泡沫に溺れる
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午後から任務に出る予定の名無しが、食堂で食事をしていた。
冬を越す前の小動物のように、食べ納めと言わんばかりにむぎゅむぎゅと食事を食べる様は――流石、寄生型と言わざるを得ない。
食べ方はユウ並に綺麗だというのに、黙々と。しかしとても美味しそうに食べる姿は見てて気持ちが良かった。
一方、隣の席でフードファイターばりに食べているのはアレンだ。
口の周りがミートソースだらけになっていることに本人はきっと気づいていないのだろう。
そんな似た者同士の二人の前に座り、次の任務の話や他愛ない話を繰り出しながら俺はのんびりとした時間を過ごしていた。
が、視界にたまたま入ったそれを見て、つい唐突に尋ねたくなったのだ。
「名無しって、ユウともうエッチしたんさ?」
「むぐっ」
泡沫に溺れる#01
咀嚼し、嚥下し、合間をぬって丁寧に会話のキャッチボールをしていた名無しが、ポテトサラダを喉に詰まらせる。
無理もない。先程まで先日読んだ新聞のニュースの話をしていたのに、突然下ネタになったのだから。
いや、まぁ俺が聞いたんだけど。
「ラビ、神田に殺されても僕は骨を拾わないからね」
「酷ェさ、アレン…。っと、名無し。ほい、水。」
女の子に対してとんでもない質問を投げかけたせいか、アレンの視線がいつもより二割増で冷ややかだ。
いや、だって聞くっしょ。
現に、名無しの首筋には赤い跡が点々と散っている。
色恋沙汰より三度の飯、といった様子の名無しには似つかわしくない、露骨な独占欲の証だ。
……誰がマーキングしたのか言うまでもないだろう。
「けほっ、なんですか、藪から棒に」
「ん?だってほら。」
トントンと俺は自分の首を指差す。
本当に分からないのか、名無しは首を傾げるばかり。
「……首、ですか?」
「そ。」
窓際の席に座っていたから鏡には困らない。
綺麗に姿が映る窓ガラスを覗き込み、首筋の赤い花を目視で確認する名無し。
本当に心当たりがないのか、それとも気づいていないのか。顔色ひとつ変えることなく、キスマークの跡をぽりぽりと指で軽く引っ掻いていた。
「?……虫刺されですかね。」
「ごふっ」
「あ、アレンさん?」
彼女はボケているわけでも、わざと言っているわけでもない。
まさか神田ユウの所有印を『虫刺され』と片付けてしまった事実に、犬猿の仲であるアレンは我慢出来なかったらしい。
デザートであるみたらし団子を喉に詰まらせ――しかし顔は完全に笑っている。
その奇妙な光景に、後輩である名無しは困惑するばかり。
それもそうだろう。苦しくてのたうち回るなら兎も角、喉へ詰まって苦しんでいるのに笑っているのだから。
こりゃあ…変質者として見られてもおかしくないさね、アレン。
かといって俺も笑いたい気持ちを我慢するつもりもない。
爆笑を我慢した代償に俺の左目の目尻には涙が浮かんだ。
まさか愛弟子に『虫』扱いされるとは、あの手厳しい元帥も思ってもいないだろうに。
「…くっ、くくっ、うん、そうさね。森での鍛錬も、程々にな」
「そうですね…虫除けスプレー、リーバーさんにお願いしてみようかな…」
至極真剣に。心底真面目に。
(ホント、悪い虫がいたもんさね)
黒の教団のどこかで、神田のくしゃみが大きく響き渡った。
冬を越す前の小動物のように、食べ納めと言わんばかりにむぎゅむぎゅと食事を食べる様は――流石、寄生型と言わざるを得ない。
食べ方はユウ並に綺麗だというのに、黙々と。しかしとても美味しそうに食べる姿は見てて気持ちが良かった。
一方、隣の席でフードファイターばりに食べているのはアレンだ。
口の周りがミートソースだらけになっていることに本人はきっと気づいていないのだろう。
そんな似た者同士の二人の前に座り、次の任務の話や他愛ない話を繰り出しながら俺はのんびりとした時間を過ごしていた。
が、視界にたまたま入ったそれを見て、つい唐突に尋ねたくなったのだ。
「名無しって、ユウともうエッチしたんさ?」
「むぐっ」
泡沫に溺れる#01
咀嚼し、嚥下し、合間をぬって丁寧に会話のキャッチボールをしていた名無しが、ポテトサラダを喉に詰まらせる。
無理もない。先程まで先日読んだ新聞のニュースの話をしていたのに、突然下ネタになったのだから。
いや、まぁ俺が聞いたんだけど。
「ラビ、神田に殺されても僕は骨を拾わないからね」
「酷ェさ、アレン…。っと、名無し。ほい、水。」
女の子に対してとんでもない質問を投げかけたせいか、アレンの視線がいつもより二割増で冷ややかだ。
いや、だって聞くっしょ。
現に、名無しの首筋には赤い跡が点々と散っている。
色恋沙汰より三度の飯、といった様子の名無しには似つかわしくない、露骨な独占欲の証だ。
……誰がマーキングしたのか言うまでもないだろう。
「けほっ、なんですか、藪から棒に」
「ん?だってほら。」
トントンと俺は自分の首を指差す。
本当に分からないのか、名無しは首を傾げるばかり。
「……首、ですか?」
「そ。」
窓際の席に座っていたから鏡には困らない。
綺麗に姿が映る窓ガラスを覗き込み、首筋の赤い花を目視で確認する名無し。
本当に心当たりがないのか、それとも気づいていないのか。顔色ひとつ変えることなく、キスマークの跡をぽりぽりと指で軽く引っ掻いていた。
「?……虫刺されですかね。」
「ごふっ」
「あ、アレンさん?」
彼女はボケているわけでも、わざと言っているわけでもない。
まさか神田ユウの所有印を『虫刺され』と片付けてしまった事実に、犬猿の仲であるアレンは我慢出来なかったらしい。
デザートであるみたらし団子を喉に詰まらせ――しかし顔は完全に笑っている。
その奇妙な光景に、後輩である名無しは困惑するばかり。
それもそうだろう。苦しくてのたうち回るなら兎も角、喉へ詰まって苦しんでいるのに笑っているのだから。
こりゃあ…変質者として見られてもおかしくないさね、アレン。
かといって俺も笑いたい気持ちを我慢するつもりもない。
爆笑を我慢した代償に俺の左目の目尻には涙が浮かんだ。
まさか愛弟子に『虫』扱いされるとは、あの手厳しい元帥も思ってもいないだろうに。
「…くっ、くくっ、うん、そうさね。森での鍛錬も、程々にな」
「そうですね…虫除けスプレー、リーバーさんにお願いしてみようかな…」
至極真剣に。心底真面目に。
(ホント、悪い虫がいたもんさね)
黒の教団のどこかで、神田のくしゃみが大きく響き渡った。