恋愛ビギナー
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壁を作っても、いとも簡単に飛び越えてくる。
距離を置いても、容赦なく詰めてくる。
――あぁ。
目眩がするほど辛くて、
涙が出そうなくらい 。
恋愛ビギナー#01
足の裏の怪我が治るまで『部屋で安静に』と言いつけられた。
というのも、怪我は思ったより酷かったらしく、婦長にはこっぴどく叱られてしまった。
ガラス片や小石が刺さっており、傷口は化膿していた…らしい。
『どうしてこうなるのかしら!?』と問い詰められたため『あ……足つぼ、マッサージです』と苦し紛れに答えたら、怒りに火を注ぐ結果となってしまった。
「…で、あの。神田さん?」
「何だ。」
「なんで私の部屋にいらっしゃるんですかね…?」
気まずい。
一言で言えば、非常に気まずい。
「書類仕事しているからだ。」
「見れば分かります。」
「あとお前が図書室やら食堂やらにフラフラ出歩かないように婦長から言いつけられたからな。」
婦長、どうしてそんなに私の行動を網羅しているんですか。
「俺がここにいたら何か都合悪いのか?」
「ないです、けど、」
思い返せばなんやかんやの前から神田はよく部屋に居座っていた……気がする。
刀の手入れとか、任務の前の打ち合わせとか。
そう。いつも通りにしていればいいじゃないか。
意識しすぎているのは自分の方だ。
……思春期の中学生ではあるまいし。
落ち着こう。こういう時こそ深呼吸だ。
「包帯は変えたのか?」
「あ、いえ。今日の分はまだです…」
「分かった。」
書類仕事が終わったのか。
トントンと用紙の束を整え、神田が立ち上がる。
棚の上に置いていた替えの包帯を手に取り、徐ろに私の包帯を外し始めた。
「ちょっ…神田さん!包帯くらい自分で巻けますから、」
「じっとしてねぇと婦長に言いつけるぞ。」
ズルい。
そんなこと言われたら押し黙ってしまうに決まっている。
今の私には十分すぎる脅し文句だ。
何度も包帯を巻くような事があったのだろう。
手慣れた手つきで包帯を外し、テキパキとガーゼを変え、消毒まで済ました。
消毒液が少しだけ染みたが、そこはぐっと我慢する。
……こういう事は我慢できるのに、どうして彼の事に関してはすぐに赤面してしまうのか。
正直、どうして彼が好いてくれているのか理由が分からない。
教団には男性が圧倒的に多いとはいえ、魅力的な女性は数多くいる。
その中でなぜ私なのか。
こう言ってはなんだが、あの美貌を持ってすれば女の人を5人10人といくらでも侍らすことは可能だろうに。
……いや。彼はそんなちゃらんぽらんしていないか。神田に失礼だった。前言撤回しよう。
(嬉しくないといえば、嘘になるけど。)
正直、複雑だ。
自分の中で整理するにはもう少し時間が必要そうだった。
「出来たぞ。」
「あ……ありがとうございます。すみません、お手を煩わせまし」
た。
言い切る前に、足に落とされる唇。
それはそれは驚く程に綺麗な動作で。
ボン!と爆発してしまいそうな程に血が登り、一瞬何をされたのか理解出来なかった。
「なっ、ななななな、なに、何してるんですか!」
「手当て。」
しゃあしゃあと。
『何言ってるんだコイツ』と言わんばかりの視線を向けられるが、それはこっちの台詞である。
ぱくぱくと。言葉を出したいのに出てこない口を虚しく開けていると、我慢できないと言わんばかりに神田が吹き出した。
「ちょっと!からかってませんか!?」
「…ククッ…半分な。」
残りの半分は何なんだ。
底意地の悪い師にぶつける文句が思いつかないまま、名無しは変な声を上げながら頭を抱えるのであった。
距離を置いても、容赦なく詰めてくる。
――あぁ。
目眩がするほど辛くて、
涙が出そうなくらい 。
恋愛ビギナー#01
足の裏の怪我が治るまで『部屋で安静に』と言いつけられた。
というのも、怪我は思ったより酷かったらしく、婦長にはこっぴどく叱られてしまった。
ガラス片や小石が刺さっており、傷口は化膿していた…らしい。
『どうしてこうなるのかしら!?』と問い詰められたため『あ……足つぼ、マッサージです』と苦し紛れに答えたら、怒りに火を注ぐ結果となってしまった。
「…で、あの。神田さん?」
「何だ。」
「なんで私の部屋にいらっしゃるんですかね…?」
気まずい。
一言で言えば、非常に気まずい。
「書類仕事しているからだ。」
「見れば分かります。」
「あとお前が図書室やら食堂やらにフラフラ出歩かないように婦長から言いつけられたからな。」
婦長、どうしてそんなに私の行動を網羅しているんですか。
「俺がここにいたら何か都合悪いのか?」
「ないです、けど、」
思い返せばなんやかんやの前から神田はよく部屋に居座っていた……気がする。
刀の手入れとか、任務の前の打ち合わせとか。
そう。いつも通りにしていればいいじゃないか。
意識しすぎているのは自分の方だ。
……思春期の中学生ではあるまいし。
落ち着こう。こういう時こそ深呼吸だ。
「包帯は変えたのか?」
「あ、いえ。今日の分はまだです…」
「分かった。」
書類仕事が終わったのか。
トントンと用紙の束を整え、神田が立ち上がる。
棚の上に置いていた替えの包帯を手に取り、徐ろに私の包帯を外し始めた。
「ちょっ…神田さん!包帯くらい自分で巻けますから、」
「じっとしてねぇと婦長に言いつけるぞ。」
ズルい。
そんなこと言われたら押し黙ってしまうに決まっている。
今の私には十分すぎる脅し文句だ。
何度も包帯を巻くような事があったのだろう。
手慣れた手つきで包帯を外し、テキパキとガーゼを変え、消毒まで済ました。
消毒液が少しだけ染みたが、そこはぐっと我慢する。
……こういう事は我慢できるのに、どうして彼の事に関してはすぐに赤面してしまうのか。
正直、どうして彼が好いてくれているのか理由が分からない。
教団には男性が圧倒的に多いとはいえ、魅力的な女性は数多くいる。
その中でなぜ私なのか。
こう言ってはなんだが、あの美貌を持ってすれば女の人を5人10人といくらでも侍らすことは可能だろうに。
……いや。彼はそんなちゃらんぽらんしていないか。神田に失礼だった。前言撤回しよう。
(嬉しくないといえば、嘘になるけど。)
正直、複雑だ。
自分の中で整理するにはもう少し時間が必要そうだった。
「出来たぞ。」
「あ……ありがとうございます。すみません、お手を煩わせまし」
た。
言い切る前に、足に落とされる唇。
それはそれは驚く程に綺麗な動作で。
ボン!と爆発してしまいそうな程に血が登り、一瞬何をされたのか理解出来なかった。
「なっ、ななななな、なに、何してるんですか!」
「手当て。」
しゃあしゃあと。
『何言ってるんだコイツ』と言わんばかりの視線を向けられるが、それはこっちの台詞である。
ぱくぱくと。言葉を出したいのに出てこない口を虚しく開けていると、我慢できないと言わんばかりに神田が吹き出した。
「ちょっと!からかってませんか!?」
「…ククッ…半分な。」
残りの半分は何なんだ。
底意地の悪い師にぶつける文句が思いつかないまま、名無しは変な声を上げながら頭を抱えるのであった。