NOAH's Tea party
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
受け身を取れる体勢でなかった、と弁解したい。
白い床。埃ひとつない地面。
肩から落ちて側頭部を強く打てば、くぐもった呻きが思わず漏れた。
「いっ…ッ………!」
ぱちぱちと弾ける視界。
痛みに思わず身体が縮こまる。
芋虫のように背中を丸め、無様にもじたじたともがいていると、小さな影が頭上に落ちてきた。
「エクソシストだから、もっと華麗に着地するかと思ったけど……ふーん。意外とキミ、鈍臭いんだ〜。」
白いフリルのワンピースに、紫と黒の縞模様のタイツ。
灰褐色の肌に、宝石のような琥珀色の瞳を細め、純新無垢な笑顔で見知らぬ少女は笑った。
まさかこんな殺風景な場所に誰かいるとは。
──いや。先程まで周りに誰もいなかったはず。
足音や息遣いさえ立てずにやって来た少女は、物珍しそうにこちらを見下ろしていた。
「はじめまして、名無し。ボクはロード。ノアの一族の長子、ロード・キャメロット。
──ようこそ、ボク達の方舟に。」
NOAH's Tea party#03
一方その頃。
新方舟の、名無しから随分離れた場所にて。
「名無しはどこだ。テメェの仕業か。」
全身の毛が逆立つような殺気を今度は抑えることなく。
眼光だけで人を殺せそうな目をした神田ユウが、本日二度目の切先を俺へ向けていた。
「待て待て待て待て!マジで濡れ衣だろ!定時連絡するとはいえ、このお呼ばれ方法は聞いてねぇ!」
こんな悪戯では済まない所業をするのは、あの性悪な少女らしいと言えばらしいのだが。
……何せ相手とシチュエーションが最悪だ。
相方とはぐれ、敵の本拠地に転送された神田ユウ。
目の前には元・ノアの一族である、俺。更に付け加えると完全に丸腰だ。
だというのに、まだ首が繋がっている。この男を前にして。
最悪を通り越してむしろ奇跡的では?
冷や汗が頬を伝う。俺の首が床へ転がり落ちるのも時間の問題かもしれない。
このまま死んだらロードのところへ絶対化けて出てやる。
──コツコツと。
心臓の音がバクバクと煩い中、呑気に近づいてくる足音が殺風景な方舟の中に響いて消える。
こんな悠長で気だるそうな足音、一人しか思いつかない。
「オーイ、クソ神父!お前のとこの同僚どうなってんだ!」
「知らん。そいつは俺の弟子じゃねぇからな。躾の管轄外だ。」
声を発するだけで空気が震え上がるような、低い音。
白い部屋の中やたらと目立つ燃えるような赤い髪はそろそろ見飽きてきた。
何せ教団への報告 役がこの男だ。
「クロス・マリアン。」
「刀 を納めろ。そいつは気まぐれで方舟のゲートの『座標』に使われただけだ。
斬っても咎落ちにならねぇと思うが、何せロードが煩くなる。やめておけ。」
オイオイ。『気まぐれ』で俺殺されそうになるのか。勘弁してくれ。
歩きタバコを咥えていたクロス・マリアンは、面倒くさそうに紫煙を一気に吐き出した。
恐らくロードから『案内』を頼まれたのだろう。いつもより忌々しそうに眉間の皺が深く刻まれていた。
「あの娘の話を聞きてぇとロードが御所望だ。
……あぁ。あと伝言だ。『疑われてうっかり刀の錆になったらごめんね』だとよ」
肉色の舌をペロッと出して、可愛こぶった表情を浮かべるロードの顔が安易に想像できる。
基本的に幻の身体であるロードと違って、俺はもうとっくのまに生身の人間だという事実を失念されているんじゃだろうか?
そうだとしたら命がいくつあっても足りやしない。
「あ〜〜〜ロードといい生臭神父といい、ホンッッットそういうとこ嫌。」
離れた鋒に安堵し、息を深く吐き出す。
俺は不本意ながらも状況を納得したが、目の前の男は納得するわけがない。
切れ長の鋭い眼光が刃のように味方側であるはずの神父へ向けられる。
「何のつもりだ、クロス・マリアン。」
「言っただろ?ロードが二人きりで話がしてぇらしい。それまでのんびり方舟の中を散歩しながら迎えに来い、だとよ。」
納得──まぁ当然ながら、するはずがない。
俺だって逆の立場なら怒りに任せて力を振るっただろう。
綺麗な顔をくしゃりと歪め、神田ユウは隠すことなく舌打ちを零した。
イノセンスで切り捨てる訳にはいかないのだろう。
ここにいるのは前線を退いたとはいえ元・元帥と、約定で保護された元・ノアの一族の俺。
行き場のない怒りは足早に床を蹴り、神経質な足音が方舟を横切った。
白い床。埃ひとつない地面。
肩から落ちて側頭部を強く打てば、くぐもった呻きが思わず漏れた。
「いっ…ッ………!」
ぱちぱちと弾ける視界。
痛みに思わず身体が縮こまる。
芋虫のように背中を丸め、無様にもじたじたともがいていると、小さな影が頭上に落ちてきた。
「エクソシストだから、もっと華麗に着地するかと思ったけど……ふーん。意外とキミ、鈍臭いんだ〜。」
白いフリルのワンピースに、紫と黒の縞模様のタイツ。
灰褐色の肌に、宝石のような琥珀色の瞳を細め、純新無垢な笑顔で見知らぬ少女は笑った。
まさかこんな殺風景な場所に誰かいるとは。
──いや。先程まで周りに誰もいなかったはず。
足音や息遣いさえ立てずにやって来た少女は、物珍しそうにこちらを見下ろしていた。
「はじめまして、名無し。ボクはロード。ノアの一族の長子、ロード・キャメロット。
──ようこそ、ボク達の方舟に。」
NOAH's Tea party#03
一方その頃。
新方舟の、名無しから随分離れた場所にて。
「名無しはどこだ。テメェの仕業か。」
全身の毛が逆立つような殺気を今度は抑えることなく。
眼光だけで人を殺せそうな目をした神田ユウが、本日二度目の切先を俺へ向けていた。
「待て待て待て待て!マジで濡れ衣だろ!定時連絡するとはいえ、このお呼ばれ方法は聞いてねぇ!」
こんな悪戯では済まない所業をするのは、あの性悪な少女らしいと言えばらしいのだが。
……何せ相手とシチュエーションが最悪だ。
相方とはぐれ、敵の本拠地に転送された神田ユウ。
目の前には元・ノアの一族である、俺。更に付け加えると完全に丸腰だ。
だというのに、まだ首が繋がっている。この男を前にして。
最悪を通り越してむしろ奇跡的では?
冷や汗が頬を伝う。俺の首が床へ転がり落ちるのも時間の問題かもしれない。
このまま死んだらロードのところへ絶対化けて出てやる。
──コツコツと。
心臓の音がバクバクと煩い中、呑気に近づいてくる足音が殺風景な方舟の中に響いて消える。
こんな悠長で気だるそうな足音、一人しか思いつかない。
「オーイ、クソ神父!お前のとこの同僚どうなってんだ!」
「知らん。そいつは俺の弟子じゃねぇからな。躾の管轄外だ。」
声を発するだけで空気が震え上がるような、低い音。
白い部屋の中やたらと目立つ燃えるような赤い髪はそろそろ見飽きてきた。
何せ教団への
「クロス・マリアン。」
「
斬っても咎落ちにならねぇと思うが、何せロードが煩くなる。やめておけ。」
オイオイ。『気まぐれ』で俺殺されそうになるのか。勘弁してくれ。
歩きタバコを咥えていたクロス・マリアンは、面倒くさそうに紫煙を一気に吐き出した。
恐らくロードから『案内』を頼まれたのだろう。いつもより忌々しそうに眉間の皺が深く刻まれていた。
「あの娘の話を聞きてぇとロードが御所望だ。
……あぁ。あと伝言だ。『疑われてうっかり刀の錆になったらごめんね』だとよ」
肉色の舌をペロッと出して、可愛こぶった表情を浮かべるロードの顔が安易に想像できる。
基本的に幻の身体であるロードと違って、俺はもうとっくのまに生身の人間だという事実を失念されているんじゃだろうか?
そうだとしたら命がいくつあっても足りやしない。
「あ〜〜〜ロードといい生臭神父といい、ホンッッットそういうとこ嫌。」
離れた鋒に安堵し、息を深く吐き出す。
俺は不本意ながらも状況を納得したが、目の前の男は納得するわけがない。
切れ長の鋭い眼光が刃のように味方側であるはずの神父へ向けられる。
「何のつもりだ、クロス・マリアン。」
「言っただろ?ロードが二人きりで話がしてぇらしい。それまでのんびり方舟の中を散歩しながら迎えに来い、だとよ。」
納得──まぁ当然ながら、するはずがない。
俺だって逆の立場なら怒りに任せて力を振るっただろう。
綺麗な顔をくしゃりと歪め、神田ユウは隠すことなく舌打ちを零した。
イノセンスで切り捨てる訳にはいかないのだろう。
ここにいるのは前線を退いたとはいえ元・元帥と、約定で保護された元・ノアの一族の俺。
行き場のない怒りは足早に床を蹴り、神経質な足音が方舟を横切った。