病熱メトロノーム
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朝。
いつもなら5時頃に起きて鍛錬をするのだが、どうやら寝過ごしてしまったようだ。
カーテンの隙間から見える空の色は鮮やかな青。
淡い橙を流したような朝焼けのものではなく、すっかり日が昇った後の色だった。
部屋を一望すれば、間取りが少しばかり狭い。
ぼんやりする頭でそろりと視線を落とせば――。
「…………………。」
俺の胸板にぴったりくっついて、すぅすぅと寝息を立てている名無し。
熱が大分引いたのか、昨晩よりは血色が普段通りになっていた。
あれから魘されることもなく、穏やかに眠れたらしい。
……それは自分にも当てはまる事なのだが。
(目覚めが、過去一番いい。)
夢見が悪いことは、稀にあった。
その日は気分は最悪だったし、機嫌もすこぶる悪い。
だから名無しが『寝つきが悪い』ことに関しては驚きはしなかったが…。
まさか任務の時に寝ていなかったり、それを上手く隠していた事には些か腹が立った。
気づけなかった自分も自分だが。
快眠の原因は間違いなくこの『人間抱き枕』だろう。
抱き心地は程よく柔らかく、いい匂いがして、ぽかぽかと温かい。
「……アホ面。」
赤子のように柔らかな頬を指で押しながら、神田は小さく笑いながら呟いた。
病熱メトロノーム#05
どうしよう。ものすごくスッキリしてる。
熱も引いた。
鼻水や喉の痛みもない。
点滴で打ってもらった薬が効いたのか、それとも驚く程に熟睡出来たからなのか。
「若いからなのかしらね。でも今日は安静にしていなさい。くれぐれも、鍛錬や激しい運動はしないように。」
「はぁい。」
診察してくれたドクターに太鼓判はもらったものの、婦長からはしっかりと念を押される。
医療棟に併設された修練場を通り抜ければ、朝まで一緒にいた師が鍛錬に勤しんでいた。
珍しくアレンと剣の稽古をしているようだが……剣術では流石にアレンも勝てないようだ。
ラビ曰く『最終的に殴り合いになるからあの二人の鍛錬に付き合うの嫌なんさ…』だそうな。
二階の渡り廊下からじっと見下ろせば、生き生きと竹刀を振るう神田の姿。
朝、目が覚めた時。
至近距離に胸板。視線を上げれば既に起きている彼の顔が目に入って、驚きのあまりベッドから落ちて頭を打った。あれは痛かった。
神田が『あの後全然起きなかったが、よく眠れたか?』と聞いてくれたが――
(いや。神田さんの方こそ、眠れたのかな)
誰かの添い寝に慣れてるとは思えない。
それこそ他人の気配に敏感なのだから、誰かと寝る…というのは気を張るのではなかろうか。
そんな中、背中をトントンされるだけで呆気なく寝てしまった自分ときたら。
(赤ちゃんじゃん…!)
恥ずかしい。けど、過去最高の目覚めなのが悔しい。
でも言い訳をさせて欲しい。
あの石鹸の匂いと、規則正しい鼓動の音。
背中を撫でてくれる手のあたたかさに抗える人はいるのだろうか?
それがましてや――
(すきな、ひとなら。)
…こんなに幸せでバチが当たらないのだろうか。
しかもここ数年ずっと悩まされていた悪夢まで見ないとは。
竹刀を粉々にされたアレンが、神田の振るう竹刀を白刃取りする。
そこから殴り合いになり、見ていた周りの人間が巻き込まれるまでがお約束だそうな。
(………とりあえず図書館に行こう。)
今日も元気な師匠を眺めた後、名無しはそそくさと修練場を後にした。
いつもなら5時頃に起きて鍛錬をするのだが、どうやら寝過ごしてしまったようだ。
カーテンの隙間から見える空の色は鮮やかな青。
淡い橙を流したような朝焼けのものではなく、すっかり日が昇った後の色だった。
部屋を一望すれば、間取りが少しばかり狭い。
ぼんやりする頭でそろりと視線を落とせば――。
「…………………。」
俺の胸板にぴったりくっついて、すぅすぅと寝息を立てている名無し。
熱が大分引いたのか、昨晩よりは血色が普段通りになっていた。
あれから魘されることもなく、穏やかに眠れたらしい。
……それは自分にも当てはまる事なのだが。
(目覚めが、過去一番いい。)
夢見が悪いことは、稀にあった。
その日は気分は最悪だったし、機嫌もすこぶる悪い。
だから名無しが『寝つきが悪い』ことに関しては驚きはしなかったが…。
まさか任務の時に寝ていなかったり、それを上手く隠していた事には些か腹が立った。
気づけなかった自分も自分だが。
快眠の原因は間違いなくこの『人間抱き枕』だろう。
抱き心地は程よく柔らかく、いい匂いがして、ぽかぽかと温かい。
「……アホ面。」
赤子のように柔らかな頬を指で押しながら、神田は小さく笑いながら呟いた。
病熱メトロノーム#05
どうしよう。ものすごくスッキリしてる。
熱も引いた。
鼻水や喉の痛みもない。
点滴で打ってもらった薬が効いたのか、それとも驚く程に熟睡出来たからなのか。
「若いからなのかしらね。でも今日は安静にしていなさい。くれぐれも、鍛錬や激しい運動はしないように。」
「はぁい。」
診察してくれたドクターに太鼓判はもらったものの、婦長からはしっかりと念を押される。
医療棟に併設された修練場を通り抜ければ、朝まで一緒にいた師が鍛錬に勤しんでいた。
珍しくアレンと剣の稽古をしているようだが……剣術では流石にアレンも勝てないようだ。
ラビ曰く『最終的に殴り合いになるからあの二人の鍛錬に付き合うの嫌なんさ…』だそうな。
二階の渡り廊下からじっと見下ろせば、生き生きと竹刀を振るう神田の姿。
朝、目が覚めた時。
至近距離に胸板。視線を上げれば既に起きている彼の顔が目に入って、驚きのあまりベッドから落ちて頭を打った。あれは痛かった。
神田が『あの後全然起きなかったが、よく眠れたか?』と聞いてくれたが――
(いや。神田さんの方こそ、眠れたのかな)
誰かの添い寝に慣れてるとは思えない。
それこそ他人の気配に敏感なのだから、誰かと寝る…というのは気を張るのではなかろうか。
そんな中、背中をトントンされるだけで呆気なく寝てしまった自分ときたら。
(赤ちゃんじゃん…!)
恥ずかしい。けど、過去最高の目覚めなのが悔しい。
でも言い訳をさせて欲しい。
あの石鹸の匂いと、規則正しい鼓動の音。
背中を撫でてくれる手のあたたかさに抗える人はいるのだろうか?
それがましてや――
(すきな、ひとなら。)
…こんなに幸せでバチが当たらないのだろうか。
しかもここ数年ずっと悩まされていた悪夢まで見ないとは。
竹刀を粉々にされたアレンが、神田の振るう竹刀を白刃取りする。
そこから殴り合いになり、見ていた周りの人間が巻き込まれるまでがお約束だそうな。
(………とりあえず図書館に行こう。)
今日も元気な師匠を眺めた後、名無しはそそくさと修練場を後にした。