Dear sister!
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「はぁ〜…ついてねーな、ついてねーよ……」
中学二年、桃城武。
彼は今、今月イチ重々しいため息をついていた。
天気が崩れやすい季節の変わり目。
目の前は景色をモノトーンにする程の雨がザァザァと音を立てながら降りしきっている。
所謂、にわか雨というやつだ。
(お天気お姉さん〜勘弁してくれよぉ)
お目当てのテニス雑誌を買ったらこのザマだ。
最後の一冊を意気揚々と手にして、店を出たら漫画のように突然降り出した。
バケツを引っくり返した、だなんてピッタリの表現だろう。
通り雨なら仕方がない。
大事な雑誌はおろしたての鞄の中だ。
鞄も雑誌も濡れるのは正直躊躇われるため、桃城は大人しく本屋の軒先で雨宿りをするつもりだったが……
「あれ?モモシロ先輩?」
アーモンド型のくるりとした目。
少し癖のある黒髪ショートの少年――否、少女が首を傾げて本屋から出てきた。
思わず『越前』と名前が喉から出そうになるが、ぐっと堪える。
いや、越前でも合っている。合っているのだが。
「お。……えーっと、名無しちゃん」
「あ、覚えていてくださったんですね!ありがとうございます!」
ぱっと花の咲くような笑顔は、あの無愛想な後輩には到底不可能な表情だ。
……すごく、似ている。
似ているがやはり二卵性双生児らしく、顔のパーツが所々違った。
ややつり目の弟と違って姉の方は目尻がややたれ気味だ。
似たような黒髪ショートも、名無しの方が若干癖が強いように見えた。
「凄い雨ですねぇ。もしかして雨宿りですか?」
「そ。嫌になっちゃうよなぁ。折角休みの日に本を買いに来たってのに…出かけた途端これだもんなぁ」
「あはは、分かります。私も本を買いに来たんですけど…リョーマに『ついでに』って頼まれた雑誌が完売しちゃってて…」
うーん、ハシゴするにはちょっと嫌な雨ですね。
むむ、と眉間にシワをよせながら、越前リョーマそっくりの少女はしかめ面を浮かべた。
……越前が頼んだ雑誌って、もしかして。
「これか?」
「あ!それです!」
本屋の茶封筒から取り出した雑誌は『月刊プロテニス』。
最近頭角を現している若手のプロ選手のインタビューや、トレーニング方法、その他色々豪華な特集が組まれた魅惑の一冊だ。
「あー、最後の一冊だったんだ。何か悪ィなぁ」
「何言ってるんですか、早い者勝ちですから。気にしないでください。買えてラッキーでしたね!」
嫌味のない、真っ直ぐな笑顔で笑う名無し。
ラッキーという言葉に、どこかのオレンジ色頭を思い出すが……いやいや、忘れることにしよう。
「止まなさそうですし、傘入りますか?折りたたみなのであまり大きくありませんけど…」
「いや、俺デカいしな…名無しちゃん濡れちまうだろ?風邪引いちまうよ」
「大丈夫です!明日英語の小テストなので、あわよくば風邪引いて休みたいな〜なんて思っているので!」
ふんすふんすと鼻息を荒くし、自慢げに胸を張る目の前の女の子。
全くもって威張るところではないのだが、妙な所でやる気がないのは姉弟同じらしい。
「ははは、それじゃあお邪魔するかな」
「どうぞどうぞ。ついでにその雑誌、読まれた後でいいのでリョーマにも貸してあげてください」
「お、そうだな。じゃあそのまま越前邸に行くとするかぁ」
「はい!」
キミと歩く相合傘
その道中はとても充実したものだった。
苦手は科目は英語と体育。
好きな食べ物は和食全般。
俺が持った傘の下、会話が途切れることは終ぞなかった。
……まぁ、越前の家に着いた時、越前のヤツにはすごい顔で見られたんだけどよ。
「名無し………………と、桃先輩。」
「ただいま、リョーマ!ごめんね、雑誌売り切れちゃった」
「それはいいんだけど、何。なんで相合傘なんてしてんの。」
「雨降ってきたから。」
「見ればわかるよ。」
「なんだよ、越前。そんなカリカリしなくていいだろ?」
「桃先輩、デリカシーないとは思ってましたけど、ホントデリカシーないッスね」
生意気な後輩の小言は、残念ながらまだ終わりそうになかった。
中学二年、桃城武。
彼は今、今月イチ重々しいため息をついていた。
天気が崩れやすい季節の変わり目。
目の前は景色をモノトーンにする程の雨がザァザァと音を立てながら降りしきっている。
所謂、にわか雨というやつだ。
(お天気お姉さん〜勘弁してくれよぉ)
お目当てのテニス雑誌を買ったらこのザマだ。
最後の一冊を意気揚々と手にして、店を出たら漫画のように突然降り出した。
バケツを引っくり返した、だなんてピッタリの表現だろう。
通り雨なら仕方がない。
大事な雑誌はおろしたての鞄の中だ。
鞄も雑誌も濡れるのは正直躊躇われるため、桃城は大人しく本屋の軒先で雨宿りをするつもりだったが……
「あれ?モモシロ先輩?」
アーモンド型のくるりとした目。
少し癖のある黒髪ショートの少年――否、少女が首を傾げて本屋から出てきた。
思わず『越前』と名前が喉から出そうになるが、ぐっと堪える。
いや、越前でも合っている。合っているのだが。
「お。……えーっと、名無しちゃん」
「あ、覚えていてくださったんですね!ありがとうございます!」
ぱっと花の咲くような笑顔は、あの無愛想な後輩には到底不可能な表情だ。
……すごく、似ている。
似ているがやはり二卵性双生児らしく、顔のパーツが所々違った。
ややつり目の弟と違って姉の方は目尻がややたれ気味だ。
似たような黒髪ショートも、名無しの方が若干癖が強いように見えた。
「凄い雨ですねぇ。もしかして雨宿りですか?」
「そ。嫌になっちゃうよなぁ。折角休みの日に本を買いに来たってのに…出かけた途端これだもんなぁ」
「あはは、分かります。私も本を買いに来たんですけど…リョーマに『ついでに』って頼まれた雑誌が完売しちゃってて…」
うーん、ハシゴするにはちょっと嫌な雨ですね。
むむ、と眉間にシワをよせながら、越前リョーマそっくりの少女はしかめ面を浮かべた。
……越前が頼んだ雑誌って、もしかして。
「これか?」
「あ!それです!」
本屋の茶封筒から取り出した雑誌は『月刊プロテニス』。
最近頭角を現している若手のプロ選手のインタビューや、トレーニング方法、その他色々豪華な特集が組まれた魅惑の一冊だ。
「あー、最後の一冊だったんだ。何か悪ィなぁ」
「何言ってるんですか、早い者勝ちですから。気にしないでください。買えてラッキーでしたね!」
嫌味のない、真っ直ぐな笑顔で笑う名無し。
ラッキーという言葉に、どこかのオレンジ色頭を思い出すが……いやいや、忘れることにしよう。
「止まなさそうですし、傘入りますか?折りたたみなのであまり大きくありませんけど…」
「いや、俺デカいしな…名無しちゃん濡れちまうだろ?風邪引いちまうよ」
「大丈夫です!明日英語の小テストなので、あわよくば風邪引いて休みたいな〜なんて思っているので!」
ふんすふんすと鼻息を荒くし、自慢げに胸を張る目の前の女の子。
全くもって威張るところではないのだが、妙な所でやる気がないのは姉弟同じらしい。
「ははは、それじゃあお邪魔するかな」
「どうぞどうぞ。ついでにその雑誌、読まれた後でいいのでリョーマにも貸してあげてください」
「お、そうだな。じゃあそのまま越前邸に行くとするかぁ」
「はい!」
キミと歩く相合傘
その道中はとても充実したものだった。
苦手は科目は英語と体育。
好きな食べ物は和食全般。
俺が持った傘の下、会話が途切れることは終ぞなかった。
……まぁ、越前の家に着いた時、越前のヤツにはすごい顔で見られたんだけどよ。
「名無し………………と、桃先輩。」
「ただいま、リョーマ!ごめんね、雑誌売り切れちゃった」
「それはいいんだけど、何。なんで相合傘なんてしてんの。」
「雨降ってきたから。」
「見ればわかるよ。」
「なんだよ、越前。そんなカリカリしなくていいだろ?」
「桃先輩、デリカシーないとは思ってましたけど、ホントデリカシーないッスね」
生意気な後輩の小言は、残念ながらまだ終わりそうになかった。
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