店主と彼女の事情シリーズ
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葉月。
八月の異名。葉が紅葉して落ちていく故に、葉月…らしい。
が、それは旧暦の話だ。
今は夏真っ盛り。
正直、俺は夏が嫌いだ。
そして定期報告のため、尸魂界に戻ってきたコイツも。
「名無し。いい加減帰れ。」
「暑いんですもん。現世の最高気温が何度だと思ってるんですか。41度ですよ、41。」
いつもは松本がダラダラとサボる時に居座っているソファで、今日は名無しが溶けている。
夏が嫌いなのはどうやら名無しも同じらしい。
「十二番隊で涼めばいいだろ」
「あそこ機械だらけで涼しいけど、暑いんですもん。」
機械の排熱だろう。
十二番隊に何度も行ったことはあるが、確かにあそこは涼しいが暑い。
「浦原喜助はどうした。ついてきていただろう」
「浦原さんは阿近さんと楽しそうに話しはじめたので、放っておきました」
話が長くなると踏んだのだろう。
まぁ、気持ちは分かる。
拗ねたようにゴロリと寝返りをうつ名無し。
他の隊だぞ、ここは。しかも隊首室。
くつろぎすぎだろう。
「名無し、アンタ夏の間ウチの隊の子になっちゃいなさいよぉ」
「乱菊さん。」
「オイ、松本。どこに行ってやがった」
がさり・と耳障りなビニール袋の音を立てて、松本が隊首室に入ってくる。
っていうかお前は仕事をしろ。仕事を。
「現世で頑張ってる名無しにご褒美を買ってきてたんですよ、隊長。ほら私、副隊長ですし?」
「副隊長らしく仕事すれば問題ないんだがな。」
「はい、隊長の分ですよ〜」
聞いちゃいねぇ。
松本がビニール袋から取り出したのは、鮮やかな浅葱色をした瓶。ラムネだ。
「わぁ、乱菊さん!ありがとうございます!」
「いいえ〜」
ソファで涼んでいた名無しが起き上がり、嬉々とした表情で栓を押し込む。
ガキみたいな顔をしてはしゃぐ名無しを見て、思わずため息が零れた。
「あ、名無しサン。やっぱりここにいたんっスか」
「あら。浦原さん」
松本が軽く片手を上げて挨拶をすれば「どぉも〜」とこれまた軽い返事で浦原喜助が返した。
件の名無しはちびちびとラムネを飲んでいる。浦原に目も向けやしない。
「ほら、帰るっスよ。」
「暑いから嫌です。夏の間はここの子になります。」
「確かに十番隊は涼しいっスけど。そんなこと言ったら涅隊長が泣くっスよぉ」
いや、泣きはしねーだろ。
十番隊に嫌がらせはされるかもしれないが。
そこまで暑いのが嫌なのか。
俺の知っている名無しはそれなりに聞き分けもよく、年の割には大人びた印象だったが、どうやら見当違いのようだった。
まるで駄々を捏ねる子供と、言い聞かせようとしている親のようだ。
まぁ、気温が41度なのはどうかと思うが。俺も今は現世に死んでも行きたくない。
「帰ったらかき氷しましょ。あと今日の夕飯は鉄裁サン特製の棒々鶏らしいっスよ」
「かき氷は、ふわふわのやつですか?」
「そうっス。ふわふわのやつっス。」
「じゃあ…帰ります」と渋々立ち上がり、死覇装のシワを伸ばすように袴を軽くはたく名無し。
…なんだ、帰るのか。
「じゃあ日番谷隊長、松本副隊長。お邪魔しましたっス。」
「乱菊さん、ラムネありがとうございました!日番谷くん、また涼みに来ますね」
胡散臭くヘラヘラ笑う浦原喜助と、迎えが来て満足なのか少しばかり機嫌がよくなった名無しが隊首室を出ていった。
途端に静かになった隊首室で、松本の呆れたようなため息がひとつ漏れた。
「隊長ぉ〜、どうして『俺だってかき氷くらい作れるぞ』って言わなかったんですかぁ」
「話が拗れるだろうが。いいから帰らせておけ。」
涼みに来た・というのも本音だろうが、どうせ阿近と夢中になって話し込みはじめた浦原喜助への当てつけだろう。ここに来たのは。
現に浦原喜助が迎えにきたらとっとと帰るのだから、存外彼女は現金な性格らしい。
「隊長だって少し寂しいくせにぃ。雛森も最近、五番隊隊長と元気に仕事してるから構ってもらってないですもんね」
「何が寂しい・だ。どうせまた涼みに来るだろ。」
行動パターンが存外動物じみている名無しのことだ。
次の報告も涼みに立ち寄るだろう。
「かき氷は次の時に用意しといてやれ」
「ふふっ。はいはーい、隊長がそうおっしゃるなら」
至極楽しそうに松本が笑い「なんのシロップ用意しようかな〜」と軽い足取りで隊首室を出ていった。
店主と少女の事情#日番谷冬獅郎の場合
「って、松本!どこに行く、仕事しろ!!」
気遣い上手な少年隊長の苦労は、まだまだ絶えない。
八月の異名。葉が紅葉して落ちていく故に、葉月…らしい。
が、それは旧暦の話だ。
今は夏真っ盛り。
正直、俺は夏が嫌いだ。
そして定期報告のため、尸魂界に戻ってきたコイツも。
「名無し。いい加減帰れ。」
「暑いんですもん。現世の最高気温が何度だと思ってるんですか。41度ですよ、41。」
いつもは松本がダラダラとサボる時に居座っているソファで、今日は名無しが溶けている。
夏が嫌いなのはどうやら名無しも同じらしい。
「十二番隊で涼めばいいだろ」
「あそこ機械だらけで涼しいけど、暑いんですもん。」
機械の排熱だろう。
十二番隊に何度も行ったことはあるが、確かにあそこは涼しいが暑い。
「浦原喜助はどうした。ついてきていただろう」
「浦原さんは阿近さんと楽しそうに話しはじめたので、放っておきました」
話が長くなると踏んだのだろう。
まぁ、気持ちは分かる。
拗ねたようにゴロリと寝返りをうつ名無し。
他の隊だぞ、ここは。しかも隊首室。
くつろぎすぎだろう。
「名無し、アンタ夏の間ウチの隊の子になっちゃいなさいよぉ」
「乱菊さん。」
「オイ、松本。どこに行ってやがった」
がさり・と耳障りなビニール袋の音を立てて、松本が隊首室に入ってくる。
っていうかお前は仕事をしろ。仕事を。
「現世で頑張ってる名無しにご褒美を買ってきてたんですよ、隊長。ほら私、副隊長ですし?」
「副隊長らしく仕事すれば問題ないんだがな。」
「はい、隊長の分ですよ〜」
聞いちゃいねぇ。
松本がビニール袋から取り出したのは、鮮やかな浅葱色をした瓶。ラムネだ。
「わぁ、乱菊さん!ありがとうございます!」
「いいえ〜」
ソファで涼んでいた名無しが起き上がり、嬉々とした表情で栓を押し込む。
ガキみたいな顔をしてはしゃぐ名無しを見て、思わずため息が零れた。
「あ、名無しサン。やっぱりここにいたんっスか」
「あら。浦原さん」
松本が軽く片手を上げて挨拶をすれば「どぉも〜」とこれまた軽い返事で浦原喜助が返した。
件の名無しはちびちびとラムネを飲んでいる。浦原に目も向けやしない。
「ほら、帰るっスよ。」
「暑いから嫌です。夏の間はここの子になります。」
「確かに十番隊は涼しいっスけど。そんなこと言ったら涅隊長が泣くっスよぉ」
いや、泣きはしねーだろ。
十番隊に嫌がらせはされるかもしれないが。
そこまで暑いのが嫌なのか。
俺の知っている名無しはそれなりに聞き分けもよく、年の割には大人びた印象だったが、どうやら見当違いのようだった。
まるで駄々を捏ねる子供と、言い聞かせようとしている親のようだ。
まぁ、気温が41度なのはどうかと思うが。俺も今は現世に死んでも行きたくない。
「帰ったらかき氷しましょ。あと今日の夕飯は鉄裁サン特製の棒々鶏らしいっスよ」
「かき氷は、ふわふわのやつですか?」
「そうっス。ふわふわのやつっス。」
「じゃあ…帰ります」と渋々立ち上がり、死覇装のシワを伸ばすように袴を軽くはたく名無し。
…なんだ、帰るのか。
「じゃあ日番谷隊長、松本副隊長。お邪魔しましたっス。」
「乱菊さん、ラムネありがとうございました!日番谷くん、また涼みに来ますね」
胡散臭くヘラヘラ笑う浦原喜助と、迎えが来て満足なのか少しばかり機嫌がよくなった名無しが隊首室を出ていった。
途端に静かになった隊首室で、松本の呆れたようなため息がひとつ漏れた。
「隊長ぉ〜、どうして『俺だってかき氷くらい作れるぞ』って言わなかったんですかぁ」
「話が拗れるだろうが。いいから帰らせておけ。」
涼みに来た・というのも本音だろうが、どうせ阿近と夢中になって話し込みはじめた浦原喜助への当てつけだろう。ここに来たのは。
現に浦原喜助が迎えにきたらとっとと帰るのだから、存外彼女は現金な性格らしい。
「隊長だって少し寂しいくせにぃ。雛森も最近、五番隊隊長と元気に仕事してるから構ってもらってないですもんね」
「何が寂しい・だ。どうせまた涼みに来るだろ。」
行動パターンが存外動物じみている名無しのことだ。
次の報告も涼みに立ち寄るだろう。
「かき氷は次の時に用意しといてやれ」
「ふふっ。はいはーい、隊長がそうおっしゃるなら」
至極楽しそうに松本が笑い「なんのシロップ用意しようかな〜」と軽い足取りで隊首室を出ていった。
店主と少女の事情#日番谷冬獅郎の場合
「って、松本!どこに行く、仕事しろ!!」
気遣い上手な少年隊長の苦労は、まだまだ絶えない。