泡沫に溺れる
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翌朝。
目が覚めてシーツにくるまったまま、名無しは滑稽にも全力で土下座をしてきた。
「本当に申し訳ございません…」
本場日本の完璧な土下座。
真っ赤な顔で懺悔する愛弟子をベッドの上で眺めながら、俺は小さく息を吐いた。
「身体は。」
「えっ、あ…、もう、変な感じは、しません、けど……」
「けど?」
「………………倦怠感というか、重だるいというか……」
言いにくそうに自白する名無しを見ながら『まぁそりゃそうだろう。手と口で散々イかせたからな』と俺はそっと内心呟いた。
下手に掘り返せば昨晩の一方的な情事を蒸し返す事になる。
付き合いたての頃のように『恥ずかしくて目も合わせられない』なんて言い出したら、こちらとしては堪ったもんじゃない。
「濡れタオル、持ってきてやる」と言い、頭を一撫でする。
カッと顔を真っ赤にしながら何度も頷く名無しを横目で見ながら、俺は部屋を静かに出て行った。
泡沫に溺れる#06
神田が持って来てくれたホットタオルで身体を拭き終えたタイミングで、彼のゴーレムがけたたましく呼出音をかき鳴らす。
どうやらコムイからの呼び出しのようで、深く深く溜息をついた後に『先に朝飯食ってろ』と言い残し、かの元帥は完全に部屋を出て行った。
それが、30分程前。
「増えてない?キスマーク。」
食堂でリナリーに会った、開口一番。
……口紅をつけた覚えはないが……。
「キスマーク…?」
「首のとこよ。」
昨日のラビと同じようにトントンと首筋を指差すリナリー。
彼と異なる点は、明確に『キスマーク』と公言したことと、小さな手鏡を持っていた事か。
鏡と睨めっこしながら、名無しは眉をそっと顰める。
……増えているのだ。赤い痕が昨日より、倍以上。
「……あの、これって虫刺されじゃ、」
「流石の神田も、名無しに虫扱いされたら泣くんじゃない?」
「え。」
「シャツ、第一ボタンも閉めておきなさい」とリナリーに言われながら、ブラウスの首襟をキッチリ閉じられる名無し。
どうしてそこで神田の名前が出てくるのか。
――まさか。
昨晩の情事が走馬灯のように蘇り、血液という血液が顔に集まった。
確かに昨日だけでなく任務に行く前も……首筋に、沢山キスされた、気がする。
名無しの思っている『キスマーク=口紅を使ったもの』とは、全くの別物だとすれば。
仮説が仮説を呼び、ひとつの真実を浮き彫りにする。
ぶわわっ、と全身の毛がよだつような嫌な予感と、羞じらいと、『いやでも昨晩はむしろ自分が迷惑を掛けてしまった』という罪悪感で、今すぐ壁へ頭を打ち付けたい衝動に駆られた。
青くなったり赤くなったり。
名無しの顔色がコロコロ変わる様を見てリナリーは笑みを深くする。
それは決して『微笑ましい』と見守る和やかなものではなく――
「ちょっと神田をシメてくるわね。」
「す、ストップ、リナリー!笑顔が物騒!むしろ神田さんは無罪なの!」
黒い靴の踵を鳴らすリナリーに縋り付く名無し。
それは、AM7:27の出来事。
目が覚めてシーツにくるまったまま、名無しは滑稽にも全力で土下座をしてきた。
「本当に申し訳ございません…」
本場日本の完璧な土下座。
真っ赤な顔で懺悔する愛弟子をベッドの上で眺めながら、俺は小さく息を吐いた。
「身体は。」
「えっ、あ…、もう、変な感じは、しません、けど……」
「けど?」
「………………倦怠感というか、重だるいというか……」
言いにくそうに自白する名無しを見ながら『まぁそりゃそうだろう。手と口で散々イかせたからな』と俺はそっと内心呟いた。
下手に掘り返せば昨晩の一方的な情事を蒸し返す事になる。
付き合いたての頃のように『恥ずかしくて目も合わせられない』なんて言い出したら、こちらとしては堪ったもんじゃない。
「濡れタオル、持ってきてやる」と言い、頭を一撫でする。
カッと顔を真っ赤にしながら何度も頷く名無しを横目で見ながら、俺は部屋を静かに出て行った。
泡沫に溺れる#06
神田が持って来てくれたホットタオルで身体を拭き終えたタイミングで、彼のゴーレムがけたたましく呼出音をかき鳴らす。
どうやらコムイからの呼び出しのようで、深く深く溜息をついた後に『先に朝飯食ってろ』と言い残し、かの元帥は完全に部屋を出て行った。
それが、30分程前。
「増えてない?キスマーク。」
食堂でリナリーに会った、開口一番。
……口紅をつけた覚えはないが……。
「キスマーク…?」
「首のとこよ。」
昨日のラビと同じようにトントンと首筋を指差すリナリー。
彼と異なる点は、明確に『キスマーク』と公言したことと、小さな手鏡を持っていた事か。
鏡と睨めっこしながら、名無しは眉をそっと顰める。
……増えているのだ。赤い痕が昨日より、倍以上。
「……あの、これって虫刺されじゃ、」
「流石の神田も、名無しに虫扱いされたら泣くんじゃない?」
「え。」
「シャツ、第一ボタンも閉めておきなさい」とリナリーに言われながら、ブラウスの首襟をキッチリ閉じられる名無し。
どうしてそこで神田の名前が出てくるのか。
――まさか。
昨晩の情事が走馬灯のように蘇り、血液という血液が顔に集まった。
確かに昨日だけでなく任務に行く前も……首筋に、沢山キスされた、気がする。
名無しの思っている『キスマーク=口紅を使ったもの』とは、全くの別物だとすれば。
仮説が仮説を呼び、ひとつの真実を浮き彫りにする。
ぶわわっ、と全身の毛がよだつような嫌な予感と、羞じらいと、『いやでも昨晩はむしろ自分が迷惑を掛けてしまった』という罪悪感で、今すぐ壁へ頭を打ち付けたい衝動に駆られた。
青くなったり赤くなったり。
名無しの顔色がコロコロ変わる様を見てリナリーは笑みを深くする。
それは決して『微笑ましい』と見守る和やかなものではなく――
「ちょっと神田をシメてくるわね。」
「す、ストップ、リナリー!笑顔が物騒!むしろ神田さんは無罪なの!」
黒い靴の踵を鳴らすリナリーに縋り付く名無し。
それは、AM7:27の出来事。