや?賑やかと思えば。松本副隊長、サボりっスかぁ?」
いつものストライプ模様の帽子はどこへいったのやら。
欠伸を噛み殺しながら奥の間からのっそり出てきたのは、浦原さんだった。
元・十二番隊隊長。
技術開発局創設者にして初代局長。
…あれ?
……これはもしかして、
「ねぇ、名無し。意外と雑誌の小話も的を射てるわね?」
「乱菊さん。同じこと考えてしまったのでこれ以上何も言わないでください。」
頭が痛い・と言わんばかりに眉間を押さえる名無し。
名実共に『天才』と『スケベ』が大々的に有名な死神もそういないだろう。
雑誌で書かれていた典型的なパターンの男が、そういえば彼女の側にいるじゃないか。
「なんの話っスか?」
「浦原さん、いいからあっちに行っててくモガッ!」
「浦原さん、ほらほら。意外と雑誌のコラムも当たってるかもしれませんよ?」
早口で捲し立てる名無しの口元を手で押さえ、片手で雑誌を浦原さんに手渡す。
抗議しようと名無しが暴れるが、小柄な彼女の体を抱き竦めるのは簡単だった。
あ。石鹸のいい匂い。
雑誌を眺め「なるほど、一理あるかもしれないっスねぇ。ね、名無しサン?」と楽しそうに笑う浦原さん。
口を塞いでいた手を離せば「なんで私に振るんですか!鏡を見てから言ってもらえません!?」とキャンキャン吠える名無し。
あー。見てて飽きないわ、ホント。
「じゃあ、私はそろそろ尸魂界に帰るとするわ。あんまサボってると隊長に怒られちゃいそだしぃ」
「ちょっと、乱菊さん!?」
「はいはい~。日番谷隊長に宜しくお伝えください~」
囁かな火種を置き土産に、私は地獄蝶を一匹ふわりと解き放つ。
本当、隊長といい名無しといい。私の周りにはいっぱい楽しい子がいるから飽きないわ。
「じゃあ名無しサン、ここは真偽を確かめた上で、雑誌に意見書でも送りましょっか?」
「なんで!昼間から!そうなるんですか!」
穿界門が閉じる直前、「乱菊さん次あったら覚えといてくださいよ!」と聞こえたような気がしたが……
うん、忘れることにしましょ。