St. Elmo's fire.
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「私がハイネ町長の、ウィリアムです。悪天候の中、御足労をお掛けしました…」
「奇怪を調査するのが我々の仕事ですから、お気にならさず。」
対外交渉に一番向いているであろう、リンクが町長の正面に座る。
使い込まれてはいるが、美しく磨きあげられた白磁のティーカップ。
ゆらりと波打つ水面は美しい水色(すいしょく)で、やさしく湯気を立てていた。
「村人全員、ほとほと困っていたのです。こうも雨ばかりでは作物も腐ってしまい、生活がままなりません。どうか我らをお救いください。」
「善処いたします。まずはいつから荒天が始まっているか、お聞かせ願えますか?」
St. Elmo's fire.#02
ひと月程前から、荒れに荒れた悪天候が続いている。
原因は不明。
町長曰く『身に覚えがない』とのこと。
「……と言われても何かしらあるはずなんですけどねぇ」
「虱潰しに探すしかねぇだろ。」
町長の家から宿へ戻るだけでも、服を着替えることになるとは。
雨合羽を着てもこの惨状とは、酷いものだ。
洗濯したての団服はハンガーにかけられ、暖炉から少し離して干されていた。
二人分の団服が二着ずつと、リンクのコートが二着。
一日目でまさか六着洗濯するとは思ってもみなかった。
袖や襟ぐりから入り込む雨水はどうにもならない。
横に斜めにと打ち付ける雨はまるで罰ゲームのようだった。
雨足が強い叩きつけるような雨は、正直…少し痛い。
宿屋の主人が気を利かせてマルドワインを持ってきてくれた。
シナモン・クローブ・輪切りにしたレモン。
スパイスの効いたホットワインは冷えた体によく沁みるだろう。
が。一応『仕事中ですから』と手付かずのリンクと、一口飲んで眉をひそめていた神田。
後者は……どうやら口に合わなかったようだ。
名無しはというとハチミツをいっぱい入れたホットミルクを出された。
確かにまだ未成年で、スパイスの効いたホットワインよりはこちらの方が好きと言えば好きなのだが――
(絶対子供だと勘違いされてる……)
『まだ小さいのにお仕事とは大変だね…。お嬢ちゃん、これもよかったら』と一緒に差し出されたのは甘いミルクチョコレート。
とても美味しいのだが、名無しとしてはちょっと複雑だ。
同じに東洋人である神田はしっかりと大人認定されているというのに。これが5、6歳の差だろう。
神田は明後日を向いて笑いを堪え、リンクは仏頂面を貼り付けていたが口元が震えていた。
これは酷い。
「そうは言ってもこの悪天候ですから。各々で聞き込みを行った方がいいでしょうね。…出来ますか?神田ユウ。」
「そうですね…。……神田さん大丈夫です?」
「オイ、どういう意味だ。」
少し憐れみを込めた視線を向けるリンクと、素直に心配する名無し。
心配はごもっともだが、やはり癇に障るものは障ってしまう。
神田は眉間に三割増しで皺を寄せ、不服そうに口元を歪めた。
「奇怪を調査するのが我々の仕事ですから、お気にならさず。」
対外交渉に一番向いているであろう、リンクが町長の正面に座る。
使い込まれてはいるが、美しく磨きあげられた白磁のティーカップ。
ゆらりと波打つ水面は美しい水色(すいしょく)で、やさしく湯気を立てていた。
「村人全員、ほとほと困っていたのです。こうも雨ばかりでは作物も腐ってしまい、生活がままなりません。どうか我らをお救いください。」
「善処いたします。まずはいつから荒天が始まっているか、お聞かせ願えますか?」
St. Elmo's fire.#02
ひと月程前から、荒れに荒れた悪天候が続いている。
原因は不明。
町長曰く『身に覚えがない』とのこと。
「……と言われても何かしらあるはずなんですけどねぇ」
「虱潰しに探すしかねぇだろ。」
町長の家から宿へ戻るだけでも、服を着替えることになるとは。
雨合羽を着てもこの惨状とは、酷いものだ。
洗濯したての団服はハンガーにかけられ、暖炉から少し離して干されていた。
二人分の団服が二着ずつと、リンクのコートが二着。
一日目でまさか六着洗濯するとは思ってもみなかった。
袖や襟ぐりから入り込む雨水はどうにもならない。
横に斜めにと打ち付ける雨はまるで罰ゲームのようだった。
雨足が強い叩きつけるような雨は、正直…少し痛い。
宿屋の主人が気を利かせてマルドワインを持ってきてくれた。
シナモン・クローブ・輪切りにしたレモン。
スパイスの効いたホットワインは冷えた体によく沁みるだろう。
が。一応『仕事中ですから』と手付かずのリンクと、一口飲んで眉をひそめていた神田。
後者は……どうやら口に合わなかったようだ。
名無しはというとハチミツをいっぱい入れたホットミルクを出された。
確かにまだ未成年で、スパイスの効いたホットワインよりはこちらの方が好きと言えば好きなのだが――
(絶対子供だと勘違いされてる……)
『まだ小さいのにお仕事とは大変だね…。お嬢ちゃん、これもよかったら』と一緒に差し出されたのは甘いミルクチョコレート。
とても美味しいのだが、名無しとしてはちょっと複雑だ。
同じに東洋人である神田はしっかりと大人認定されているというのに。これが5、6歳の差だろう。
神田は明後日を向いて笑いを堪え、リンクは仏頂面を貼り付けていたが口元が震えていた。
これは酷い。
「そうは言ってもこの悪天候ですから。各々で聞き込みを行った方がいいでしょうね。…出来ますか?神田ユウ。」
「そうですね…。……神田さん大丈夫です?」
「オイ、どういう意味だ。」
少し憐れみを込めた視線を向けるリンクと、素直に心配する名無し。
心配はごもっともだが、やはり癇に障るものは障ってしまう。
神田は眉間に三割増しで皺を寄せ、不服そうに口元を歪めた。