waltz for the moon
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空には、ぽっかりと浮かぶ満月。
しかし金色の月光が鬱蒼とした森の中に届くはずもなく、木々を縫うように闇色が広がっていた。
『逃げロ、逃ゲろ!人間狩りだ、エクソシスト狩りだ!』
影の中を移動しながら、音による衝撃波で攻撃してくるレベル3。
――読み通り、こちらに食いついてきた。
大した怪我ではなくとも、血を流している獲物がいればそちらを狙うのは必然だろう。
走りにくいからという理由で脱いだ靴が、まさかこんな所で功をなすとは。
…足の裏がそこそこ痛いのが厄介だが。
『俺が囮になる方がいいんじゃねぇか?』
とんでもない。そんなことは即座に却下だ。
――普段なら、お願いするかもしれない。
しかし、先程見た光景が脳裏から離れない。
動かなくなった四肢。
呼吸を止めた口元。
白い頬には生気がなく――
あれは間違いなく、一度『死んで』いた。
森の中を走りながら、鳥肌が立った腕をそっと摩る。
……自覚したくない。認めたくない。
けれど日増しに自分の中で『彼』がどんどん割合を占めていく。
満たされていく。
怖くなってくる。
抗う理性に反して、本心は情けないほどに素直なのだからタチが悪い。
――だからこそ、殊更失いたくない。
あんな姿を見るのはもう懲り懲りだ。
「絶対に、許さない。」
waltz for the moon#10
逃がさない。逃がさない。逃がさない。
あぁ、殺すのって楽しい。
追い詰めるのって楽しい。
殺人衝動は本能だ。
同胞であるレベル1のアクマを葬られても、同情や憐憫の情などは一切湧きはしなかった。
血の跡を辿れば手負いの娘がいる。
嫐れば嫐る程、痕跡を残す血溜りが増えていった。
肉を裂く感触が楽しい。
苦痛に歪む顔を見るのが愉しい。
恐らくあの娘のイノセンスは『眼』だ。
しかし影に潜めばそれも届かない。
先日食らったレベル2の能力は非常に便利だった。お陰でレベル3に進化できた。
鬱蒼とした森は格好の『狩場』だ。
月の光が届けば話は別だが、明かりのない夜闇はまさに自分の『晴れ舞台』だった。
『エクソシ〜スト!遊びマしョ!』
影の中から、声を上げる。
血痕が途切れた場所は森の中心部。
ぽっかりと空いた空間はまるでダンスホールだ。
それでも天を覆い尽くすような樫や楠に遮られ、やはりここも常闇だった。
秘密基地のようなこの場所に、あの娘が隠れている。
何を為出かすつもりかは知らないが、この影の世界では手も足も出ないだろうに。
『隠れテも無駄ムダ!ちゃンと丁寧に、指を一本イッポンちぎっテ、死ぬまデちゃんと殺シてあげるから出ておいデ!』
遊びに誘うように、高らかに声を張り上げる。
響いて、反響して、声が消えていく。
木々のざわめきが静まり、一瞬の無音が覆い尽くした瞬間だった。
まるで柔らかいカーテンを斬るように、一瞬になぎ倒される木々。
太い幹から低木まで。
一瞬宙に浮く様は、まるで『刃』が通ったかのようだった。
口を開ける、緑の天蓋。
木々で覆われていた天井は呆気なく拓き、紺色のビロードを背負った満月が煌々と輝いていた。
それは昼の太陽にも負けない程の輝きで、思わずアクマは目を眩ませた。
そう。
光があれば、影は自ずと姿を露わにする。
「――見つけた。」
スローモーションのように倒れていく大木の上から落ちてくる人影。
空気を孕み、はためくドレスの裾。
月光に照らされた身体は驚くほど華奢で、こちらに向かって飛び降りる様は
――踊っているかのように見えた。
射抜く黄金の双眸。
それは空に浮かぶ満月よりも煌めいており、
――まるでそう。その輝きに吸い込まれてしまうような、
しかし金色の月光が鬱蒼とした森の中に届くはずもなく、木々を縫うように闇色が広がっていた。
『逃げロ、逃ゲろ!人間狩りだ、エクソシスト狩りだ!』
影の中を移動しながら、音による衝撃波で攻撃してくるレベル3。
――読み通り、こちらに食いついてきた。
大した怪我ではなくとも、血を流している獲物がいればそちらを狙うのは必然だろう。
走りにくいからという理由で脱いだ靴が、まさかこんな所で功をなすとは。
…足の裏がそこそこ痛いのが厄介だが。
『俺が囮になる方がいいんじゃねぇか?』
とんでもない。そんなことは即座に却下だ。
――普段なら、お願いするかもしれない。
しかし、先程見た光景が脳裏から離れない。
動かなくなった四肢。
呼吸を止めた口元。
白い頬には生気がなく――
あれは間違いなく、一度『死んで』いた。
森の中を走りながら、鳥肌が立った腕をそっと摩る。
……自覚したくない。認めたくない。
けれど日増しに自分の中で『彼』がどんどん割合を占めていく。
満たされていく。
怖くなってくる。
抗う理性に反して、本心は情けないほどに素直なのだからタチが悪い。
――だからこそ、殊更失いたくない。
あんな姿を見るのはもう懲り懲りだ。
「絶対に、許さない。」
waltz for the moon#10
逃がさない。逃がさない。逃がさない。
あぁ、殺すのって楽しい。
追い詰めるのって楽しい。
殺人衝動は本能だ。
同胞であるレベル1のアクマを葬られても、同情や憐憫の情などは一切湧きはしなかった。
血の跡を辿れば手負いの娘がいる。
嫐れば嫐る程、痕跡を残す血溜りが増えていった。
肉を裂く感触が楽しい。
苦痛に歪む顔を見るのが愉しい。
恐らくあの娘のイノセンスは『眼』だ。
しかし影に潜めばそれも届かない。
先日食らったレベル2の能力は非常に便利だった。お陰でレベル3に進化できた。
鬱蒼とした森は格好の『狩場』だ。
月の光が届けば話は別だが、明かりのない夜闇はまさに自分の『晴れ舞台』だった。
『エクソシ〜スト!遊びマしョ!』
影の中から、声を上げる。
血痕が途切れた場所は森の中心部。
ぽっかりと空いた空間はまるでダンスホールだ。
それでも天を覆い尽くすような樫や楠に遮られ、やはりここも常闇だった。
秘密基地のようなこの場所に、あの娘が隠れている。
何を為出かすつもりかは知らないが、この影の世界では手も足も出ないだろうに。
『隠れテも無駄ムダ!ちゃンと丁寧に、指を一本イッポンちぎっテ、死ぬまデちゃんと殺シてあげるから出ておいデ!』
遊びに誘うように、高らかに声を張り上げる。
響いて、反響して、声が消えていく。
木々のざわめきが静まり、一瞬の無音が覆い尽くした瞬間だった。
まるで柔らかいカーテンを斬るように、一瞬になぎ倒される木々。
太い幹から低木まで。
一瞬宙に浮く様は、まるで『刃』が通ったかのようだった。
口を開ける、緑の天蓋。
木々で覆われていた天井は呆気なく拓き、紺色のビロードを背負った満月が煌々と輝いていた。
それは昼の太陽にも負けない程の輝きで、思わずアクマは目を眩ませた。
そう。
光があれば、影は自ずと姿を露わにする。
「――見つけた。」
スローモーションのように倒れていく大木の上から落ちてくる人影。
空気を孕み、はためくドレスの裾。
月光に照らされた身体は驚くほど華奢で、こちらに向かって飛び降りる様は
――踊っているかのように見えた。
射抜く黄金の双眸。
それは空に浮かぶ満月よりも煌めいており、
――まるでそう。その輝きに吸い込まれてしまうような、