店主と彼女の事情シリーズ
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やわらかい陽だまりのような、穏やかな時間。
微笑ましい日常の一幕がそこにはあった。
店主と彼女の事情#井上織姫の場合
「浦原さん、名無しちゃん、美味しいパンはいかがですかー?」
バイト先の余りのパンを持ってお邪魔する。
休日の昼下がり、ちょうどおやつ時。
黒崎くんはさっき配ったし、茶渡くんと石田くんにも配ってきた。
まだまだ沢山あるから、浦原商店にも寄ってみた。
店の中から返事はない。
でも玄関は空いてるし、商い中の札も掛かっていた。
障子がススッと僅かに開く。
隙間から出てきたのは、浦原さんの杖の先。
こっちにおいで、と言わんばかりにユラユラと先端が揺れる
「おじゃましまーす…」
ひょっこり顔を覗かせれば、畳の上ですぅすぅと寝息をたてている名無しちゃんと、膝枕をしている浦原さん。
いつも着ている黒い羽織は、寝ている名無しちゃんをスッポリと包むように肩までかけられていた。
「お昼寝中です?」
「お昼寝中っス」
しーっ、と人差し指を立てて笑えば、同じように浦原さんも人差し指を立てて真似をする。
なるほど、それで返事しなかったのかぁ、と納得した。
そっと寝顔を覗き込んだら、陽向で昼寝をする子犬のような無防備な顔。
小さく縮こまって眠る姿は子供のようだった。
「なんだか、珍しいですね」
「アタシが野暮用で帰ってきたらこれでしたよ。初めて見ましたもん、名無しサンの昼寝」
普段はテキパキと店の手伝いや家事をしているのだろう。安易に想像できた。
確かにこの寝顔はレアかもしれない。
「ほら、よく撮れてません?」
スマホのように改造した伝令神機を見せてくれる浦原さん。
先程撮ったのだろう、無防備な寝顔の名無しちゃんが待受だった。
いやぁ、愛されてるなぁ。羨ましい。
「いいなぁ〜、その写真私にもください、浦原さん」
「パン2個で手を打ちましょう」
「ふふっ、喜んで」
あんこクリームパンと鯖焼そばパンを手渡せば、なんだか少しだけ得した気分になった。
「あんまり見せびらかしたらダメっスよ。ナイショっス」
「わかりました、ナイショですね」
悪戯っぽい笑顔で笑う浦原さんにつられて、ついつい自然と笑顔がこぼれた。
きっと名無しちゃんがこのやり取りを見たら『その画像、すぐ消してください!』って怒るんだろうなぁ。
今まで『大変な時』くらいしか関わりがなかった浦原さん。
正直、飄々とした様子と少しだけ怖い彼しか見たことがなかったから、今日の光景はかなり新鮮だった。
二人の意外な一面が見れた。ただそれだけで今日はいい日になった気がする。
静かに音を立てないように、浦原商店を後にして、うんと猫のように伸びをした。
空を見あげれば雲ひとつない晴天が広がる。
平和な世界、争いのない世界。
ほら、今日の私の足取りは、羽のように軽い。
微笑ましい日常の一幕がそこにはあった。
店主と彼女の事情#井上織姫の場合
「浦原さん、名無しちゃん、美味しいパンはいかがですかー?」
バイト先の余りのパンを持ってお邪魔する。
休日の昼下がり、ちょうどおやつ時。
黒崎くんはさっき配ったし、茶渡くんと石田くんにも配ってきた。
まだまだ沢山あるから、浦原商店にも寄ってみた。
店の中から返事はない。
でも玄関は空いてるし、商い中の札も掛かっていた。
障子がススッと僅かに開く。
隙間から出てきたのは、浦原さんの杖の先。
こっちにおいで、と言わんばかりにユラユラと先端が揺れる
「おじゃましまーす…」
ひょっこり顔を覗かせれば、畳の上ですぅすぅと寝息をたてている名無しちゃんと、膝枕をしている浦原さん。
いつも着ている黒い羽織は、寝ている名無しちゃんをスッポリと包むように肩までかけられていた。
「お昼寝中です?」
「お昼寝中っス」
しーっ、と人差し指を立てて笑えば、同じように浦原さんも人差し指を立てて真似をする。
なるほど、それで返事しなかったのかぁ、と納得した。
そっと寝顔を覗き込んだら、陽向で昼寝をする子犬のような無防備な顔。
小さく縮こまって眠る姿は子供のようだった。
「なんだか、珍しいですね」
「アタシが野暮用で帰ってきたらこれでしたよ。初めて見ましたもん、名無しサンの昼寝」
普段はテキパキと店の手伝いや家事をしているのだろう。安易に想像できた。
確かにこの寝顔はレアかもしれない。
「ほら、よく撮れてません?」
スマホのように改造した伝令神機を見せてくれる浦原さん。
先程撮ったのだろう、無防備な寝顔の名無しちゃんが待受だった。
いやぁ、愛されてるなぁ。羨ましい。
「いいなぁ〜、その写真私にもください、浦原さん」
「パン2個で手を打ちましょう」
「ふふっ、喜んで」
あんこクリームパンと鯖焼そばパンを手渡せば、なんだか少しだけ得した気分になった。
「あんまり見せびらかしたらダメっスよ。ナイショっス」
「わかりました、ナイショですね」
悪戯っぽい笑顔で笑う浦原さんにつられて、ついつい自然と笑顔がこぼれた。
きっと名無しちゃんがこのやり取りを見たら『その画像、すぐ消してください!』って怒るんだろうなぁ。
今まで『大変な時』くらいしか関わりがなかった浦原さん。
正直、飄々とした様子と少しだけ怖い彼しか見たことがなかったから、今日の光景はかなり新鮮だった。
二人の意外な一面が見れた。ただそれだけで今日はいい日になった気がする。
静かに音を立てないように、浦原商店を後にして、うんと猫のように伸びをした。
空を見あげれば雲ひとつない晴天が広がる。
平和な世界、争いのない世界。
ほら、今日の私の足取りは、羽のように軽い。