コイビト・スイッチ!
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「ジェリー、蕎麦ひとつ。」
夕飯時。
賑やかな食堂のカウンターにて、神田を装った名無しが練習の時のように料理長であるジェリーに声をかける。
(呼び捨てにするの、やっぱりちょっと気が引けるな……)
なんて内心考えているのだが、表情へ微塵も出さないのは流石だろう。
しかし、肝心の彼女──いや、彼はというと……。
「ジェリー、蕎麦ひフガッ!」
「名無し、俺の分はもう頼んだ。」
咄嗟に手のひらで口を塞ぐ。
全くこの人は。
食堂の列から少し逸れて、名無しの姿になった神田へ耳打ちした。
(神田さん、ちゃんと『ジェリーさん』って呼んでください!)
(別にお前に呼び捨てにされてもアイツは怒らねぇだろ)
(怒らないとは思いますけど!怪しいじゃないですか!あと蕎麦は後で交換しますので、別のものにしてください!)
列に戻り、神田の背中をトンと軽く押した。
「……ジェリー、さん。きつねうどん、ひとつ。」
「あら?名無しちゃん今日はそれだけ?体調悪いの?」
──そうだった。
寄生型故か、食事は軽く二人前入るようになった。
いや、一人分でも胃袋の空腹度合い的に大丈夫なのだが、ジェリーの料理が美味しくてついついデザートまで頼むのが日常になってしまっていたのだ。
一瞬で頭を切り替え、ぽんと神田(が中身の自分の体)の頭へ手を置く。
なるほど、この背丈は確かに頭を撫でやすい上、手の置き場には最適の高さだ。
彼が手持ち無沙汰の時に頭をポンポンと叩く理由がわかった気がする。
「アイス食いすぎて腹下してんだよ、コイツ。だから今日は大食いを控えとけって忠告しておいた。」
「あらぁ。美味しいけど、アイスもほどほどにね。」
納得した様子のジェリーは蕎麦ときつねうどんを作りに厨房の奥へ消える。
注文受け取り口の方へ足を進めながら、神田は感心半分、呆れ半分でそっと呟いた。
「……詐欺師になれるな、お前」
「えっ、えぇー…それ、褒め言葉です…?」
コイビト・スイッチ!#03
「このまま入らねぇつもりか?」
「むしろなんで抵抗がないのか教えてもらいたいです…」
風呂上がり。
乱雑に髪をタオルドライしている神田。
本来の自分の髪よりも随分と短い為か、快適そうに見えるのは錯覚ではないだろう。
余談だが、元帥の部屋に取り付けられたシャワーブースで風呂は済ませてもらっている。
大浴場だとボロが出かねない上、入れ替わりの事実が発覚した途端お互い社会的に死ぬと危惧した為だ。
さて、そこで出た問題。
デリカシーが些か欠けている神田は、名無しの身体を洗うことに何の躊躇いもなかった訳だが──。
「意識する方が変態だろ。」
「いやいやいや。するでしょう!トイレですら目を瞑ってやっとなのに!」
「裸なんてベッドで見慣れてる。」
「洗うと見慣れているは別問題では!?」
そう。
風呂に入るということは、身体を隅々まで洗うということ。
つまり、そういうことだ。
いくら見た目が綺麗だとはいえ、神田は立派な男性だ。
男と女とでは身体の作りが決定的に違うところがいくつもある。そんなことは保健体育で習う前から知っていた。
男の体である神田は、つまるところ『アレ』がある。
しかも名無しが躊躇っている原因の『アレ』に、毎夜とは言わないがかなりの頻度で啼かされている為、直に触ることを躊躇っているのだ。
「洗わねぇと不潔だろうが。」
「分かっていますけど…!その、デリケートな部分だから躊躇う私の気持ちも汲んで欲しいと申しますか、」
「なら俺が洗えば問題ねぇだろ。」
首からかけていたタオルをベッドへ放り投げ、神田がさもありなんといった表情で頷いた。
「……なる、ほど?いや、待ってください。なんか絵面がちょっとマズくないですか?」
「気になるなら目隠しでもすりゃあいいだろ。」
「そっちの方がダメでしょう!?」
小柄な身体のどこに力があるのか。
一見すれば恥じらう神田を、名無しが強引にシャワーブースへ押し込む絵面なのだから、既に絵面がマズい。色んな意味で。
「つべこべ言うな。」
「びゃっ!」
シャワーブースへ押し込んだ途端、シャワーのコックを捻る神田。
熱いはずのシャワーが、冷水とまではいかないが少しだけ生温い。
二人分の身体を濡らすには十分な水量で、四角い密室は湯けむりが立ち昇った。
「また入り直しだな」
「〜〜〜ッかっ、かんっ、神田さん!ちゃんと!風呂上がりも下着付けてください!」
名無しの眼下には、ずぶ濡れになった自分の身体。
寝間着で借りた(というより本来の持ち主なので、借りたという表現はおかしな話なのだが)神田のシャツから透ける、肌色。
湯で張り付いた胸元は色濃い肌色が布地の下でツンと主張し、『インナーを何もつけていない』ということを一目で理解してしまった。
当人はというと「あ?…あぁ。」と納得した後、本来の身体の持ち主なら絶対にしないであろう、挑発的な笑みを浮かべて名無しを見上げてきた。
「……何見てんだよ、スケベ。」
「〜〜〜ッ!」
どの口が。
いや、神田の身体を洗うことに躊躇っている時点で、既にアウトなのかもしれない。
しかしせめてスポーツブラなり、元々付けていた下着なり、その身体を使っている限りはもう少し恥じらいを持って欲しいというのも本音で。
言いたいことがせめぎ合い、脳内で論破し合い、言葉に出来ぬまま喉の奥で無様に潰れる。
顔を真っ赤にして反論出来ない名無しを見て満足したのか、神田は濡れたシャツのボタンを殊更丁寧に一つ一つ外していった。
「念入りに洗ってやるよ。俺の身体だしな、どう洗うかは俺の自由だろ?」
夕飯時。
賑やかな食堂のカウンターにて、神田を装った名無しが練習の時のように料理長であるジェリーに声をかける。
(呼び捨てにするの、やっぱりちょっと気が引けるな……)
なんて内心考えているのだが、表情へ微塵も出さないのは流石だろう。
しかし、肝心の彼女──いや、彼はというと……。
「ジェリー、蕎麦ひフガッ!」
「名無し、俺の分はもう頼んだ。」
咄嗟に手のひらで口を塞ぐ。
全くこの人は。
食堂の列から少し逸れて、名無しの姿になった神田へ耳打ちした。
(神田さん、ちゃんと『ジェリーさん』って呼んでください!)
(別にお前に呼び捨てにされてもアイツは怒らねぇだろ)
(怒らないとは思いますけど!怪しいじゃないですか!あと蕎麦は後で交換しますので、別のものにしてください!)
列に戻り、神田の背中をトンと軽く押した。
「……ジェリー、さん。きつねうどん、ひとつ。」
「あら?名無しちゃん今日はそれだけ?体調悪いの?」
──そうだった。
寄生型故か、食事は軽く二人前入るようになった。
いや、一人分でも胃袋の空腹度合い的に大丈夫なのだが、ジェリーの料理が美味しくてついついデザートまで頼むのが日常になってしまっていたのだ。
一瞬で頭を切り替え、ぽんと神田(が中身の自分の体)の頭へ手を置く。
なるほど、この背丈は確かに頭を撫でやすい上、手の置き場には最適の高さだ。
彼が手持ち無沙汰の時に頭をポンポンと叩く理由がわかった気がする。
「アイス食いすぎて腹下してんだよ、コイツ。だから今日は大食いを控えとけって忠告しておいた。」
「あらぁ。美味しいけど、アイスもほどほどにね。」
納得した様子のジェリーは蕎麦ときつねうどんを作りに厨房の奥へ消える。
注文受け取り口の方へ足を進めながら、神田は感心半分、呆れ半分でそっと呟いた。
「……詐欺師になれるな、お前」
「えっ、えぇー…それ、褒め言葉です…?」
コイビト・スイッチ!#03
「このまま入らねぇつもりか?」
「むしろなんで抵抗がないのか教えてもらいたいです…」
風呂上がり。
乱雑に髪をタオルドライしている神田。
本来の自分の髪よりも随分と短い為か、快適そうに見えるのは錯覚ではないだろう。
余談だが、元帥の部屋に取り付けられたシャワーブースで風呂は済ませてもらっている。
大浴場だとボロが出かねない上、入れ替わりの事実が発覚した途端お互い社会的に死ぬと危惧した為だ。
さて、そこで出た問題。
デリカシーが些か欠けている神田は、名無しの身体を洗うことに何の躊躇いもなかった訳だが──。
「意識する方が変態だろ。」
「いやいやいや。するでしょう!トイレですら目を瞑ってやっとなのに!」
「裸なんてベッドで見慣れてる。」
「洗うと見慣れているは別問題では!?」
そう。
風呂に入るということは、身体を隅々まで洗うということ。
つまり、そういうことだ。
いくら見た目が綺麗だとはいえ、神田は立派な男性だ。
男と女とでは身体の作りが決定的に違うところがいくつもある。そんなことは保健体育で習う前から知っていた。
男の体である神田は、つまるところ『アレ』がある。
しかも名無しが躊躇っている原因の『アレ』に、毎夜とは言わないがかなりの頻度で啼かされている為、直に触ることを躊躇っているのだ。
「洗わねぇと不潔だろうが。」
「分かっていますけど…!その、デリケートな部分だから躊躇う私の気持ちも汲んで欲しいと申しますか、」
「なら俺が洗えば問題ねぇだろ。」
首からかけていたタオルをベッドへ放り投げ、神田がさもありなんといった表情で頷いた。
「……なる、ほど?いや、待ってください。なんか絵面がちょっとマズくないですか?」
「気になるなら目隠しでもすりゃあいいだろ。」
「そっちの方がダメでしょう!?」
小柄な身体のどこに力があるのか。
一見すれば恥じらう神田を、名無しが強引にシャワーブースへ押し込む絵面なのだから、既に絵面がマズい。色んな意味で。
「つべこべ言うな。」
「びゃっ!」
シャワーブースへ押し込んだ途端、シャワーのコックを捻る神田。
熱いはずのシャワーが、冷水とまではいかないが少しだけ生温い。
二人分の身体を濡らすには十分な水量で、四角い密室は湯けむりが立ち昇った。
「また入り直しだな」
「〜〜〜ッかっ、かんっ、神田さん!ちゃんと!風呂上がりも下着付けてください!」
名無しの眼下には、ずぶ濡れになった自分の身体。
寝間着で借りた(というより本来の持ち主なので、借りたという表現はおかしな話なのだが)神田のシャツから透ける、肌色。
湯で張り付いた胸元は色濃い肌色が布地の下でツンと主張し、『インナーを何もつけていない』ということを一目で理解してしまった。
当人はというと「あ?…あぁ。」と納得した後、本来の身体の持ち主なら絶対にしないであろう、挑発的な笑みを浮かべて名無しを見上げてきた。
「……何見てんだよ、スケベ。」
「〜〜〜ッ!」
どの口が。
いや、神田の身体を洗うことに躊躇っている時点で、既にアウトなのかもしれない。
しかしせめてスポーツブラなり、元々付けていた下着なり、その身体を使っている限りはもう少し恥じらいを持って欲しいというのも本音で。
言いたいことがせめぎ合い、脳内で論破し合い、言葉に出来ぬまま喉の奥で無様に潰れる。
顔を真っ赤にして反論出来ない名無しを見て満足したのか、神田は濡れたシャツのボタンを殊更丁寧に一つ一つ外していった。
「念入りに洗ってやるよ。俺の身体だしな、どう洗うかは俺の自由だろ?」