waltz for the moon
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「潜入捜査、ですか?」
「そう。とある伯爵の領地付近でね、男女関係なく行方不明になる奇怪が起きているんだ。年齢は…大体13歳から20歳くらいまでのね。」
コムイの後ろで、ルベリエが優雅に紅茶を傾けている。
あまり乗り気ではなさそうな表情のコムイ。恐らくルベリエが『適任がいるだろう』と任務を押し付けてきたのだろう。
「……そこで、その伯爵主催のパーティーに潜入してきて欲しいんだ。」
waltz for the moon#01
「…で?最近は潜入の為にダンスの特訓だと?」
「くたくたです…。リンクさん厳しいんですもん…」
潜入、と言ってもただ単に行くだけではない。
その場にいる来賓に紛れ込み、調査することが目的だ。
『決して悪目立ちしてはいけない。』
…という理由で、マナーのいろはを急遽叩き込まれているわけだ。
「いつ出る?」
「ラビさんが帰ってきたら出発だそうです。」
今、ラビは任務に就いている。
ベテランのエクソシストの男性陣の中では、ラビが一番(意外にも)マナーがきちんとしている。
アレンも大道芸の延長線でダンスは得意な上、エスコートも完璧なのだが……如何せん、元の食事の量が異常だ。
しかも立食パーティーも兼ねているので、さぁ大変。
あぁいう豪華な食事が並ぶ場で、食欲を我慢しろというのはかなり酷だろう。
クロウリーは『じょ、女性と、ダンス!?』と声を裏げていたので、お察しだ。
マリは長期任務で不在。
「だからって何でよりによってクソウサギなんだ。」
「……だってコムイさんが『まぁ神田君はその方面はめっきりさっぱりだもんねぇ』っておっしゃってましたし。」
「…………………。」
神田に至っては、マナーどころかダンスも出来ない。そんなことは皆知っている。
本当なら赤髪で遠目からでも目立つラビより、まだ神田の方が目立たないだろう。
といっても、勉強も嫌い。マナー講座なんて以ての外。
脳筋元帥と揶揄されることもしばしある彼が、パーティーに必要なマナーを覚えるわけが――
「覚えりゃいいんだろ。」
「へ。」
***
「神田。足の運びが逆よ。やり直し。」
リンクは名無しに叩き込むことに手一杯らしく、まさかのリナリーに講師を依頼することになるとは。
ラビの代わりに任務を引き受けると申し出た時は『よかった。任務が終わったあとすぐにお願いするのは気が引けたんだよねぇ』とコムイが破顔していたが……。
リナリーが神田のマナー講師を引き受けるとなると話は別だったようで。
泣きわめき、当たり散らし、最後に呪詛のような呻き声を贈られた。
コムイが危惧しているような事態にならないことは百も承知だろうに。
『そういう問題じゃないんだよォ!リナリー!兄さんとも踊ってくれたことないじゃないか!』と嘆いていた。
哀れ、コムイ・リー。
シスコンもここまで拗らせたら、病気を通り越して最早生態である。
第一、リナリーのスパルタ具合がとてつもない。
冷やかし半分でアレンとティモシーが練習風景を覗きに来たが……可哀想なものを見るような視線を送られ、帰っていった。
理由は簡単。
「私が男だったら名無しと任務につけたのに…!」
「コムイの野郎が許さなさそうだけどな。」
「神田、無駄口を叩かない。名無しのエスコートを完璧にこなすんでしょう?」
「それなりでいいだろ…」
「よくないわよ。仮にも元帥よ?いい加減そういうマナーや礼儀をこの際だから覚えるべきよ。」
この優等生め。
内心そっと毒づきながら神田が小さく溜息をつく。
そもそも元帥になったのも成り行きだ。
あの時はあぁするしか行動に幅が利かなかったからであって。
しち面倒くさい書類仕事が増える管理職なんて、お役御免になるなら是非そうして頂きたいものだ。
明らかにやる気を失っている神田を呆れたように眺め、リナリーが小さく溜息をついた。
「完璧にエスコート出来たら、きっと鈍い名無しもドキドキするでしょうに。」
ピクリ。
……やはり幼馴染といったところか。
神田の扱いが非常に上手い。
この問題児を上手く扱えるのは、きっと彼女と名無しくらいなものだろう。
「任務とはいえ、師匠として。年上として。男性としてアピールする絶好の機会をみすみす逃すつもり?呆れたものね。これじゃあラビの方がよっぽど様になるわ」
まさに言葉はナイフである。
あの神田に容赦なく、ぐうの音も出ない程に言葉で組み伏せることが出来るのは、流石としか言いようがない。
「や………やればいいんだろうが!」
「そうね。やる気が出たのなら何よりよ。さぁ、さっきのところからやり直しね。」
「そう。とある伯爵の領地付近でね、男女関係なく行方不明になる奇怪が起きているんだ。年齢は…大体13歳から20歳くらいまでのね。」
コムイの後ろで、ルベリエが優雅に紅茶を傾けている。
あまり乗り気ではなさそうな表情のコムイ。恐らくルベリエが『適任がいるだろう』と任務を押し付けてきたのだろう。
「……そこで、その伯爵主催のパーティーに潜入してきて欲しいんだ。」
waltz for the moon#01
「…で?最近は潜入の為にダンスの特訓だと?」
「くたくたです…。リンクさん厳しいんですもん…」
潜入、と言ってもただ単に行くだけではない。
その場にいる来賓に紛れ込み、調査することが目的だ。
『決して悪目立ちしてはいけない。』
…という理由で、マナーのいろはを急遽叩き込まれているわけだ。
「いつ出る?」
「ラビさんが帰ってきたら出発だそうです。」
今、ラビは任務に就いている。
ベテランのエクソシストの男性陣の中では、ラビが一番(意外にも)マナーがきちんとしている。
アレンも大道芸の延長線でダンスは得意な上、エスコートも完璧なのだが……如何せん、元の食事の量が異常だ。
しかも立食パーティーも兼ねているので、さぁ大変。
あぁいう豪華な食事が並ぶ場で、食欲を我慢しろというのはかなり酷だろう。
クロウリーは『じょ、女性と、ダンス!?』と声を裏げていたので、お察しだ。
マリは長期任務で不在。
「だからって何でよりによってクソウサギなんだ。」
「……だってコムイさんが『まぁ神田君はその方面はめっきりさっぱりだもんねぇ』っておっしゃってましたし。」
「…………………。」
神田に至っては、マナーどころかダンスも出来ない。そんなことは皆知っている。
本当なら赤髪で遠目からでも目立つラビより、まだ神田の方が目立たないだろう。
といっても、勉強も嫌い。マナー講座なんて以ての外。
脳筋元帥と揶揄されることもしばしある彼が、パーティーに必要なマナーを覚えるわけが――
「覚えりゃいいんだろ。」
「へ。」
***
「神田。足の運びが逆よ。やり直し。」
リンクは名無しに叩き込むことに手一杯らしく、まさかのリナリーに講師を依頼することになるとは。
ラビの代わりに任務を引き受けると申し出た時は『よかった。任務が終わったあとすぐにお願いするのは気が引けたんだよねぇ』とコムイが破顔していたが……。
リナリーが神田のマナー講師を引き受けるとなると話は別だったようで。
泣きわめき、当たり散らし、最後に呪詛のような呻き声を贈られた。
コムイが危惧しているような事態にならないことは百も承知だろうに。
『そういう問題じゃないんだよォ!リナリー!兄さんとも踊ってくれたことないじゃないか!』と嘆いていた。
哀れ、コムイ・リー。
シスコンもここまで拗らせたら、病気を通り越して最早生態である。
第一、リナリーのスパルタ具合がとてつもない。
冷やかし半分でアレンとティモシーが練習風景を覗きに来たが……可哀想なものを見るような視線を送られ、帰っていった。
理由は簡単。
「私が男だったら名無しと任務につけたのに…!」
「コムイの野郎が許さなさそうだけどな。」
「神田、無駄口を叩かない。名無しのエスコートを完璧にこなすんでしょう?」
「それなりでいいだろ…」
「よくないわよ。仮にも元帥よ?いい加減そういうマナーや礼儀をこの際だから覚えるべきよ。」
この優等生め。
内心そっと毒づきながら神田が小さく溜息をつく。
そもそも元帥になったのも成り行きだ。
あの時はあぁするしか行動に幅が利かなかったからであって。
しち面倒くさい書類仕事が増える管理職なんて、お役御免になるなら是非そうして頂きたいものだ。
明らかにやる気を失っている神田を呆れたように眺め、リナリーが小さく溜息をついた。
「完璧にエスコート出来たら、きっと鈍い名無しもドキドキするでしょうに。」
ピクリ。
……やはり幼馴染といったところか。
神田の扱いが非常に上手い。
この問題児を上手く扱えるのは、きっと彼女と名無しくらいなものだろう。
「任務とはいえ、師匠として。年上として。男性としてアピールする絶好の機会をみすみす逃すつもり?呆れたものね。これじゃあラビの方がよっぽど様になるわ」
まさに言葉はナイフである。
あの神田に容赦なく、ぐうの音も出ない程に言葉で組み伏せることが出来るのは、流石としか言いようがない。
「や………やればいいんだろうが!」
「そうね。やる気が出たのなら何よりよ。さぁ、さっきのところからやり直しね。」