コイビト・スイッチ!
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今朝、関係者各位に伝えられた面白連絡。
いや。本人達は災難以外の何物でもないのだろうが、俺としては最高に愉快としか言いようがない。
「ユ〜ウ。あ、今日は珍しく朝メシは定食なんさ?」
「ぶっ!」
食堂の隅で朝食を食べている『ユウ』と『名無し』を見つけた。
味噌汁を啜っていた『ユウ』の肩を組めば、気管に入ったのか盛大に噎せる。
そして、そんなウザ絡みする俺に対して冷ややかな視線を向ける『名無し』。うーん、殺意が凄い。
「…げほっ、ごほっ…コイツが、蕎麦以外も食えって煩いからな。」
お、意外と演技美味いさね。
眉間の皺。声の抑揚。言葉尻。日頃、いかに『神田ユウ』を観察し、見ているかよくわかる。
しかし、肝心の相方はというと──
「ほーん。…あれ?でも名無しは蕎麦?」
「………………別に、いい、でしょう。」
(うーん、この大根役者)
彼女のふりをすることに対して恥じらいがあるのだろう。
壊れかけの機械音声のような、控えめに言って超下手クソな反応が返ってきた。
つい、俺も苦笑いを浮かべてしまう程に。
「……何笑ってんだよ。」
「お前さん、本当にユウさ?いつもだったら朝メシ邪魔したら口もきかないくらい不機嫌になるのにさぁ。……逆に名無しはすっげ〜怒ってるように見えるんだけど。」
「気のせいだろ。」
ここで演技が上手い『ユウ』が答える。
なるほど。どうやら彼らは、エクソシスト各位や各班の上長へ今朝知らされたことを知らないらしい。
ならもう少し遊んでも構わないだろう。
カマをかけた時の俺の顔は、さぞかし意地の悪い表情をしていたに違いない。
「で、名無し。この間俺が渡したエッチな下着、ユウに見せたんさ?」
「は!?」
真っ先に困惑したのは『ユウ』。
そして、
「見てねぇぞ、ンなもん!」
と、立ち上がる『名無し』。
「「…………あ。」」
『あちゃー』と顔を歪めるユウと、『やっべ』と正気に戻る名無し。
普段怒ることがない少女の怒声に視線が集まるが、バツの悪い顔でストンと座る『名無し』に声をかける勇者は、此処にはいなかったらしい。
コイビト・スイッチ!#04
「名無しは中々頑張ってたけど、いやぁ〜ユウは予想通りというか本当に演技がド下手さ〜」
まだ人が閑散としている談話室の一角。
コーヒーを片手に、ラビはケラケラと軽やかに笑っていた。
向かいに座る名無し──の姿をした神田──は、ラビと同じコーヒーのブラック。
その隣に座る神田──の姿をした名無し──はミルクを加えたカフェオレをちびちび飲んでいた。
「で、ンなもん渡してんのか、コイツに。」
「(まだ)渡してないさ?カマ掛けただけに決まってんだろ〜」
まだ実行されていない未遂の悪戯の顛末を想像して、ラビは誤魔化すようにニヤリと笑う。
「で、どうなんさ?入れ替わるのって。」
「聞いてください、ラビさん!とっても凄いんですよ!」
気になっていた質問に、真っ先に答えたのは名無しだった。
普段の彼では催眠術でも掛けねば拝めないであろう、満面の笑顔を惜しげなく綻ばせて。
正直、身体 の顔がいい分、笑顔も二乗で素晴らしいものなのだが……。
仏頂面を常日頃から浴びているラビとしては『笑顔が眩い』と目を細めてしまうと同時に、なぜか反射的に寒イボが手足に浮かんでしまった。不思議なことに。
にこにこと笑顔の彼──もとい、彼女はというと「目線が高い!筋肉凄い!身体が軽くて、フィジカルから根本的に違う!素直に羨ましい〜悔しい〜筋肉欲しい〜…」とないものねだりを述べていた。
一方、神田はというとため息混じりにだが、一応答えてくれるらしい。
「細ェ。小さい。あとイノセンスは使えたもんじゃねぇ。」とあまり芳しくない感想ばかりだったが。
使えたものじゃない、ということは一応使えるらしい。
ラビは意外そうに内心目を丸くし、口元を隠すようにコーヒーを一口含んだ。
まぁ装備形・結晶型と経験している神田からすれば、寄生型は未知の領域だろう。
使用者に負担がかかると聞くが、その代償は様々だ。決して彼女の身体で迎合できるものではないはず。
今のは次期ブックマンとして気になった質問。
そして、この質問は単純な興味から。
「で?入れ替わってからシてないんさ?」
左手は親指と人差し指で輪を作る。
その穴に右手の人差し指を抜き差しすれば、何を指しているか一目瞭然だろう。
現に、名無しは真っ赤になってひっくり返りそうになり(神田の姿なので異様である)、神田は愛嬌のある顔を軽蔑するように歪めて溜息を吐き出した。
「せ、せ、せ、セクハラ!」
「え〜、でも気にならないんさ?男の快楽も馬鹿にならんけど、女の子の身体は男の倍気持ちイイんっしょ?ユウは気にならないんさ?」
「知るか。」
素っ気ない神田に対して、名無しはというと火照った頬を冷まそうと手で顔を仰いでいる。
……おやおやぁ?もしかして名無しは『男』を経験しちゃった感じ?
何となくその経緯は予想できるが、ここで掘り下げるのは無粋……ではなく、流石に可哀想なのでやめた。
「俺としては面白いから一ヶ月ほどそのままでもいいんだけどなぁ」
「俺はさっさと戻りたい。」「私もちょっと……」
「「だって任務行けないし」」
と、口を揃えるワーカーホリック達に、「あー…、そうさね。」とラビは乾いた笑いを浮かべるのであった。
いや。本人達は災難以外の何物でもないのだろうが、俺としては最高に愉快としか言いようがない。
「ユ〜ウ。あ、今日は珍しく朝メシは定食なんさ?」
「ぶっ!」
食堂の隅で朝食を食べている『ユウ』と『名無し』を見つけた。
味噌汁を啜っていた『ユウ』の肩を組めば、気管に入ったのか盛大に噎せる。
そして、そんなウザ絡みする俺に対して冷ややかな視線を向ける『名無し』。うーん、殺意が凄い。
「…げほっ、ごほっ…コイツが、蕎麦以外も食えって煩いからな。」
お、意外と演技美味いさね。
眉間の皺。声の抑揚。言葉尻。日頃、いかに『神田ユウ』を観察し、見ているかよくわかる。
しかし、肝心の相方はというと──
「ほーん。…あれ?でも名無しは蕎麦?」
「………………別に、いい、でしょう。」
(うーん、この大根役者)
彼女のふりをすることに対して恥じらいがあるのだろう。
壊れかけの機械音声のような、控えめに言って超下手クソな反応が返ってきた。
つい、俺も苦笑いを浮かべてしまう程に。
「……何笑ってんだよ。」
「お前さん、本当にユウさ?いつもだったら朝メシ邪魔したら口もきかないくらい不機嫌になるのにさぁ。……逆に名無しはすっげ〜怒ってるように見えるんだけど。」
「気のせいだろ。」
ここで演技が上手い『ユウ』が答える。
なるほど。どうやら彼らは、エクソシスト各位や各班の上長へ今朝知らされたことを知らないらしい。
ならもう少し遊んでも構わないだろう。
カマをかけた時の俺の顔は、さぞかし意地の悪い表情をしていたに違いない。
「で、名無し。この間俺が渡したエッチな下着、ユウに見せたんさ?」
「は!?」
真っ先に困惑したのは『ユウ』。
そして、
「見てねぇぞ、ンなもん!」
と、立ち上がる『名無し』。
「「…………あ。」」
『あちゃー』と顔を歪めるユウと、『やっべ』と正気に戻る名無し。
普段怒ることがない少女の怒声に視線が集まるが、バツの悪い顔でストンと座る『名無し』に声をかける勇者は、此処にはいなかったらしい。
コイビト・スイッチ!#04
「名無しは中々頑張ってたけど、いやぁ〜ユウは予想通りというか本当に演技がド下手さ〜」
まだ人が閑散としている談話室の一角。
コーヒーを片手に、ラビはケラケラと軽やかに笑っていた。
向かいに座る名無し──の姿をした神田──は、ラビと同じコーヒーのブラック。
その隣に座る神田──の姿をした名無し──はミルクを加えたカフェオレをちびちび飲んでいた。
「で、ンなもん渡してんのか、コイツに。」
「(まだ)渡してないさ?カマ掛けただけに決まってんだろ〜」
まだ実行されていない未遂の悪戯の顛末を想像して、ラビは誤魔化すようにニヤリと笑う。
「で、どうなんさ?入れ替わるのって。」
「聞いてください、ラビさん!とっても凄いんですよ!」
気になっていた質問に、真っ先に答えたのは名無しだった。
普段の彼では催眠術でも掛けねば拝めないであろう、満面の笑顔を惜しげなく綻ばせて。
正直、
仏頂面を常日頃から浴びているラビとしては『笑顔が眩い』と目を細めてしまうと同時に、なぜか反射的に寒イボが手足に浮かんでしまった。不思議なことに。
にこにこと笑顔の彼──もとい、彼女はというと「目線が高い!筋肉凄い!身体が軽くて、フィジカルから根本的に違う!素直に羨ましい〜悔しい〜筋肉欲しい〜…」とないものねだりを述べていた。
一方、神田はというとため息混じりにだが、一応答えてくれるらしい。
「細ェ。小さい。あとイノセンスは使えたもんじゃねぇ。」とあまり芳しくない感想ばかりだったが。
使えたものじゃない、ということは一応使えるらしい。
ラビは意外そうに内心目を丸くし、口元を隠すようにコーヒーを一口含んだ。
まぁ装備形・結晶型と経験している神田からすれば、寄生型は未知の領域だろう。
使用者に負担がかかると聞くが、その代償は様々だ。決して彼女の身体で迎合できるものではないはず。
今のは次期ブックマンとして気になった質問。
そして、この質問は単純な興味から。
「で?入れ替わってからシてないんさ?」
左手は親指と人差し指で輪を作る。
その穴に右手の人差し指を抜き差しすれば、何を指しているか一目瞭然だろう。
現に、名無しは真っ赤になってひっくり返りそうになり(神田の姿なので異様である)、神田は愛嬌のある顔を軽蔑するように歪めて溜息を吐き出した。
「せ、せ、せ、セクハラ!」
「え〜、でも気にならないんさ?男の快楽も馬鹿にならんけど、女の子の身体は男の倍気持ちイイんっしょ?ユウは気にならないんさ?」
「知るか。」
素っ気ない神田に対して、名無しはというと火照った頬を冷まそうと手で顔を仰いでいる。
……おやおやぁ?もしかして名無しは『男』を経験しちゃった感じ?
何となくその経緯は予想できるが、ここで掘り下げるのは無粋……ではなく、流石に可哀想なのでやめた。
「俺としては面白いから一ヶ月ほどそのままでもいいんだけどなぁ」
「俺はさっさと戻りたい。」「私もちょっと……」
「「だって任務行けないし」」
と、口を揃えるワーカーホリック達に、「あー…、そうさね。」とラビは乾いた笑いを浮かべるのであった。