mirage faker
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「こんなもん、本当に奇怪なのか?」
室長室のデスクは相変わらず書類のタワーが出来上がっている。
これでも以前よりは休憩できる余裕が生まれたと聞いているが、やはり業務の量は半端ではないのだろう。
そんな書類の柱の間から小さく肩を竦めつつ、コムイは苦笑いを浮かべていた。
「それがねぇ、どうしても腑に落ちなくて。」
アクマの可能性もあるし、一応調べてくれるかい?
困ったように笑われたら、断る術がなかった。
mirage faker-01
「突然突飛な行動をし始める人が頻発してる…って。コムイさんは腑に落ちないって言ってますけど、書類で見た限りだとただの心境の変化ですよねぇ」
方舟の『ゲート』まで歩きながら、ファイリングされた書類を一枚捲る。
目的地はフランス・パリ。
フランスの首都であるパリの街は、多くの人で溢れかえっている。
「妙な点は突然人間が『人が変わった』かのようになる、か」
「アクマが人の皮を被っただけ、っていうのもありえますけど…それだったら家出したりとかしませんよねぇ」
穏やかだった隣人が突然の放火魔に変貌した。
品行方正だった箱入り娘がある日前触れもなく家出した。
はたまた、刑務所に入っていた殺人鬼が、看守も驚く程に『善人』になったケースもあるとか。
全て共通することといえば、本人達は正気に戻ったあと口を揃えて『覚えてない』と言っていることだろうか。
書類を荷物にしまいながら、神田は「さぁな」と答える。
刀袋と手荷物を持ち直し、面倒臭そうに小さく溜息をつく師を、名無しは無遠慮に見上げた。
「まぁ、行きゃあ分かるだろ」
「それもそうですね!」
方舟の『ゲート』に向かって歩き出す神田を追うように、名無しは小走りで後ろ姿を追いかけるのだった。
***
「モンサンミッシェルとはまた雰囲気ちょっと違いますね」
宿の帳簿に名前を書きながら、名無しが呑気にふにゃりと笑う。
以前訪れたモンサンミッシェルではカルト的な宗教が根付き、そこに住まう人間もイノセンスの奇怪を『奇跡』だと思わされていたのだから無理もない。
「フランスの首都だからな。あの島よりも住んでる人間の数が桁違いだろうよ」
華の都と称されるだけあり、かなり活気づいている。
多くの人が行き交い、人としての営みが安穏と行われていた。
だからこそアクマが潜みやすく、またイノセンスによる奇怪も意外と見落とされるのだ。
「あら。フランスは初めてじゃなくて?」
穏やかそうな宿屋の女主人が、部屋の鍵を2つ渡しながら小さく首を傾げる。
ほっそりとし、上品な雰囲気はまさにフランスの女性、といった佇まいだろうか。
「はい。以前、仕事で少し。」
「あら、お若いのに大変ね。新婚さん…かと思ったけど、お仕事だったのね」
神田と名無しを見比べ、クスクスと笑う女主人を見て、僅かに頬が熱くなるのを感じた。
「か、彼は私の師なので、その、そういう関係じゃ…」
「ごめんなさい、つい。じゃあ何か入用があれば、私か主人になんなりとお申し付けくださいね」
室長室のデスクは相変わらず書類のタワーが出来上がっている。
これでも以前よりは休憩できる余裕が生まれたと聞いているが、やはり業務の量は半端ではないのだろう。
そんな書類の柱の間から小さく肩を竦めつつ、コムイは苦笑いを浮かべていた。
「それがねぇ、どうしても腑に落ちなくて。」
アクマの可能性もあるし、一応調べてくれるかい?
困ったように笑われたら、断る術がなかった。
mirage faker-01
「突然突飛な行動をし始める人が頻発してる…って。コムイさんは腑に落ちないって言ってますけど、書類で見た限りだとただの心境の変化ですよねぇ」
方舟の『ゲート』まで歩きながら、ファイリングされた書類を一枚捲る。
目的地はフランス・パリ。
フランスの首都であるパリの街は、多くの人で溢れかえっている。
「妙な点は突然人間が『人が変わった』かのようになる、か」
「アクマが人の皮を被っただけ、っていうのもありえますけど…それだったら家出したりとかしませんよねぇ」
穏やかだった隣人が突然の放火魔に変貌した。
品行方正だった箱入り娘がある日前触れもなく家出した。
はたまた、刑務所に入っていた殺人鬼が、看守も驚く程に『善人』になったケースもあるとか。
全て共通することといえば、本人達は正気に戻ったあと口を揃えて『覚えてない』と言っていることだろうか。
書類を荷物にしまいながら、神田は「さぁな」と答える。
刀袋と手荷物を持ち直し、面倒臭そうに小さく溜息をつく師を、名無しは無遠慮に見上げた。
「まぁ、行きゃあ分かるだろ」
「それもそうですね!」
方舟の『ゲート』に向かって歩き出す神田を追うように、名無しは小走りで後ろ姿を追いかけるのだった。
***
「モンサンミッシェルとはまた雰囲気ちょっと違いますね」
宿の帳簿に名前を書きながら、名無しが呑気にふにゃりと笑う。
以前訪れたモンサンミッシェルではカルト的な宗教が根付き、そこに住まう人間もイノセンスの奇怪を『奇跡』だと思わされていたのだから無理もない。
「フランスの首都だからな。あの島よりも住んでる人間の数が桁違いだろうよ」
華の都と称されるだけあり、かなり活気づいている。
多くの人が行き交い、人としての営みが安穏と行われていた。
だからこそアクマが潜みやすく、またイノセンスによる奇怪も意外と見落とされるのだ。
「あら。フランスは初めてじゃなくて?」
穏やかそうな宿屋の女主人が、部屋の鍵を2つ渡しながら小さく首を傾げる。
ほっそりとし、上品な雰囲気はまさにフランスの女性、といった佇まいだろうか。
「はい。以前、仕事で少し。」
「あら、お若いのに大変ね。新婚さん…かと思ったけど、お仕事だったのね」
神田と名無しを見比べ、クスクスと笑う女主人を見て、僅かに頬が熱くなるのを感じた。
「か、彼は私の師なので、その、そういう関係じゃ…」
「ごめんなさい、つい。じゃあ何か入用があれば、私か主人になんなりとお申し付けくださいね」
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